獏とは? わかりやすく解説

ばく【×獏/×貘】

読み方:ばく

奇蹄(きてい)目バク科哺乳類総称ずんぐりした体形で尾は短い。鼻と上唇合わさって伸び、象の原型思わせる前肢に4指、後肢に3指あり、ひづめをもつ。森林水辺のやぶにすみ、草食性で、入って敵から逃がれる。マレーバク・アメリカバクなど4種がある。

中国想像上の動物。形はクマに、鼻は象に、目はサイに、脚はトラに、尾は牛に似て、人の悪夢を食うといわれ、その皮を敷いて寝ると邪気避けるという。


ばく 【獏】

東南アジア中南米実際に獏という奇蹄類動物実在するが、中国には想像上の動物としての獏があり、毛は白黒の斑で、形は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎のようだとされ、人間悪夢食ってくれるとの俗信があり、また、その皮を敷いて寝ると邪気避けられるとする。日本では新年初夢のために獏の画をの下に置くとよいとする

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/26 01:36 UTC 版)

獏(葛飾北斎画)
水木しげるロードに設置されている「ばく」のブロンズ像
豊臣秀吉が使用したと伝わる獏枕

(ばく)は伝説の生物中国発祥で、日本へ伝わった。日本では、人が睡眠中に見る悪夢を食べるとされる。

概要

中国で「獏(貘)」は古くから文献に見えるが、どんな動物であるかについては文献によって一定しない。『爾雅』釈獣には「白豹」であるといい、『説文解字』には「熊に似て黄黒色、蜀中(四川省)に住む」(『爾雅』疏に引く『字林』も同様だが「白黄色」とする)であるという。『爾雅』の郭璞注には「熊に似て頭が小さく脚が短く、黒白のまだらで、銅鉄や竹骨を食べる」とあり、ジャイアントパンダを指したようである[1]段玉裁『説文解字注』では、今も四川省にいるとしており、やはりパンダを指している。後に、白黒まだらであることからマレーバクと混同され、また金属を食べるという伝説が大きく取り上げられることになった。

本草綱目』にも引かれている白居易「貘屏賛」序によると、鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラにそれぞれ似ているとされる[2]

日本では獏は悪夢を食べるとされる。中国では獏が悪夢を食べる描写は無かった。しかし、獏の毛皮を座布団寝具に用いると疾病や悪気を避けるといわれ、獏の絵を描いて邪気を払う風習もあり代には屏風に獏が描かれたりした[3][4]。こうした邪気を払う伝説が日本に伝わるにあたり、「悪夢を食べる」と解釈されるようになったと考えられている[5]。『後漢書』や[6]『唐六典』の注に伯奇(はくき)が夢を食うといい[7]、これが獏と混同されたとの説もある[8]。なおこの「伯奇」を「莫奇」と書いてある文献もあるが、江戸時代の小島成斎『酣中清話』の記載を孫引きしたもののようである[9]

日本の室町時代末期には、獏の図や文字は縁起物として用いられた。正月に良い初夢を見るためにの下に宝船の絵を敷く際、悪い夢を見ても獏が食べてくれるようにと、船の帆に「獏」と書く風習も見られた[3]。江戸時代には獏を描いた札が縁起物として流行し、箱枕に獏の絵が描かれたり[3]、獏の形をした「獏枕」が作られることもあった[8]

中国の聖獣・白沢と混同されることもある。東京都五百羅漢寺にある獏王像も、本来は白沢の像とされている[5]

実在の動物との関連

奇蹄目バク科の哺乳類のバクは、この伝説上の獏と姿が類似する事から、この名前がついた。

なお、京都大学名誉教授 林巳奈夫の書いた『神と獣の紋様学―中国古代の神がみ―』によれば、古代中国の遺跡から、実在する動物であるバクをかたどったと見られる青銅器が出土している。このことから、古代中国にはバク(マレーバク)が生息しており、後世において絶滅したがために、伝説上の動物・獏として後世に伝わった可能性も否定はできない。なお古代中国においては、他にもアジアゾウ英語版)やインドサイスマトラサイジャワサイ英語版)が生息しており、雲南省の野生ゾウの個体群を除けばその後に絶滅している。

脚注

  1. ^ 荒木達雄「中国古文献中のパンダ」『東京大学中国語中国文学研究室紀要』第9号、東京大学文学部中国語中国文学研究室、2006年4月、1-22頁、doi:10.15083/00035297ISSN 13440187NAID 120000873405 
  2. ^ 白居易白氏文集』 巻22・貘屏賛序http://ctext.org/library.pl?if=en&file=78088&page=52。「貘者、象鼻・犀目・牛尾・虎足、生南方山谷中。寝其皮辟温、図其形辟邪。」 
  3. ^ a b c 笹間 1994, p. 135
  4. ^ 鈴木 1982, p. 479.
  5. ^ a b 村上 2005, pp. 259–261
  6. ^ 『後漢書』礼儀志中「伯奇食夢」
  7. ^ 張九齢等唐六典』 巻14・太常寺https://archive.org/stream/06046342.cn#page/n132/mode/2up。「伯奇食夢」 
  8. ^ a b 日野 1926, p. 142
  9. ^ 小島知足. 酣中清話. 貘食夢. https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i05/i05_01832/i05_01832_p0005.jpg 早稲田大学図書館古典籍総合データベース)

参考文献


獏(ばく)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/31 14:10 UTC 版)

妖怪のお医者さん」の記事における「獏(ばく)」の解説

悪夢好きな5人組

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/23 03:10 UTC 版)

葬送曲ナイトメア」の記事における「獏」の解説

妖のバクのこと。ひとの悪夢食べる者。

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獏(ばく)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 06:55 UTC 版)

天保異聞 妖奇士」の記事における「獏(ばく)」の解説

西の者達が呼び出した巨大な妖夷

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 15:14 UTC 版)

モンスター娘のいる日常」の記事における「獏」の解説

夢を主食とする種族。そのため、実際食事少量で済む。ゴツい4本指の手バクの耳を持ちマレーバクのように肌が白黒分かれている。

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出典:『Wiktionary』 (2021/08/12 08:21 UTC 版)

発音(?)

名詞

  1. 奇蹄目バク科総称
  2. 伝説上の生き物で体は熊、鼻は、目は、尾は牛、足は虎に似いていて日本においては人の夢を食べとされる

翻訳

語義1

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