デハ3090形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 06:08 UTC 版)
「愛知電気鉄道電7形電車」の記事における「デハ3090形」の解説
全高4,122 mm・全幅2,615 mm・全長16,682.2 mm・車体長15,850 mm・側窓幅700 mm・客用扉幅1,020 mmと電7形の基本的なレイアウトは踏襲するものの、同形式と比較して車体長と客用扉幅以外の各部寸法が若干縮小されている。 外板は3/32インチ(2.38125 mm)厚の軟鋼板で電7形のそれに比して厚さが1.5倍となっており、柱はU字断面の鋼材を組み合わせて使用、また全鋼製と言いながら床は木床となっている。全鋼製車体でしかも外板の厚さを増したにもかかわらず自重はメーカー公表値で32.5 tとなっており、電7形と同型の車体を備える伊勢電気鉄道デハ121形が同じくメーカー公表値で33.4 tとしていることから、機器の相違はあるにしても同クラスの半鋼製車よりも軽く作れたことになる。なお、電7形はメーカーカタログに自重記載が無く車体重量のみ掲載されているが、名古屋鉄道成立後の電動車時代の公称自重でさえ31.5 tで、伊勢電気鉄道デハ121形の公称値よりも2 t重くなっていることから、電7形の新造時実測自重はデハ3090やデハ121形よりも重かった可能性が高い。 窓配置は電7形と同じ1 2 D (1) 8 (1) D 2 d(d:乗務員扉、D:客用扉、(1):戸袋窓)で座席配置や運転台の配置も電7形のそれと同様であるが、向かい合わせの固定クロスシート1ボックス分の線路方向の寸法が電7形が710 mm(側窓)×2+64 mm(窓柱)×2=1,548 mmであったのに対し本形式では700 mm(窓幅)×2+80 mm(窓柱)×2=1,560 mmとしてある。 また電7形では扉間が約1,840 mmでほぼ等間隔となっていた台枠横梁の中心間隔が、本形式では1,700 mm・1,413 mm・1,382 mm・1,700 mmと車体中央部の横梁が不自然な間隔になっている。ただし電7形と比較して枕梁を大型化するなど構造的に強化されている部分はあるものの、魚腹台枠ではなく設計当時最新の形鋼通し台枠の採用を踏襲している。 車体外観の形状面でも若干の相違が見受けられ、妻面は電7形で緩く円弧を描いていた屋根雨樋が本形式では一直線となり、翌1927年に日本車輌製造がその一部の製作を担当することになる、19 m級全鋼製大型高速電車である新京阪鉄道P-6形のP-6A形と呼ばれる初期グループと共通する、電7形にも増してスクエアあるいはキュービックな印象が強調されたエクステリアデザインとなっている。また運転台側窓は1枚窓へ変更、客用扉下部の乗降用内装ステップが廃止され、これに伴い下部ドアレールが床面高さまで取り付け位置を引き上げられている。 前照灯は製作に当たって新造時に作成された図面(図面番号 外 イ 1032)では屋根中央に前照灯を取り付ける構造が示されていたが完成した実車の写真では当該図面掲載の前照灯取り付け用台座が屋根上に存在せず、貫通扉に前照灯灯具固定用の金具が取り付けられており、電7形と同様に貫通扉に前照灯灯具を取り付けて使用されたことが確認できる。 (参考)一畑電気鉄道デハニ52(旧クハ3形クハ4:1928年製)車内。電7形・附3形と同様に天井が段差のあるモニター屋根となっている。 (参考)一畑電気鉄道デハニ53(1929年製)車内。デハ3090と同様に天井が丸屋根となっている。 屋根構造は木造車時代のそれを踏襲していた電7形と比較して大幅に簡素化されており、室内天井部は段差のない丸屋根構造となった。 同時期の日本車輛製造本店製地方私鉄向け電車では、例えば1928年製の一畑電気鉄道デハ1形およびクハ3形が電7形と同じ段差のあるモニター屋根構造、翌1929年製のデハニ50形が同様の基本設計ながら丸屋根構造の天井となっている。一畑以外の他社向けの実績においても日本車輛製造本店における鋼製車の天井設計が概ね1928年から1929年にかけての時期に集中して丸屋根構造に変更されており、デハ3090(および渥美電鉄デテハ1001)での丸屋根構造の採用が他に1年以上先んじた試作要素の強いものであったことが確認できる。 通風器は電7形と同様にガーランド式のものを設置するが、電7形のそれと比較して大型の通風器が左右に6基ずつ2列で計12基設置されている。また電7形で特徴的だったランボードは本形式ではパンタグラフ部を除く屋根中央に3枚並べたものを1組にして1列、パンタグラフの両脇に各1列と簡素化された。続くデハ3300形以降では通風器配置の変更に伴いパンタ部以外のランボードの2列化を実施されたものの、室内天井部の構成などは概ね本形式の設計が踏襲されている。 車体幅がやや縮小されたものの、公称定員は120名、座席定員50名で電7形と共通の値とされている。
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