絨毯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 15:28 UTC 版)
概要
絨毯は床材の中で最も歴史があるとされ、カーペットともいう[2][注釈 1]。
カーペット(Carpet)はラテン語のCarperre(毛をくしけずる)に由来し、広義には軟質敷物一般、狭義にはパイルの構造をもつ軟質敷物をいう[4]。また本来の意味ではないが、樹脂敷物など硬質のものにも用いられている[4]。「カーペット」の名前をもつ敷物として、イグサで編まれたい草カーペット、畳などの部屋を新たにフローリング床に替えるためのウッドカーペット、防音などを目的として用いられるコルク製のコルクカーペットなどもある。
また、ラグとは一枚敷きの敷物をいうが、スウェーデン語のRugg(あらい交錯した毛)に由来する[4]。
カーペットの敷き方には、部屋敷きとして部屋全面に敷く敷き詰め、一枚物として敷く中敷き、小型のものを2枚以上敷くピース敷きがある[4]。
種類
じゅうたん(カーペット)や床敷物の分類は、ISO、日本産業規格(JIS)、日本標準商品分類などにより異なる[5]。
軟質敷物一般は次のように分類される[4]。
- フェルトカーペット(Felt Carpet)
- フェルトカーペットは日本語では毛氈(もうせん)といい、織フェルトと圧縮フェルトがある[4]。
- 織物のカーペット(woven carpet)
- パイルのないもの(薄織)
- パイルのもの(パイル織)
- 緞通(Hand Knotted Carpet) - 通常「オリエンタルラッグ」と呼ばれているもので、経糸2本をパイル糸で手結びして切り揃え、それに地緯糸を平織に織って作るもので最高級品とされる[4]。
- ウィルトン織(Wilton Carpet) - 通常「絨毯(絨氈)」と呼ばれているもので、毛切り(Cut pile)とわな(Loop pile)で構成されるもの[4]。このカットパイルとループを表面に出したものを金華山カーペットという[4]。また、強撚糸を用いたものをフリーズカーペット(Freize Carpet)という[4]。緯糸2本でパイル一段を織る二越(ふたこし)でわた織のものをブラッセル(Brussel)という[4]。
- スプール・アッキスミンスター・カーペット(Spool Axminster Carpet) - 通常「」と略され、特殊な織機で色糸を経密度に地経糸の間に植え付けたもの[4]。
- セニール・アッキスミンスター・カーペット(再織カーペット、Chenille Carpet)[4]
- グリッパー・アッキスミンスター・カーペット(Gripper Axminster Carpet)[4]
- パイル編(編物)
- パイル糸を編み込んだものなど[4]
- 刺繍カーペット
- フックド・ラグ(Hooked Rug)[5] - 綿布やジュート布を基布として色糸をパンチング・マシンで刺繍して裏地にパイルを出したもの[4]。
- タフテッド・カーペット(Tufted carpet) - タフテング・マシンでジュート基布に剌繍したもの[4]。基布に針でパイル(毛足)を刺繍し、パイルが抜けないように裏から接着剤で止めたカーペットのこと[6]。アメリカのキャサリン・エバンスがタフテッド技法を開発したことから、タフテッドカーペットが生まれた[6]。パイルを植毛して作られた刺繍カーペットのこと[7]。タフトとは毛房のこと[7]。荒い綿布やヘッシャンクロスを基布にし、これをミシン針でパイルを植えつける[7]。基布の裏目にも「縫目」が出るので、ラテックス(生ゴム)を塗布しコーティングさせる[7]。使用される材質は、レーヨン・ナイロン・アクリル・ウールとその混紡など多種にわたる[7]。大量生産が可能で、住宅用としての需要が多い[7]。
- 縫付けカーペット
- 電着カーペット - 綿やレザーの基布にパイルを電着したもの[4]。
- 接着カーペット - 紡毛ラップ等を基布に接着したもの[4]。
ISO
ISO 2424では次のように分類されている[5]。
- パイルのあるカーペット
- 織カーペット
- タフテッド カーペット
- ニット カーペット(編みカーペット)
- ボンデッド カーペット
- フロック カーペット
- だんつう(緞通)
- ステッチド オン カーペット
- ニードル パンチ カーペット
- パイルのないカーペット
- 織カーペット
- ニット カーペット(編みカーペット)
- ボンデッド カーペット
- ブレーデッド カーペット
JIS
- タフテッドカーペット(tufted carpet)
- タフティング機で基布にパイル糸を刺し込んでパイルを形成し、接着剤を用いてパイル糸を固定した床敷物。(JIS用語)
- アキスミンスター・カーペット(Axminster carpet)
- あらかじめ定めた順序に従って配列した色糸を織り込んでつくられた織じゅうたん。色糸の織り込み方法によってスプールアキスミンスター、シェニールアキスミンスター、グリッパーアキスミンスターなどの名称で呼ばれるものがある。(JIS用語)
- イギリスのアキスミンスターで作られた手織りのものに始まった織り方で、現在は機械織りによって普及している[9]。適当な長さにカットされたパイルをU形に挿入した形で織られ、多色の模様織りに特徴がある。
- ウィルトン(Wilton)
- ワイヤの打込み装置を持つ織機でつくった織じゅうたん。二重パイルの織機でつくったものをいうこともある。(JIS用語)
- ニードルパンチカーペット(needlepunched carpet)
- 基布にウエブを積み重ね、かぎの付いた針で突き刺してフェルト状とし、裏面に樹脂加工を施した床敷物。(JIS用語)
※参考文献:「カーペット辞典」、「新版カーペットハンドブック」(いずれも日本カーペット工業組合発行)
絨毯の特徴
絨毯(カーペット)は内装材(装飾材)として用いられ[2][4]、多様な色彩に染色できることによる美しさ、物理的な暖かさや暖色系の敷物による心理的な暖かさ、足音や床から伝わる不快音が立たないこと、触感の良さ、板敷きなどと比較した場合の歩きやすさ、安全性などが挙げられる[4]。
特にパイル地のカーペットには次のような特徴がある。
- 色彩 - パイルによって色彩の変化を生じ、立体感を強め、豪華荘重な効果を出す[4]。
- 保温 - パイル間に暖かい空気を含むため暖かさを長時間保つ[4]。
- 防汚 - 表面はパイル先端のみ触れ、空気中の汚れも表面に堆積しにくい[4]。
- 耐摩耗・耐久力に優れる[4]。
- パイルの反発性や弾性により踏み心地がよい[4]。
- 吸音に優れ、残響も小さい[4]。
- 衝撃を吸収する(転倒や万が一の割れ物の落下による破損を防ぐ)→日本カーペット工業組合はカーペットの衝撃吸収性について上智大学や首都大学東京などと共同研究した。屋内転倒事故において、カーペットはフローリングに比べて頭部への保護性能が十分期待できることが分かった。調査報告書はこちら。
なお、カットパイルカーペットでは、パイルの不規則な毛倒れによって表面に色の明暗ができる「くも現象(シェーディング)」が起きることがあるが、カーペットの物性や耐久性に影響はない[10]。
- ^ a b 大久保 翔平「書評 鎌田由美子著『絨毯が結ぶ世界 : 京都祇園祭インド絨毯への道』」『史学雑誌 / 史学会 編』第126巻第11号、史学会、2017年11月、1802-1810頁。
- ^ a b c 鈴木 澄江「建築に用いられる材料のこれから」『建材試験情報』第57巻、一般財団法人建材試験センター、2021年、4-8頁。
- ^ 西尾 寅弥「現代語彙における同義語」『ことばの研究 = Study of language』第4巻、国立国語研究所、1973年12月、1-14頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 柳原 重雄「カーペットCARPET」『繊維製品消費科学』第4巻第2号、一般社団法人 日本繊維製品消費科学会、1963年、4-8頁。
- ^ a b c d 丸山 孝雄「カーペットの分類とテスト法の現状」『繊維機械学会誌』第37巻第7号、一般社団法人 日本繊維製品消費科学会、1984年、279-P284。
- ^ a b 本田榮二『ビジュアル解説 インテリアの歴史』秀和システム、2011、316-318頁。
- ^ a b c d e f インテリア基本語研究会/編著『インテリア基本語辞典 第二版』彰国社、2000、p126頁。
- ^ a b インテリア基本語研究会/編著『インテリア基本語辞典 第二版』彰国社、2000、180頁。
- ^ 渡辺優『図解インテリア・ワードブック』建築資料研究社、1996、83頁。
- ^ “「くも」現象”. 日本インテリア協会. 2023年12月21日閲覧。
- ^ http://www.saga-cci.or.jp/tokusan/nabedan/history.html
- ^ http://www.city.sakai.lg.jp/naka/miryoku/nakaku_machikado/dantsuu.html
- ^ a b c d 大墨 正「フロアカバリング材発達史(7)」『日本インテリア学会 研究発表 梗概集』第13巻、日本インテリア学会、2001年、93-94頁。
- ^ 【NEXT1000】3年平均のROE/1位・リファインバース 廃棄カーペットから塩ビ『日本経済新聞』朝刊2018年3月20日
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