嵐を呼ぶ男とは? わかりやすく解説

あらしをよぶおとこ〔あらしをよぶをとこ〕【嵐を呼ぶ男】


嵐を呼ぶ男

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/30 07:52 UTC 版)

嵐を呼ぶ男』(あらしをよぶおとこ)は、1957年1966年1983年に公開された日本映画ドラマーの男性と芸能マネージャーの女性の恋および、男性の挫折が描かれる。

特に1957年の石原裕次郎主演版は、石原の代表作に数えられており、石原自身が歌った主題歌62万枚のヒットを記録した。1966年版は渡哲也が、1983年版は近藤真彦が主演した。

1957年版

嵐を呼ぶ男
新横浜ラーメン博物館に内装として掲げられた本作のイメージ
監督 井上梅次
脚本 井上梅次
西島大
原作 井上梅次
製作 児井英生
出演者 北原三枝
石原裕次郎
音楽 大森盛太郎
主題歌 石原裕次郎
嵐を呼ぶ男
撮影 岩佐一泉
編集 鈴木晄
製作会社 日活
配給 日活
公開 1957年12月28日
上映時間 100分
製作国 日本
言語 日本語
配給収入 3億4880万円[1]
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1957年12月28日公開。カラーシネマスコープ(冒頭「日活スコープ」と表示)、100分。

ストーリー(1957年版)

東京・銀座。ナイトクラブの専属ジャズバンド「福島慎介とシックスジョーカーズ」が人気を博していた。ある夜、音楽大学の学生・国分英次がクラブを訪ね、バンドのマネージャーで慎介の妹・福島美弥子に、ドラマーとして自身の兄・国分正一を売り込むが、バンドにはすでに人気ドラマーのチャーリー・桜田が在籍していた。ある夜、チャーリーが急に無断で仕事を休んだため、美弥子は正一を呼ぶために英次に連絡を取る。正一は喧嘩騒ぎを起こして留置場に入っていた。美弥子が身元引受人になり、ステージに出して評判を得る。実はチャーリーは酔客相手の演奏に嫌気が差し、商売敵の芸能プロモーター・持永の事務所の引き抜きに応じていた。

チャーリーがバンドを脱退したため、美弥子は正一をバンドに正式加入させ、練習のため自宅に住まわせる。音楽評論家の左京徹は正一に「美弥子との仲を取り持ってくれるなら正一を宣伝する」と持ちかけ、正一は応じる。左京は約束通りテレビで正一を持ち上げ、正一とチャーリーのドラムス対決公演を提案する。しかし公演の前日、チャーリーを勝たせたい持永が子分を放って正一に喧嘩を吹っかけたことで、正一は左手を負傷してしまう。

公演では、チャーリーの演奏が優位であったが、正一は右手だけでドラムスを叩きながら歌い、観客の喝采を浴びる。歌うジャズドラマーとして売れっ子になった正一は、やがて美弥子と結ばれる。英次もクラシックとジャズを融合した現代音楽の作曲家・指揮者として芽が出始め、ラジオ中継による初リサイタルが決まる。

正一と美弥子が関係を持ったことを知った左京は怒り、正一に美弥子の元を去って持永の事務所に移籍するよう迫ると同時に、英次のデビューへの妨害工作をも示唆する。正一は止むなく美弥子に別れを告げ、母・貞代の住むアパートに立ち寄る。正一の素行に愛想を尽かし、また音楽を認めない貞代は、英次がアパートの大家の娘・島みどりと婚約したことを告げ、「お前はみんなの幸せを壊すことしかできない」と詰って正一を追い返す。行き場を失った正一は、持永の愛人であるダンサーのメリー・丘の元に身を寄せる。ふたたび持永の怒りを買った正一は、子分たちに右手をつぶされ、ドラマーとして完全に再起不能となる。そこには持永と結託した左京の姿もあった。やがて正一は入院先の病院から行方をくらます。

英次のオーケストラのリサイタルの日、正一は行きつけのバーでラジオから流れる英次の曲を聞いていた。美弥子は正一には歌手としての再起の可能性があると信じ、貞代もまた弟を救うために自らの才能を犠牲にした正一の本心を思い知る。二人は正一を探し当て、母子はようやく和解するのだった。

キャスト(1957年版)

  • 種田(持永の手下):冬木京三
  • 有馬時子(慎介の婚約者):天路圭子
  • 健(持永の手下):高品格
  • 島善三(アパートの大家、みどりの父):山田禅二
  • マネージャー滝:三島謙
  • バーテン矢野:山田周平
  • 持永の手下:峰三平
  • 留置場の警官:紀原耕(のちの紀原土耕)
  • 持永の手下:八代康二
  • 吉田:柳瀬志郎
  • 持永の手下:光沢でんすけ(のちの光でんすけ)、榎木兵衛
  • 凡太郎:小柴隆(のちの小柴尋詩)
  • 深江章喜
  • 留置場のオカマ:高野誠二郎
  • 持永の手下:近江大介
  • ボーイ:阪井一郎(のちの阪井幸一朗)
  • バーテン:寺尾克彦
  • 長谷:二階堂郁夫
  • 留置場の男:柴田新(のちの柴田新三)
  • フロアマネージャー:東郷秀美
  • 木村:林茂朗
  • 通訳:川村昌之
  • 留置場で正一を起こす男:衣笠一夫(のちの衣笠真寿雄)
  • ホステス:竹内洋子
  • 銀座の花売り娘:清水マリ子(のちの清水まゆみ
  • 福島邸の使用人:早川十志子(のちの早川由記)、三沢孝子
  • 原:荒木良平
  • ハロルド・スナイダー(文化財団の代表):ジョージ・A・ファーネス
  • ハムザ・ムルリン
  • アナウンサー:阿井喬子NTV

スタッフ(1957年版)

  • 監督:井上梅次
  • 製作:児井英生
  • 原作:井上梅次(『小説サロン』所載)
  • 脚本:井上梅次、西島大
  • 撮影:岩佐一泉
  • 照明:藤林甲
  • 録音:福島信雅
  • 美術:中村公彦
  • 音楽:大森盛太郎
  • 編集:鈴木晄
  • 助監督:前田満州夫
  • 現像:東洋現像所
  • 製作主任:森山幸晴
  • 振付:結城敬二
  • ショウ構成:和田肇
  • 主題歌:石原裕次郎「嵐を呼ぶ男

製作(1957年版)

  • 北原三枝演じるヒロインのモデルは、当時女性マネージャーの嚆矢として注目を集めていた渡辺美佐である。
  • 「歌手」役の平尾昌章(平尾昌晃)は冒頭でロカビリーを歌っている。
  • 石原のドラムス演奏シーンにおける演奏音の「アテレコ」は白木秀雄が行っている。映画のラストを飾るオーケストラの演奏シーンには白木自身が登場する。
    • 主題歌シングル盤の伴奏も白木らにより編成された「白木秀雄とオールスターズ」の演奏である[3]
  • 主題歌の途中に出てくる台詞が、劇中のものとレコード版では若干の違いがある。
    • 劇中では「この野郎、かかって来い! 最初はジャブだ、左アッパーだ、右フックだ! ちきしょうやりやがったな、倍にして返すぜ! チンだ、ボディだ、ボディだ、チンだ! えーい面倒だ、これでノックアウトだ!あれあれ、のびちゃった!」。
    • レコード版では「この野郎、かかって来い! 最初はジャブだ、ほら右パンチ、おっと左アッパー、ちきしょうやりやがったな、倍にして返すぜ! フックだ、ボディだ、ボディだ、チンだ! えーい面倒だ、これでノックアウトだ!」。

評価(1957年版)

  • 観客動員数は約594万人。

その他(1957年版)

  • 2004年テレビ朝日で放送されたドラマ『』において、本作のドラム合戦がセリフやBGMも同じに再現されている。国分を演じる石原裕次郎役を徳重聡が、チャーリーを演じる笈田敏夫役を中山秀征が演じた。

外部リンク(1957年版)

1966年版

嵐を呼ぶ男
監督 舛田利雄
脚本 池上金男
原作 井上梅次
出演者 渡哲也
芦川いづみ
音楽 伊部晴美
主題歌 渡哲也
「嵐を呼ぶ男」
撮影 萩原憲治
編集 井上親彌
製作会社 日活
配給 日活
公開 1966年12月10日
上映時間 95分
製作国 日本
言語 日本語
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渡哲也主演による石原版のリメイク。1966年12月10日公開。カラー、シネマスコープ、95分。

設定が若干変更されており、主人公の弟の職業が音楽家ではなくレーサーになっている。また、石原版では死去した設定の正一・英次兄弟の父親(演:宇野重吉)が登場し、ラストシーンは正一と父親がテレビで英次が出場しているカーレースを一緒に観戦するものとなっている(英次のゴール前に正一は優勝を確信し、美弥と立ち去る)。ドラム合戦のシーンでは、ライバルの策略にはまり手を怪我するのは石原版と同様であるが、その怪我が原因でスティックの片方を床に落としてしまい、ドラムが叩けなくなったために歌い出す、という描写になっている。

また歌の途中の台詞も、「そら! そら! そら! お前は俺の弟よ、俺の心はお前の心だ! そーら、ドラムが俺を呼んでるぜ! それ! 恋だ! 喧嘩だ! お祭りだ! よーし俺に任せろ、それっ、シンバルだ!」というものに変更されている。

キャスト(1966年版)

  • 鉄:榎木兵衛
  • スナックのマスター:緑川宏
  • 社員:島村謙二(島村謙次)
  • 留置場の警官:久遠利三
  • 二階堂郁夫
  • 留置場の男:水木京二(水木京二)
  • 柴田新三
  • レース仲間:亀山靖博
  • 桜田の舎弟:高橋明
  • 村上和也
  • 桜田の舎弟:中平哲仟
  • フランク長谷:本目雅昭
  • 池袋メトロの客:立川博
  • 織田俊彦
  • レース仲間:浜口竜哉
  • 瀬山孝司
  • ストリッパー:森みどり
  • 渡辺節子
  • ヌードスタジオの女:大谷木洋子、西原泰江、椿麻里
  • 高緒弘志
  • レース仲間:根本義幸
  • 田中滋
  • 赤司健介
  • 前田武彦
  • 司会者:広瀬優
  • 石川恵一
  • ダンスチーム:レ・バビヨン

スタッフ(1966年版)

外部リンク(1966年版)

1983年版

嵐を呼ぶ男
監督 井上梅次
脚本 井上梅次
播磨幸児
原作 井上梅次
製作 小倉斉
ジャニー喜多川
出演者 近藤真彦
野村義男
田原俊彦
坂口良子
音楽 大谷和夫
主題歌 近藤真彦
ためいきロ・カ・ビ・リー
撮影 姫田真佐久
編集 黒岩義民
製作会社 東宝映画
ジャニーズ事務所
配給 東宝
公開 1983年8月4日
上映時間 132分
製作国 日本
言語 日本語
配給収入 8.5億円[4]
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1983年8月4日公開。カラー、アメリカンビスタ、132分。近藤真彦主演映画としては第4作目で、「たのきんスーパーヒットシリーズ」第6弾。たのきんトリオシリーズの実質的な最終作となった。石原裕次郎版の監督である井上梅次がふたたびメガホンをとった。設定はジャズバンドからロックバンドに変更されている。

封切り時の同時上映作品は『Love Forever』(主演:田原俊彦)。

製作(1983年版)

近藤に合わせるため、「嵐を呼ぶ男」のサビに新たな歌詞が追加されている[要出典]

評価(1983年版)

裏に角川映画の「探偵物語」と「時をかける少女」が投入されたため興行的に惨敗し[要出典]、ヒットしなかった[5]

このため田原俊彦主演の1984年の正月映画として、井上梅次監督自身による1957年の映画『鷲と鷹』のリメイクが構想されていたが、実現に至らなかった[5]。「裕次郎にこだわるのはもう得策ではないのではないか」という意見が出て[5]、企画は舛田利雄監督の『エル・オー・ヴィ・愛・N・G』になった(はじめ舛田は『太陽と狩人(たいようとハンター)』というオリジナル作品を構想していた)[5]

キャスト(1983年版)

スタッフ(1983年版)

サウンドトラック(1983年版)

外部リンク(1983年版)

脚注

  1. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)138頁
  2. ^ 嵐を呼ぶ男 - 日活
  3. ^ 石原裕次郎 - 嵐を呼ぶ男 画像”. Discogs. 2019年5月31日閲覧。
  4. ^ 「1983年邦画4社<封切配収ベスト作品>」『キネマ旬報1984年昭和59年)2月下旬号、キネマ旬報社、1984年、116頁。 
  5. ^ a b c d 「雑談えいが情報 『鍵』はどうした? あの『スパルタの海』もとうとうオクラ!?」『映画情報』、国際情報社、1983年11月号、61頁。 



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