さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
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反響
1979年7月には、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』(スターシャ生存編)と劇場版『海のトリトン』とともにラストメッセージを改訂した本作が「宇宙戦艦ヤマトフェスティバル」として東映洋画系でリバイバル公開され、配収5億1000万円を記録した[13][36]。
1978年の日本映画では、配収21億5000万円の『野性の証明』に次ぐ2位の興行成績を記録したヒット作品となった[35]。公開当時の1978年時点では、戦後日本映画の配給収入記録としても、『八甲田山』『人間の証明』『野性の証明』に次ぐ4位に入り、本作のヒットは日本映画界にとっても事件だった[37][38]。
1991年公開の『魔女の宅急便』が配給収入21億5000万円を記録するまで、アニメ映画の興行成績(金額ベース)の記録を保持した[39]。
長尺版の噂
本作は完成が遅れたことから、公開時の初期に一部劇場にて公式版よりも28分[要出典]も尺が長く、一部セリフや音楽等の違う「零号フィルム」と称する初期バージョンが上映されたという噂が存在する[40]。以下は主なシーン[40]。
- 英雄の丘で、古代進が佐渡酒造に「先生、地球はこれでいいのでしょうか。」と繁栄に酔いしれる地球人に疑問を呈するシーン。
- ドックに眠るヤマトで古代進が沖田十三の幻を見た直後、各種計器の電源が突然に入り始め、徳川彦左衛門が得意げに笑顔で現れるシーン。
- 土方が艦長に就任する際、古代以外の乗組員が「負けた船の艦長がヤマトの艦長になるなんて…」と反対するシーン。
- ミルにデスラーの監視を命じたサーベラーに対して、ズォーダーが「女だな、サーベラー」と言うセリフを発するシーン。
「池袋の東急系映画館で公開直後の版は、後に上映された版より長尺で、上記の場面があった」としている井上静[41]など、「確かに見た」という証言も多く存在するとされている[40]。
上映されたとされる長尺版が「零号フィルム」と言われることがあるが、そもそも本来の零号フィルムとは画調や色合いを最終調整して完成品である初号に仕上げるものであり、画調や色合い以外は初号と同一の内容である[42][43]。よって、上映プリントと零号との間で上映時間の長さや音楽・セリフで違いが生じることは本来ありえないことである。事実、資料によれば、7月28日に「フィルムゼロ号完成。」、翌29日に「フィルム初号完成。」、8月2日に試写会が開催され、8月5日に全国133館で一斉封切り[44]という零号から改めて編集やダビングをするには逼迫したタイムスケジュールである。
零号フィルムが上映された理由として制作が遅れたためにプリントが間に合わなかったためだと説明される。[要出典]しかし、本作の5年後のケースで同じく東映洋画部が配給する1983年の『宇宙戦艦ヤマト 完結編』では18日にフィルムが完成すると、翌日の19日にほぼ日本全国での公開を、20日までには全ての劇場での上映を実現していた[45]。それに対して本作は、前述のように初号が7月29日に完成し、全国封切りは8月5日と、プリントとその輸送については『完結編』よりもずっと余裕があるスケジュールである。そして映画館側にしても上映回数が減って興行に確実にマイナスの長時間版を好んで上映することはない。[独自研究?]
長尺版が存在するという主張には客観的な証拠がなく、「見た」という記憶に基づくものである。例えば、通常版よりも約30分長い上映時間を記した新聞掲載の映画館のタイムテーブル、通常版とは異なる劇場音声を録音したテープなどといった客観的な証拠が提示されたことはない。また、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』や『宇宙戦艦ヤマト 完結編』の場合[46][45][47]のような完成の遅れや異なる編集版について、公式な記録や当時の書籍、関係者の言及も見あたらない。
そして長尺版に存在したと言われる前述のシーンは、いずれも当時の『さらば』のシナリオ[48]・ひおあきらによる漫画[49]・小説[50][51]・『オールナイトニッポン』のラジオドラマ版・『宇宙戦艦ヤマト2』[注 13]などに存在しており、これらとの記憶の混同ではないかと指摘されている[40]が、当時発売されていたアニメフィルムコミックに該当シーンが収録されていた。
ビデオソフト
以下のほか、ビデオ化もされている。
- 宇宙戦艦ヤマト 劇場版パーフェクトコレクション
- 品番:BELL-315 / 販売元:バンダイメディア事業部 / 1990年02月25日
- 劇場版・テレビスペシャル計5作品をまとめた全8枚組のLDボックス。
- さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
- 品番:BCBA-0251、BCBA-3081(メモリアルBOX)、BDBA-3708(廉価版) / 販売元:バンダイビジュアル / 発売日:1999年8月25日、2007年08月24日(メモリアルBOX)、2009年11月25日(廉価版)
- DVD。音声をステレオとモノラルで切り替えられる。2007年には宇宙戦艦ヤマトシリーズ30周年記念として他の劇場版作品DVDと合わせてBOX化されており、DVDラベルがそれに準じた仕様になっている。また、2009年には廉価版である「EMOTION the Best」が発売された。
- さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち[52][53][54]
- 品番:BCXA-0713 / 販売元:バンダイビジュアル / 発売日:2013年4月24日
- 映像をHDデジタルリマスター化したBD。リマスターに際し、一部の撮影ミス[注 14]がデジタル修正されている。また、静止画特典として本作の絵コンテが全編収められており、その中には上記の長尺版に該当する本編未使用シーンの絵コンテも含まれている。本BDは通常版のほか、劇場5作品のポストカードを付属特典とした限定版が、『宇宙戦艦ヤマト2199』のイベント上映劇場およびヤマトクルー通販にて販売された。
注釈
- ^ 「Arrivederci」はイタリア語で「さようなら(また会いましょう)」の意。
- ^ 後に『宇宙戦艦ヤマト 完結編』でナレーターを担当。
- ^ 劇中のEDクレジットでは司令長官の声が「伊藤雅之」と表記されているが、誤記と思われる。
- ^ 劇中では「小宮和恵」とクレジットされていた。
- ^ 「都市帝国」は音声のステレオ化の際、アレンジ曲である「戦いのテーマ」(型番:M-46)に差し替えられた。
- ^ 映像に合わせて楽曲を制作するフィルムスコアリングとは対照的に、汎用の音楽をあらかじめ収録しておき、場面に合わせて選曲するというもの。テレビアニメではこちらが一般的(背景音楽#劇中の背景音楽も参照)。
- ^ 彬良は当時の父の様子を「『我ながら天才だ』と思ってたんじゃないかな?(笑)」と述べている。
- ^ なお、演奏者の名義は、当時の武蔵野音楽大学で教鞭を取っていたオルガン奏者である「志村拓生」となっている[26]が、足鍵盤パートを弾いた人物なのか、名前だけ貸したのかは不明。
- ^ 音を伸ばす際、ピアノはペダルを踏めば鍵盤から指を離しても大丈夫だが、オルガンにはその機能がないため、音を伸ばす間は鍵盤から指を離せない。そのため、次の鍵盤に瞬時に移動しなくてはいけなくなる。
- ^ ほかにも、パイプオルガンは足でも鍵盤を弾くが、ピアノ専門の晶は「そこは僕には無理」と言うと、父に「そこは音大の先生が手伝ってくれる」と聞かされたため、「それなら最初からやってくれれば……」と思ったそうである。
- ^ 芸大の先生も感激し、「素晴らしい息子さんですね」と褒めたが、彬良は「それなら最初からやってくれー!」と心底思ったと述懐している。
- ^ 他の曲名は挙げていないが、「好敵手」に類するような位置付けの歌は全てがそうであるという。
- ^ 第2話前半パートで英雄の丘のシーン、第3話後半パートで徳川のシーン、第2話後半パートで「女だな、サーベラー」のシーン(ただしミルを監視に就けたことではなく、ズォーダーにデスラーを信用しないように具申したことに対して)が使用されている。
- ^ 序盤でヤマトが地下ドックから海上へ浮上し、離水して浮上する(一瞬だけ船体が落ちて持ち直すように見えるが、演出ではなくセルの撮影順番を間違えたことによる)シーン[55]など。
出典
- ^ 岡田茂『悔いなきわが映画人生 東映と、共に歩んだ50年』財界研究所、2001年、461頁。ISBN 4-87932-016-1。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン全史: 1946-2002』キネマ旬報社、2003年、230-231頁。ISBN 4-87376-595-1。
- ^ ロマンアルバムNo.11 1978, p. 106.
- ^ a b ロマンアルバムNo.11 1978, p. 108.
- ^ 『ロマンアルバムDELUXE11 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』徳間書店(ロマンアルバンデラックスシリーズ)、1978年、p.106
- ^ a b 『ロマンアルバムDELUXE11 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』徳間書店(ロマンアルバムデラックスシリーズ)、1978年、pp.102-103
- ^ 「西崎義展 自らの人生を映画にかける」『キネマ旬報』1978年8月上旬号、pp.61
- ^ 『ロマンアルバムDELUXE11 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』徳間書店(ロマンアルバムデラックスシリーズ)、1978年、p.103
- ^ 舛田利雄著、佐藤利明、高護編『映画監督舛田利雄 アクション映画の巨星 舛田利雄のすべて』ウルトラ・ヴァイヴ、2007年、pp.294-295
- ^ ロマンアルバムNo.11 1978, p. 105.
- ^ 池田憲章編『アニメ大好き! ヤマトからガンダムへ』徳間書店、1982年、pp.110-111
- ^ a b 『ロマンアルバムDELUXE11 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』徳間書店(ロマンアルバムデラックスシリーズ)、1978年、p.104
- ^ a b 池田憲章編『アニメ大好き! ヤマトからガンダムへ』徳間書店、1982年、pp.116-117
- ^ 本作公開以前の1978年6月25日発行の「ヤマトファンクラブ本部」会報第4号にて初報道されている。
- ^ 『動画王』vol.7 キネマ旬報社、1998年、p. 171。
- ^ ロマンアルバムNo.11 1978, p. 74-75.
- ^ ロマンアルバムNo.11 1978, p. 49.
- ^ a b c ロマンアルバムNo.11 1978, p. 101.
- ^ a b c M.TAKEHARA『いま語るべき宇宙戦艦ヤマト ロマン宇宙戦記四十年の軌跡』竹書房、2014年、p.201
- ^ 「YAMATO SOUND ALMANAC 1981-II 宇宙戦艦ヤマトIII BGM集 Part3」(日本コロムビア、2013年9月、COCX-37404)ライナーノーツ「PREFACE 早川 優」より。
- ^ 「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」音響監督・吉田知弘さんインタビュー、柏原満さん制作のオリジナルSEを蘇らせた音の守り人GIGAZINE (OSA)、2018年1月23日、2018年11月11日閲覧。
- ^ 「宇宙戦艦ヤマト2202」吉田知弘音響監督インタビューアキバ総研(カカクコム)2018年1月24日、2018年11月11日閲覧。
- ^ a b 「宇宙戦艦ヤマト2202」作曲家・宮川彬良ロングインタビューアキバ総研(カカクコム)2017年10月9日、2018年11月11日閲覧。
- ^ a b ヤマトらしさとは「もがき」と語る「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」作曲家・宮川彬良さんインタビューGIGAZINE (OSA)、2017年11月03日、2018年11月11日閲覧。
- ^ a b c d e f 『宇宙戦艦ヤマト2199 第四章 銀河辺境の攻防』劇場パンフレット、2013年、p.26。宮川彬良へのインタビュー。
- ^ a b 「YAMATO SOUND ALMANAC 1978-II さらば宇宙戦艦ヤマト 音楽集」(日本コロムビア、2012年9月、COCX-37385)ライナーノーツ「録音データ」より。
- ^ a b c 祝!「宇宙戦艦ヤマト」復活!宮川彬良先生インタビュー!、EJ、2012年4月6日(インターネットアーカイブ2014年4月19日分キャッシュ)
- ^ 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第13話オーディオコメンタリー。BD&DVD第4巻(バンダイビジュアル、2018年、BDOT-0256・BCXA-1207・BCBA-4820)に収録。
- ^ 2012年10月23日、新宿ピカデリーのヤマト2199「ヤマトーク」にて。[信頼性要検証]
- ^ 『ロマンアルバム・デラックス(31) 宇宙戦艦ヤマト2、1980年発行、p. 61
- ^ 『フィギュア王 No.22』ワールドフォトプレス、1999年6月発行、p. 30
- ^ ロマンアルバムNo.11 1978, p. 97.
- ^ 『アニメージュ』1982年10月号、p.138
- ^ a b c 『宇宙戦艦ヤマト大事典』ラポート社、1983年、p.135
- ^ a b 『キネマ旬報ベスト・テン全史1946-1996』キネマ旬報社、1984年初版、1997年4版、p.228
- ^ 川端靖男、黒井和男「1979年度日本映画・外国映画業界総決算」『キネマ旬報』1980年2月下旬号、p.129
- ^ アニメージュ編集部編『劇場アニメ70年史』徳間書店、1989年、p.71
- ^ キネマ旬報社編『映画プロデューサーが面白い』キネマ旬報社、1998年、p.233
- ^ 土屋新太郎『キャラクタービジネス その構造と戦略』キネマ旬報社、1995年、p.87
- ^ a b c d M.TAKEHARA『いま語るべき宇宙戦艦ヤマト ロマン宇宙戦記四十年の軌跡』竹書房、2014年、p.071
- ^ 井上静『宇宙戦艦ヤマトの時代』世論時報社、2012年、pp. 16, 102。ISBN 978-4-915340-81-9。
- ^ 映画業界基礎知識、キネマ旬報映画総合研究所、キネマ旬報社、2017年6月11日閲覧。
- ^ 初号プリント、コトバンク、朝日新聞社(出典:「世界大百科事典 第2版について」、日立ソリューションズ・クリエイト)、2017年6月11日閲覧。
- ^ 「ドキュメント さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」『ロマンアルバムDELUXE11 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』徳間書店(ロマンアルバムデラックスシリーズ)、1978年、p.105-106
- ^ a b 「『ヤマト完結編』ギリギリ3月18日の完成で、19日の全国同時公開に異変!? 北海道・九州など約30館が遅れて上映。」『アニメージュ』1983年5月号、p.169
- ^ 池田憲章編「アニメミニ百科 スターシャの死はどこへ?」『アニメ大好き! ヤマトからガンダムへ』徳間書店、1982年、p.106
- ^ 牧村康正、山田哲久『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』講談社、2015年、p.191
- ^ 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち シナリオ全再録」『ロードショー特別編集 さらば宇宙戦艦ヤマト VOL.2決定版!!』集英社、1978年。
- ^ ひおあきら『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』、メディアファクトリー(MFコミックス)、2009年、pp. 35-36(英雄の丘のシーン)、p. 64(徳川のシーン)、pp. 117-121(土方が艦長になるシーン)、p. 215(「女だな、サーベラー」のシーン)。ISBN 978-4-8401-2950-3。
- ^ 西﨑義展(構成)『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 1』、朝日ソノラマ、1978年、pp. 36-37(英雄の丘のシーン)、pp. 53-54(徳川のシーン)、pp. 108-110(土方が艦長になるシーン)。
- ^ 若桜木虔『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』、集英社文庫、1978年、p. 32(英雄の丘のシーン)、pp. 67-68(徳川のシーン)、p. 117(土方が艦長になるシーン)、p.179(「女だな、サーベラー」のシーン)。
- ^ “劇場版「宇宙戦艦ヤマト」 昭和の5作品がBD化決定 2013年4月より順次発売”. アニメ!アニメ! (イード). (2012年12月25日) 2022年3月22日閲覧。
- ^ “劇場版「宇宙戦艦ヤマト」5作品がHDリマスターでBD化”. AV Watch. (2012年12月25日) 2022年3月22日閲覧。
- ^ “さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち”. V-STORAGE. バンダイナムコアーツ. 2022年3月22日閲覧。
- ^ “小倉信也①初めて「設定」を意識した『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』”. Febri (一迅社). (2022年3月14日) 2022年3月22日閲覧。
- ^ “「宇宙戦艦ヤマト」劇場版2作を4Kリマスターで劇場上映。UHD BD発売”. AV Watch (インプレス). (2023年8月7日) 2023年8月7日閲覧。
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