論文取り下げ
別名:論文の取り下げ、論文撤回、論文の撤回、リトラクト、リトラクション
英語:retract、retraction、retraction in science
学術雑誌に一旦発表された論文を、後から無効とすること。論文に重大な誤りが発覚した場合、あるいは剽窃、捏造などの不正行為が発覚したり、疑われたりした場合に行われることがある。
論文取り下げは、論文の著者自らによって申請されることもあれば、学術雑誌の編集者の判断で取り下げが行われることもある。雑誌の規定により、取り下げの方法は異なっている場合があり、複数著者による論文の場合、取り下げには全員の同意が必要とされる場合もある。
科学誌「Nature」は、2011年に「Science publishing: The trouble with retractions」と題する記事の中で、掲載後に取り下げられる論文の数は増加しつつあると述べている。同記事によれば、2000年代初頭頃の論文取り下げの事例は年間30本程度であったが、2011年には400本以上の論文取り下げがあったという。しかも、これはあくまで問題が明るみに出た事例であって、世界中で実際に行われていると推測される捏造、改竄の実態の中では氷山の一角に過ぎないとも指摘されている。
論文の内容に誤りが見つかっても、それが論文取り下げには至らない程度の軽度の誤りだった場合、後の号でエラッタ(erratum)として訂正情報が掲載されることがある。また、いちど取り下げられた論文が、内容の再検討を経て再投稿、再掲載という形で発表され直す場合もある。
サイエンスライターのイヴァン・オランスキーとアダム・マーカスは、論文取り下げの過程を透明化する目的で、2010年から「Retraction Watch」というブログを運営し、論文取り下げの事例を調査・記録している。
2014年1月、「STAP細胞」に関する論文がNatureに掲載され、後にそのデータや写真の一部に誤りあるいは盗用の疑いがあるとの指摘があり、世間で大きく取り沙汰された。しばらく後、筆頭著者・小保方晴子を含む複数の著者が、論文取り下げの意向を示した。2014年3月14日の記者会見で、筆頭著者が所属する理化学研究所の野依良治理事長は、論文取り下げを視野に入れて調査を継続する方針を明らかにした。6月4日に理化学研究所は筆頭著者が主論文の取り下げに同意したと公表した。
関連サイト:
Retraction Watch
Science publishing: The trouble with retractions - Nature
retract
「retract」とは、「撤回する」「取り消す」「引っ込める」といった一度行った行為を否定したり元の状態に戻したりすることを意味する英語表現である。
「retract」とは「retract」の意味
「retract」は「~を引っ込める」「~を格納する」という意味の英語単語である。「取り消す」「撤回する」という意味も持っている。品詞は動詞で、他動詞・自動詞の両方で使用することができる。活用は一般的な動詞の活用に倣い、「(基本形)retract」「(過去形) retracted」「(過去分詞形) retracted」「(現在分詞形) retracting」となる。名詞形は「retraction」で、「引き戻すこと」「格納すること」「取り消し」「撤回」などの意味を持つ。形容詞形は「retractable」で、「引っ込められる」「格納できる」「取り消しができる」「撤回できる」ということを示す表現である。「retract」の発音・読み方
「retract」は「ritrǽkt(リトゥラクト)」と発音する。最初の音は「r」で、「有声舌根摩擦音」になる。舌根を喉に接触させ、息を吐き出すことによって発音するのがコツである。「e」は「i」の発音となる。「非円唇短母音」と言われるもので、口をやや開けて舌の位置を高く保ち、声帯を振動させることで発音する。次に有声歯茎摩擦音「t」と有声舌根摩擦音の「r」が来るが、ここは「tr」と続けて発音することが大切である。母音の「a」は「æ」の音になる。「前不圏唇短母音」という音で、日本語の「ア」とはかなり違う音なので注意が必要である。「ア」と「エ」が混じったようなイメージの音になる。口を広く開け、舌の位置を前方に移動させ、唇を広げることで発音するのがポイントである。最後の「k」は「無声口蓋破裂音」となる。口蓋垂を口腔に接触させて、息を一時的に閉じた後に強く吹き出すイメージで発音する。
「retract」の語源・由来
「retract」の語源は、中世のラテン語の動詞「retrahere」に遡る。接頭辞「re-」は「戻る」「逆」「反対」などの意味を持つ。「trahere」は「引く」「引っ張る」という意味である。つまり、「retrahere」は「引っ込める」という意味を持っていた。その後、古フランス語の動詞「retraitier」に変化していった。この単語は中世英語に取り入れられ、「retreten」という形になる。やがて現代英語の「retract」に変わっていき、「引っ込める」の他にも、「撤回する」「取り消す」といった意味で広く使われるようになった。「retract」の反対語
「retract」の反対語には以下のようなものがある。「assert」は、「主張する」「断言する」という意味を持つ単語であり、「retract」の反対語として非常によく使用される。「sffirm」は、「確認する」「断言する」「肯定する」という意味を持つ。ある人が過去の発言を撤回することなく、その発言の正当性を強調する場合などに使われる表現である。「declare」は、「宣言する」「表明する」という意味である。自分の立場を明確にするために使われることが多い。「maintain」は「維持する」「主張する」という意味を持つ単語である。自分の考えや立場を保つことを意図する場合などに用いられる。「pledge」は「誓う」「保証する」ということを表す。約束を守ることを強調するためなどに使用される表現である。「propose」は「提案する」「提出する」という意味である。「claim」は「主張する」「要求する」ことを意味する。自分の考えを相手に明確に伝えるために使用される。「assertive」は「自信を持った」「断言的な」という意味を持つ形容詞である。「retract」の反対の態度を示す表現である。「insist」は、「主張する」「強く言い張る」という意味を持つ単語である。
「retract」の使い方・例文
「retract」は以下の例文のように使用することができる。After realizing his mistake, he quickly drafted a letter to retract his earlier statement. (前の発言を撤回するために、彼はすぐに手紙を書いた。)
The news outlet was forced to retract the story due to inaccuracies in their reporting. (報道機関は、報道内容に不正確な点があったため、記事を撤回せざるを得なかった。)
The company had to retract its product due to safety concerns. (安全上の懸念があったため、その商品を引き上げる必要があった。)
The politician refused to retract his controversial statement, causing widespread outrage. (その政治家は物議を醸す発言を撤回することを拒否し、広範な怒りを引き起こした。)
The author decided to retract the book from publication after realizing it contained numerous factual errors. (多数の事実誤認があることに気付いたため、その著者は出版の取りやめを決めた。)
The company issued a statement retracting their earlier statement and apologizing for any confusion caused. (同社は、以前の発言を撤回し、混乱を招いたことに対して謝罪する声明を出した。)
The scientist retracted his previous hypothesis after new evidence came to light. (新しい証拠が明らかになった後、その科学者は以前の仮説を撤回した。)
The journalist was forced to retract his article after it was revealed that his sources were unreliable. (そのジャーナリストは、情報源が信頼できないことが明らかになったため、記事を撤回することを余儀なくされた。)
The artist decided to retract his controversial artwork from an upcoming exhibit due to concerns over its appropriateness. (適切でないとの懸念があったため、その芸術家は物議を醸す作品を展覧会から撤回することに決めた。)
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