絨毯と商業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 14:55 UTC 版)
キリムはパイル織りの絨毯よりも安価であるため、絨毯の初心者コレクターはキリム集めからコレクションを始めることが多い。キリムはパイル織りの絨毯に比べて二流である(劣後している)とみなされているにもかかわらず、近年、キリム自体がコレクションの対象とされてきており、高品質のキリムには高値がつけられている。キリムがパイル織り絨毯よりも劣っているとみられていた点は、実際は、土着の用途のために製造された絨毯と、商品用として厳密に製造された絨毯の違いにすぎなかった。キリムは大規模な輸出商品ではなかったため、パイル織り絨毯とは異なり、外国の市場に合わせてデザインを変更する必要がなかった。コレクターが、伝統的な土着の織物に価値を見出すようになってからは、キリムは人気が出るようになった。その後、西洋で新たに知られるようになったキリムの品質は、以下の3つの要素により損なわれることとなった。第1の要素は化学染料の発達である。伝統的なキリムの魅力の重要な要素の一つは、織糸を手染めすることによりそれぞれの色の色調にばらつきが出るため、abrashと呼ばれるまだらな色合いができることであった。ヴィクトリア朝の後半に開発された化学染料(アニリンを用いたもの)によりabrashは生じなくなり、キリムは色鮮やかになったが、しばしば色褪せが生じるようになった。第2の要素は中央アジアにおいて遊牧が行われなくなってきたことである。定住が始まると、織物に各部族の特色が表れづらくなった。第3の要素は、キリムの商品性が新たに発見されたことそれ自体の帰結である。絨毯は個人での使用のためではなく、輸出して外貨を獲得するために製造されるようになったため、土着のスタイルや、絨毯の社会的な意味合いは失われた。伝統や、織り手の家族の求めるもの・織り手自身の願いや不安に従ってではなく、市場に合うように模様や色が選択されるようになった。
※この「絨毯と商業」の解説は、「キリム (絨毯)」の解説の一部です。
「絨毯と商業」を含む「キリム (絨毯)」の記事については、「キリム (絨毯)」の概要を参照ください。
- 絨毯と商業のページへのリンク