バク科とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > バク科の意味・解説 

バク

(バク科 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/21 06:14 UTC 版)

バク科
アメリカバク
Tapirus terrestris
保全状況評価[1]
ワシントン条約附属書I[注釈 1]
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 奇蹄目 Perissodactyla
亜目 : 有角亜目 Ceratomorpha
上科 : バク上科 Tapiroidea
: バク科 Tapiridae
学名
Taipiridae Gray, 1821[2]
タイプ属
Tapirus Brisson, 1762[2]
タイプ種
Tapirus terrestris (Linnaeus, 1758)[2]
和名
バク科[3]
  • ヘスペラレテス Hesperaletes
  • †モタピルス Miotapirus
  • †プロタピルス Protapirus
  • バク属 Tapirus

バク(獏)は、奇蹄目に含まれるバク科(バクか、Tapiridae)の構成種の総称である。現生種はすべてバク属(バクぞく、Tapirus)に分類される。

名称

英名は「テイパー(tapir[注釈 2]」であり、原産地(中南米および東南アジア)を除く世界の多くの言語では「タピル」(tapir)に近い名で呼ばれ、これらは全てブラジル先住民の話すトゥピ語の単語「tapi'ira」に由来している。

例外は日本語および中国語韓国語で、近代以降分類学的な文脈でこの動物が知られるようになった際に、伝説上の動物「」(貘)の名を中国古書より借用し、これが定着した。日本語に関していえばキリンなどに類似の経緯である。

なお、古書に見る「獏」が実際にマレーバクを意味したものであったかどうかについては諸説あるが、古書における記述は分類学も記録メディアも存在しない中で雑駁とした伝説や伝聞を書きとめたものに過ぎない。体色の類似からジャイアントパンダとの混同もあったという。

分布

北アメリカ大陸(メキシコ南部が北限)、南アメリカ大陸東南アジア[3]

日本列島にも始新世中新世まではクシロムカシバクなどが分布していたが[4]更新世以降の産出例はない[5]

形態

最小種はカボマニバク(T. kabomani[6]。成獣の体長は1.7-2m程度。体型は流線型で、薮の中を進むのに適している[3]。肩よりも腰の方が高い[3]。皮膚は分厚く、ヤマバクを除いて体毛は少ない[3]。ヤマバクは長い体毛で被われ、寒さから身を守るのに役立つと考えられている[3]。頸部に鬣状に体毛が伸長する種もいるが、これは捕食者から頸部を守る役割があると考えられている[3]。マレーバクは体色が前部と後部が黒・胴体中央部が白だが、これも夜間では体が分断されたように見え輪郭がつかめず捕食者から身を守る役割があると考えられている[3]ブタのような体つきをし、ゾウの鼻のような口吻をもつ。

吻端は鼻と上唇があわさり、その先端に鼻孔が開口する[3]。眼は小型で眼窩の奥の方にあり、薮の中で眼が傷つきにくくなっている[3]。四肢は短く頑丈[3]。前脚が後脚よりも長いという特異な骨格構造を持つ。これは主な生息域には薮が多く、背丈の長い草を掻き分けて走ることに適した形状であるとされる。前肢の指は4本、後肢の趾は3本[3]。前肢の4本目の指は小型で高い位置にあり、柔らかい地面を移動する時にのみ用いられる[3]。指趾は蹄状になっているが、接地面は球状[3]。奇蹄目はその名が示すとおり、通常奇数の指をもつが、バクの各脚の指の数は、前脚が4本、後脚が3本である。

幼獣の体色は赤褐色で、白い斑点や筋模様が入る[3]。この体色も薮の中では保護色になると考えられている[3]

分類

分子系統によると、奇蹄目の現生3科のうちバク科とサイ科姉妹群で、ウマ科はやや離れている[7][8]

以下のうちカボマニバクを除く現生種の分類・英名は Grubb (2005) に、和名は MacKinnon・祖谷 (1986) に従う[2][3]

化石種

現生種

生態

主に森林に生息する[3]夜行性傾向が強い[3]。水辺を好み、採食や避暑・外部寄生虫から身を守るなどの理由から水中で過ごすことも多い[3]。幼獣を連れた母親以外は、主に単独で生活する[3]。危険を感じると水中へ逃げ込む[3]

草本、木の葉・芽・若枝、果実、水生植物などを食べる[3]

繁殖様式は胎生。周年繁殖する[3]。交尾前の儀式的な行動として、お互いに鳴き声を交し合う[3]。雌雄は互い違いの向きになり、お互いの陰部の臭いをかぎながら回り始める[3]。回るのが早くなると共に互いの耳介や脇腹・四肢に噛みついたり、吻端で腹を突く[3]。1回に1頭の幼獣を産む[3]

人間との関係

皮革が利用されることもあり、手綱や鞭の原料とされることもある[3]

ゴムやトウモロコシなどを食害する[3]

森林伐採や農地開発・ダム建設などによる生息地の破壊、食用や皮革用・スポーツハンティングなどの狩猟により生息数が減少している種もいる[3]

鶴見川水系を地図上にあらわすとバクの形に似ているので、バクが鶴見川のキャラクターとなっている。

関連画像

脚注

注釈

  1. ^ アメリカバクはワシントン条約附属書II
  2. ^ テイパー。ただしタピーアのように発音する人もいる。

出典

  1. ^ Appendices I, II and III<http://www.cites.org/>(accessed[リンク切れ] December 17, 2015)
  2. ^ a b c d Peter J. Grubb英語版 (2005). Don E. Wilson英語版、DeeAnn M. Reeder. ed. “Order Perissodactyla”. Mammal Species of the World (ジョンズ・ホプキンズ大学出版局バックネル大学) 1: 633-634. http://www.departments.bucknell.edu/biology/resources/msw3/browse.asp?id=14100036 2025年7月21日閲覧。. 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae キャシー・マッキノン英語版今泉吉典(監修) 著、祖谷勝紀 訳「バク」、D.W.マクドナルド 編『大型草食獣』4号、平凡社〈動物大百科〉、1986年5月1日、44-45頁。ISBN 978-4582545043 
  4. ^ 冨田幸光「Reconsideration of Kushiro Tapir (Mammalia, Perissodactyla) from the Paleogene of Eastern Hokkaido, Japan」(pdf)『国立科学博物館専報』第27号、国立科学博物館、1994年、31-36頁。 
  5. ^ 河村愛、河村善也「第四紀の東アジアにおけるバク類の分布」『化石』第116巻、日本古生物学会、2024年、55–68頁、doi:10.14825/kaseki.116.0_55 
  6. ^ a b c Mario A. Cozzuol, Camila L. Clozato, Elizete C. Holanda, Flávio H. G. Rodrigues, Samuel Nienow, Benoit de Thoisy, Rodrigo A. F. Redondo, Fabrício R. Santos, "A new species of tapir from the Amazon," Journal of Mammalogy英語版, Volume 94, Issue 6, 2013, Pages 1331-1345.
  7. ^ Tougard, Christelle; Delefosse, Thomas; Hänni, Catherine; Montgelard, Claudine (2001), “Phylogenetic Relationships of the Five Extant Rhinoceros Species (Rhinocerotidae, Perissodactyla) Based on Mitochondrial Cytochrome b and 12S rRNA Genes”, Molecular Phylogenetics and Evolution英語版 19 (1): 34–44 
  8. ^ Price, Samantha A.; Bininda-Emonds, Olaf R. P. (2009), “A comprehensive phylogeny of extant horses, rhinos and tapirs (Perissodactyla) through data combination”, Zoosystematics and Evolution英語版 85 (2): 277–292 
  9. ^ 荒蒔祐輔・魚津諒大・金澤朋子・渡邊駿・福田健二・浦島匡・田中正之「アメリカバクにおける乳成分組成および仔の吸乳頻度」『ミルクサイエンス』第71巻 2号、日本酪農科学会、2022年、35-41頁。
  10. ^ Manuel Ruiz-García, Armando Castellanos, Luz Agueda Bernal, Myreya Pinedo-Castro, Franz Kaston & Joseph M. Shostell, “Mitogenomics of the mountain tapir (Tapirus pinchaque, Tapiridae, Perissodactyla, Mammalia) in Colombia and Ecuador: Phylogeography and insights into the origin and systematics of the South American tapirs,” Mammalian Biology英語版, Volume 81, Issue 2, Deutsche Gesellschaft für Säugetierkunde, 2016, Pages 163-175, シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア

外部リンク

  • ウィキメディア・コモンズには、バクに関するカテゴリがあります。
  • ウィキスピーシーズには、バクに関する情報があります。

「バク科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「バク科」の関連用語

バク科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



バク科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのバク (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS