『政治的リベラリズム』とは? わかりやすく解説

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『政治的リベラリズム』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 16:06 UTC 版)

ジョン・ロールズ」の記事における「『政治的リベラリズム』」の解説

詳細は『政治的リベラリズム』を参照ロールズ2作目主著は『政治的リベラリズム』(Political Liberalism, 1993)である。同書で、ロールズ人間の善に関する市民の間の哲学的宗教的道徳的不合意の文脈における政治的正統性問題目を向けたそのような不合意は―ー自由な国家保護するように設計されている開かれた探求自由な良心という条件の下での人間合理性自由な行使結果として――理にかなっていると彼は主張した理にかなった不合意に向き合う正統性問いは、ロールズにとって緊急であった。なぜなら、「公正としての正義」の彼自身正当化は、理にかなって拒絶可能である人間の善のカント構想依拠していたからである。『正義論』提示されている政治哲学が、人間繁栄についての論争的な構想によってのみ示されるであればそのような構想によって秩序けられるリベラルな国家正統ありうるのかが不透明になる。 これは、一見すると『正義論』扱われなかった新し懸念あるよう思われる。しかし、この懸念を導く直観は、『正義論』導いている基本的な考え方変らない。それは、社会基本的な憲章は、社会的法的、および政治的制約のもとで人生を送る市民が、理にかなって拒絶できない原則論拠理由にのみ頼らなければならないという考えである。換言すれば、法律正統性は、その正当化理にかなって拒絶できないということ条件とする。この古い洞察『正義論』支えるものであった。しかし、その適用に関しては「公正としての正義」の深い正当化にまで拡大する必要があることにロールズが気づいたときに、新しい形取った。彼は『正義論』において、「公正としての正義」の正当化自律的な道徳的主体性自由な発展としての人間繁栄という理にかなって拒絶可能なカント的)構想沿って提示していた。これに対して、『政治的リベラリズム』の核心は、リベラルな国家正統性獲得するために「公共的理性理想」にコミットなければならないという主張である。これはおおまかに言って公共的な立場にある市民は、理由としての地位市民の間で共有されている理由にのみ相互に依拠しなければならないことを意味する。したがって政治的推論純粋に公共的理性」の観点から進められなければならない例えば、同性愛者結婚拒否修正第14条平等保護条項違反構成するかどうか判断する最高裁判所判事は、この問題に関する彼の宗教的信念訴えかけることはできないが、彼は同性世帯子供発達のために望ましくない状況提供するという議論考慮に入れることができる。これは、神聖なテキスト解釈に基づく理由が(理由としての力は、理にかなって拒絶しうる信仰コミットメント依存するという意味で)非公共的であるためである。一方で発達するための最適な環境子供たち提供することの価値依拠する理由は、公共的理由――理由としての地位は、人間繁栄について深く論争余地のある構想利用していない――である。 ロールズは、シヴィリティの義務――理由として相互に理解されうる理由相互に提供する市民義務――は、彼が「公共的政治フォーラム」と呼ぶ領域適用される主張した。このフォーラムは、たとえば社会の最高の立法機関司法機関といった政府の上部から、州議会で誰に投票するか、または国民投票どのように投票するかを決定する市民判断までに渡る。また、選挙運動中の政治家も、選挙区の非公共的な宗教的または道徳的信念屈することを控えるべきであると彼は信じた公共的理性理想は、リベラルな国家基盤となる公共的な政治的価値(自由、平等、公正)の優位性確保する。しかし、これらの価値正当化についてはどうなるのか。そのような正当化は、理にかなって拒絶されるであろう深い(宗教的または道徳的な形而上学的コミットメント必然的に利用するため、ロールズ公共的な政治的価値個人によってのみ私的に正当化される可能性があると考えた公共的なリベラルな政治的構想とそれに付随する価値が(司法意見大統領の演説などで)公共的承認される場合はあるが、その深い正当化行われない正当化課題は、ロールズが「理にかなった包括的教説」と呼んだものと、それに従って生きる市民向けられる理にかなったカソリック教徒は、リベラルな価値をある仕方正当化し理にかなったイスラム教徒別の仕方正当化し世俗的な市民はさらに別の仕方正当化するベン図用いてロールズ考え説明することができる。公共的な政治的価値は、多数理にかなった包括的教説重なりあう共有領域になる。 『正義論』提示されているロールズ安定性説明は、カント的な包括的教説と「公正としての正義」との両立可能性詳細な描写捉えることができる。彼の望みは、他の多く包括的な教説についても同様の説明提示されることである。これは、ロールズ有名な重なり合うコンセンサス」という観念である。 そのようなコンセンサス必然的にいくつかの包括的教説、すなわち「理にかなっていない」包括的教説除外するだろう。理にかなっていない包括的教説がまさに理にかなっていないのは、シヴィリティの義務両立できないからである。これは、理にかなっていない包括的教説が、自由、平等、公正という正義リベラルな理論保護するように設計されている根本的な政治的価値両立しないということでもある。したがってロールズそのような教説について何を言わなければならないかという質問対す1つ答えは、何もないということである。一つには、リベラルな国家そのような教説保持する個人宗教原理主義者など)に自らを正当化することはできない。なぜならそのような正当化は、(すでに記されているように)公共的な政治フォーラムから排除された、論争的な道徳的または宗教的コミットメント観点から進められるからである。しかし、より重要なのは、ロールズプロジェクトの目標は、主に政治的正統性リベラルな概念内的に首尾一貫しているかどうか判断することであり、このプロジェクトは、リベラルな価値観コミットする人々政治問題についての彼らの対話熟議および議論互いにどのような理由使用してよいのか特定することによって進められるロールズプロジェクトはこの目標持ちリベラルな価値観をまだコミットていない、または少なくとも態度明確にていない人々正当化するという問題を予め排除している。ロールズ懸念は、シヴィリティと相互正当化義務という観点から具体化され政治的正統性という考えが、現代民主主義社会宗教的および道徳的多元主義直面してもなお、実行可能な形式公共的討論として役に立つかどうか関係しており、政治的正統性自身構想そもそも正当化するのではない。

※この「『政治的リベラリズム』」の解説は、「ジョン・ロールズ」の解説の一部です。
「『政治的リベラリズム』」を含む「ジョン・ロールズ」の記事については、「ジョン・ロールズ」の概要を参照ください。

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