ドンバス地方(東部2州)
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「ウクライナ紛争 (2014年-)」の記事における「ドンバス地方(東部2州)」の解説
詳細は「ドンバス戦争」を参照 2014年に親露派が武装蜂起したルハンスク州南部とドネツィク州東南部は2021年時点、両州合計面積の約3割が親露派の占拠下にあり、死者は累計で約1万4000人に達している。 2014年3月1日-3月6日にかけて、ロシアが主導したとされる親露派武装勢力はドネツィク州庁舎を占拠したが、ウクライナ保安庁によって排除された。ウクライナ当局によると政府庁舎での押収物の一部に、ウクライナを不安定化させるよう、ロシア語で書かれたメモがあったほか、明確なロシア語のアクセントを話す1,500人の過激派を拘束している。 3月13日、ドネツィクではウクライナ支持派と親露派の暴力的な衝突が起き、親露派の大群が警察の非常線を壊して乗り越え、少数の反対派への襲撃を始めた。欧州安全保障協力機構(OSCE)による取材調査では、30人程度の政権支持派は警察のバスへ逃げ込んだが、反政権支持派により囲まれて襲撃され、バスの窓を打ち破って刺激性のガスがまき散らされ、バスの出口から出てきた政権支持派を叩いて暴言を浴びせたとしている。また、OSCEの報告では、警察は政権支持派を守る適切な処置を取っておらず、反政権支持派を好ましい形で処理しているのを目撃されている。この衝突の日の後、取材を受けた人はOSCEに、ドネツィクの住民は安全のため、平和的な政権支持派のデモを組織しないことに決めたと述べている。 4月6日、約1,000-2,000人の武装勢力は、ドネツィクでの集会に参加し、ウクライナからの国家の独立を問う法的根拠のない「国民投票」の要求を行った。その後、200人の分離主義者(ドネツィク現地警察のスポークスマンIgor Dyominによると約1,000人)と親露派勢力が行政庁舎になだれ込み、ドアと窓を打ち壊していったが、政府当局者は日曜日で不在だった。分離主義者は、いわゆる「臨時議会」が政府当局によって開かれない場合、ロシアへの併合を問う「国民投票」を呼びかけ、国民の権限により全ての地方議員を無視して、4月7日の正午に一方的管理措置を宣言するとした。ロシアのタス通信によるとこの宣言は地方議員によって投票されたとしているが、他のメディアではドネツィク市や近郊地域のどの地方議員も会議に代表として派遣されていないと報告している。同じ4月6日、分離主義勢力「ドネツク共和国」の指導者は、ドネツィク州のロシア連邦への併合に関する国民投票を遅くとも2014年5月11日までに実施すると発表した。加えて、平和維持に必要な部隊をドネツィク州へ送るようプーチン大統領に訴えた。 4月12日、防弾チョッキや野戦服、カラシニコフ自動小銃を備えてマスクをした武装勢力がスロヴヤンシクの執行委員会建物とウクライナ保安庁事務所を占拠した。ウクライナ内務相アルセン・アヴァコフは、この武装勢力をテロリストと判断し、ウクライナ特殊部隊により建物を奪回すると発表した。警察署や政府庁舎の分離主義勢力による強奪は、ドネツィク州のドネツィク、クラマトルシク、ホルリウカ、マリウポリ、エナキエヴェを含むその他の都市でも発生した。ウクライナ政権のトゥルチノフ大統領代行は、建物奪回に向けた全面的な反テロ作戦を開始すると発表した。 4月16日までにドネツィク州での暫定政権によって行われた対テロ軍事作戦は、クラマトルシクで武装勢力がウクライナ軍の装甲車を奪取し、兵士がスロヴヤンシクまで追いやられるなどのいくつかの障害にぶち当たった。4月16日の夜、約300人の親露派武装勢力は、マリウポリのウクライナ軍部隊へ火炎瓶を投げるなどの攻撃を行った。アヴァコフ内務相は、「ウクライナ軍が発砲し、3人の襲撃者が殺害された」と発表した。 4月17日の停戦協定"Geneva Statement"によって、ドネツィク州での政府庁舎の占拠は終了せず、マリウポリの2つの親露派武装勢力は「この協定発効により裏切られたと感じる」と発表した。しかし、4月23日においても地域一帯の政府庁舎の占拠などの緊張状態は続いており、さらに、宣言された停戦は、スロヴヤンシクでの分離主義勢力による検問所で起きた襲撃により破られた。 欧州安全保障協力機構(OSCE)は、スロヴヤンシクの市庁舎、ウクライナ保安庁庁舎、警察署は自動火器で武装した勢力により要塞化されており、抗議する人もおらず町全体が静かになっていると報告している。しかしOSCEは「スロヴヤンシクは制服を着た軍や覆面の武装勢力だけでなく、市民と同じ服装の多くの人々によって厳しい監視態勢に置かれていることは確かだ」としている。スロヴヤンシクの一住人は「占拠している勢力について議論するのは恐ろしい」と語っている。 自称スロヴヤンシクの分離主義勢力のポノマリョフ自称市長は、"我々は町の外にスターリングラードを設立する"と宣言した。ウクライナ政権は、4月25日にスロヴヤンシクを完全に封鎖し、反テロ作戦を継続すると宣言した。4月26日、ドネツク人民共和国によってチラシが配布され、共和国による州統治権の宣言を支持するかどうかの国民投票を5月11日に開かれることが周知された。 その後も、両州におけるウクライナ政府軍及びウクライナ政府及びその支持派と、親露派の衝突・対峙は続いている。2018年1月18日、ウクライナ最高会議(議会に相当)は、東部2州を「再統合」を目指すべき「占領地」、ロシアを「侵略国」と規定し、ウクライナ大統領に「東部解放」の軍事行動を認める法案を可決した。 「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を自称する政権の実効支配地域と、他のウクライナ領の境界地帯はコンタクト・ライン(接触線)と呼ばれ、約500キロメートルに及び、塹壕や検問所が設置されている。接触線の東側でも、ウクライナ政府を支持あるいは頼りとする人々が暮らしている。毎月、延べ100万人以上が年金受け取りや親族との面会などのため接触線を越えて行き来している。ウクライナ政府や国営銀行の装甲付き輸送車が、危険を冒して検問所に近づき、こうした人々に現金や薪、パンなどを供給している。 ウクライナ軍と親露派は、前線からの兵力引き離しを2019年11月11日に完了した。
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