サイド共栄圏構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/02 15:41 UTC 版)
発案者はジオン共和国国防大臣モナハン・バハロ。小説、アニメ作品『機動戦士ガンダムUC』で登場する架空の構想。 スペースノイドが欲しているのは自治権の確立であるが、連邦政府はこれを認めた瞬間に主従が逆転していることを知っているので、決して認めようとはしなかった。なぜ主従が逆転してしまうのかというと、宇宙世紀0096年の地球圏の生活は、エネルギー、食糧、経済活動そのものも7つのサイドと月があるからこそ回っていて、地球という惑星単体ではもはや20億のアースノイドの口も賄えないのが実情だった。対してスペースノイドは地球を切り離しても十分に自活することが出来る。この事実をジオン・ダイクンは宇宙世紀0052年にサイド3に移住しコントリズムを実践することで証明してみせたのだが、宇宙移民独立運動においては武器として活用しなかった。その事をフル・フロンタルは、ダイクンは優れた思想家ではあっても政治家でなかったと後世で評価している。ジオンの理念を捻じ曲げて独立戦争に利用したザビ家にしても二度に渡るネオ・ジオン戦争にしても同様で、自分達の存在を認めさせるという発想を捨てない限り連邦との戦いに勝利はないのである。 そこでモナハンは、月と7つのサイドの連携を強化し、中央(地球)を間引きした経済圏を確立するという「サイド共栄圏」の建設を画策する。もしこの構想に基づき、各サイドが経済協定を結んで地球を排斥すれば、地球は経済的に何の価値もない田舎になり果て、連邦政府も立ち行かなくなることが見込まれた。そしてサイド共栄圏のまとめ役たりえるのは、連邦の傀儡ではあるものの、曲がりなりにも連邦政府に認められた自治権を有するジオン共和国であると考えたのである。 しかし問題は、ジオン共和国の自治権返還期限が4年後の宇宙世紀0100年に迫っているという事だった。もし自治権が返還され共和国が元のサイド3に戻り、地方自治体以上の活動が許されぬとなったら、サイド共栄圏へ至る流れも生まれなくなるからである。そんな時にモナハンがスポンサーである袖付きに届いたのが、もし解放されれば連邦政府を転覆させかねない存在であるという「ラプラスの箱」を譲渡するというビスト財団からの申し出だった。モナハンは、ラプラスの箱を手にさえすれば時間が手に入るので、連邦を脅し共和国の解体を引き延ばした上でサイド共栄圏を作る暇を稼ごうとした。サイド共栄圏の話をフロンタルから聞かされたミネバは、連邦を蚊帳の外に置いたサイド共栄圏の構築により「変わろうとしない者に変われと要求するより無視してしまえばいい」という発想は、人類の革新を夢みたジオン・ダイクンの理想からは遠く、地球を人の住めない星にして人類を残らず宇宙へ上げようとしたシャアの狂気、熱情からも程遠いと否定した。また、サイド共栄圏が実現した時には、アースノイドは自分達だけで経済を賄うために地球の再開発を加速させるため、西暦の時代の再現が起こるだろうと問題提議もした。貧困の中で育つことになる新しい世代のアースノイドがやがてはスペースノイドへの仕返しを目論む事、かつてジオンが一年戦争を引き起こしたように、調和も革新もなく弱者と強者が立場を入れ替えながら続く未来をミネバは断固として受け入れることを拒んだ。しかし、自らを注がれた人の総意に従って行動する器だと規定するフロンタルは全人類を生かし続けるために行動し続けるだけだと言った。 ミネバとフロンタルの会話を聞いていたバナージ・リンクスは、フロンタルの語る言葉は自分達の今後を語っているのに他人事のような冷たさを感じた。ユニコーンガンダムが大気圏突入時にネェル・アーガマとガランシェールを繋いだ時に、機体を包み込んだあの光は自分が知っている皆の思いが重なり合ったような温かさを感じあのような可能性が人にあれば何か変わるのではないかと期待した。しかし、フロンタルも第二次ネオ・ジオン抗争時にもっと大きな光を見ていた。サイコフレームを媒介にして恐らくは地球圏の全人類の無意識を集積して物理的パワーに転化したのであろう光、小惑星アクシズを押し返したサイコ・フィールド、いわゆるアクシズ・ショックである。だがそれほどの可能性が示されても人は変わらなかった、現状を維持するためなら可能性さえ葬るのが人間であり、我々はその現実の中で平和と安定を模索していくしかないとフロンタルは語り、最後にバナージの言う可能性というやつは、争いを引き起こす毒になることもあるのだと吐き捨てた。そんなフロンタルを見てミネバは、自分の知っているシャア・アズナブルは本当に死んだのだと確信した。
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