たん‐じゅう〔‐ジフ〕【胆汁】
胆汁
胆汁【たんじゅう】
胆汁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/09 07:05 UTC 版)
胆汁(たんじゅう)は、肝臓で生成される黄褐色でアルカリ性の液体である。肝細胞で絶えず生成され、総肝管を通って胆のうに一時貯蔵・濃縮される。食事時に胆のうが収縮され、総胆管の十二指腸開口部であるオッディ括約筋が弛緩し十二指腸に排出されて働く。
胆汁は3つに分類される[1]:
- A胆汁(胆管胆汁)
- ファーター乳頭から分泌される。
- B胆汁(胆嚢胆汁)
- 胆嚢で濃縮される。
- C胆汁(肝胆汁)
- 肝細胞で産生される。
胆汁の働き
胆汁は1日に約600ml分泌される。胆汁酸と胆汁色素を含み、前者は界面活性剤として食物中の脂肪を乳化して細かい粒とし、リパーゼと反応しやすくすることで脂肪の消化吸収に重要な役割を果たすが、消化酵素は含まれない。
- 胆汁酸
- 脂肪を乳化して消化酵素の働きを助ける。更に脂肪の分解産物に作用して小腸から吸収されやすく変化させる。また腸内に分泌された胆汁酸の殆どは小腸で再吸収され、肝臓に戻される(腸肝循環)。
- 胆汁色素
- 破壊された赤血球から遊離したヘモグロビンのタンパク質部分から切り離されたヘムが、肝臓の細胞で代謝され黄色のビリルビンに変化する。ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合を受けて水溶性が高められて胆汁色素として胆汁とともに分泌される。ビリルビンの大半は腸内で腸内細菌によりウロビリノーゲンに還元され、その一部が体内に再度吸収される。ウロビリノーゲンは抗酸化作用を有し[2][3]、これが体内で酸化を受けると黄色のウロビリンに変化する。通常の尿の黄色はウロビリンによるものである。これらの循環は腸肝ウロビリノーゲンサイクルと呼ばれている。一方、腸内に残ったウロビリノーゲンは腸内細菌によりステルコビリノーゲンに還元される。ステルコビリノーゲンが酸化を受けると茶色のステルコビリンに変化する。ステルコビリンは大便とともに排泄され、大便が茶色になる要因となる。
胆石
ヒトにおけるコレステロールの排泄は肝臓から胆汁として分泌されるが、その際にコレステロールの一部から肝臓で生合成される胆汁酸と複合体を形成して排泄される。
胆汁の中のコレステロールは胆汁酸により分散安定化されているが、胆のうで胆汁が濃縮される際に何らかの原因で遊離しコレステロールの結晶が成長すると、胆のうあるいは胆管においてコレステロール胆石症の原因となる場合もある。胆石の他の原因であるレシチンやビリルビンによる結石は稀である。
脚注
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “胆汁” (日本語). コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2022年11月9日閲覧。
- ^ 中村宜司、佐藤克行、秋葉光雄「胆汁色素代謝物ウロビリノーゲンの抗酸化作用」中村宜司 『日本農芸化学会誌』2001年3月5日、75巻、144ページ。胆汁 - J-GLOBAL
- ^ NAKAMURATakashi; SATOKatsuyuki; AKIBAMitsuo; OHNISHIMasao (2006). “Urobilinogen, as a Bile Pigment Metabolite, Has an Antioxidant Function”. Journal of Oleo Science (日本油化学会) 55 (4): 191-197. doi:10.5650/jos.55.191. NAID 130000055572.
関連項目
胆汁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 23:14 UTC 版)
肝臓では常に胆汁が生成されていて、ここに水溶性の高くない排出物質が含まれている。一旦胆嚢で貯蔵・濃縮され、食事の際に十二指腸へと放出される。ただし、胆汁には胆汁酸による脂肪分の乳化という作用もあり、老廃物の排出のみがその機能ではない。胆汁酸を構成するコレステロールなどは再び腸管から吸収されてリサイクルされる(腸肝循環)。再吸収されなかった残りが最終的に糞便として体外へ排除されることになる。 糞便は胆汁や大腸で排出される重金属など生体からの老廃物も含んでいるが、大部分は消化吸収されなかった食物である。したがって糞便を排泄物と呼ぶのは適切ではない。また糞便の約1/3は細菌であり、ほとんどは無害なものであるか、腸にとって役に立っている。その他にも有害なものや、病原性や場合によっては致死性を持つウイルス、細菌、アメーバや寄生虫なども含まれている。
※この「胆汁」の解説は、「排泄」の解説の一部です。
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「胆汁」の例文・使い方・用例・文例
- 肝臓は胆汁を生成している
- 彼は急性の胆汁性発作を起こした。
- 胆汁症の患者を治療する
- 胆汁[憂うつ, 粘液, 多血]質.
- 胆汁管
- 胆汁病
- 胆汁質
- 胆汁に関する、または、胆汁を含む
- 消化で必要になるまで(肝臓で分泌される)胆汁を貯蔵する、肝臓につながった筋肉の嚢
- 肝から胆汁を流す管
- 体液には血液、タンと黄と黒の胆汁がある
- 胆汁の分泌が少ないかあるいは全くない状態、あるいは消化器への胆汁の流入が遮断されていること
- 血液中の異常に高い量の胆汁顔料(ビリルビン)
- 胆汁色素(ビリルビン)が血液中に蓄積することにより、皮膚と白目が黄変すること
- 脳と他の神経細胞における胆汁色素の異常な蓄積
- 哺乳動物の胆汁から得られた無色の結晶質
- ヘモグロビンの生成物として形成される胆汁の中のオレンジ―黄色の色素
- ウロビリノーゲンから形成され、糞便、また尿で少量で見つかる茶色の胆汁色素
- 胆汁酸と塩基から成る塩
- 肝臓で生成されるステロイド酸で、胆汁とともに蓄えられる
胆汁と同じ種類の言葉
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