FD シリーズ
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「ボクスホール・ヴィクター」の記事における「FD シリーズ」の解説
1967年から1972年までのFDが発売されたのは、英国が通貨危機と先鋭的な労働争議の増加の只中にある時であり、これにより価格は上昇し品質は下降した。数値の上ではこの1,599 cc と1,975 cc のOHCエンジンの設計(スラントフォー:Slant Four)は先進的なものであったが、偶力バランスが崩れているという悪癖から米国の符牒で言う「ヘイ・ベーラー」(Hay Baler:乾草圧縮梱包機)という綽名を賜った。この車のサスペンション設計は、以前の英国の量産車がお茶を濁していたような部分は遥かに少なく、後輪は伝統的な板バネに代わりコイルスプリングを使用したトレーリングアームとパナールロッドで位置決めされた固定車軸、前輪はダブルウィッシュボーン形式であった。しかしながらFDの路上での性能と耐久性は、標準の状態ではカタログが謳う程のものではなかった。独立チューナーのブライデンスタイン(Blydenstein)は、オーバーヘッド・カムシャフトに効果的に改造を施し、ヴィクターの能力を最大限に発揮させた。 しかしFDは前席ベンチシートという伝統的なファミリーカーとしてのヴィクターからは距離を置き(とはいえベンチシート付のモデルもまだあったが)、快適で格好の良いバケットシートを前後席に注文することができた。これはヴィクター 2000(後に1970年のフェイスリフトで2000 SL)に標準で、ヴィクター 1600(1970年のフェイスリフトでスーパ-と改名)にはオプションであった。よりスポーティ仕様のVX4/90と6気筒エンジンのヴェントゥーラにはバケットシートが標準で、後者には1969年から可倒式バックレストが標準とされた。全てのバケットシート装着車はコラムシフトが標準であり、VX4/90とヴェントゥーラにはオプションでオーバードライブを装着することのできるフロアシフトにすることもできた。 1968年2月にボクスホールは、ヴィクター FDのボディーとこれまで大型のクレスタとヴァイカウントにのみ搭載していた3.3 Lの6気筒エンジンを組み合わせたボクスホール・ヴェントゥーラを発売した。88 bhp (66 kW; 89 PS)の2 Lの4気筒エンジンを搭載したヴィクターに比べ123 bhp (92 kW; 125 PS)のヴェントゥーラは、増大した出力に応じてより大きな前輪ブレーキ・キャリパーを備えていた。ヴェントゥーラは、その造作なく発揮する高性能のため兄弟モデルとはほぼ別の車であり、そういった意味で英国市場では同価格帯(1968年2月の税込価格£1,102)にこの車の明確な競合車は存在しなかった。内装には回転計を含む計器類が追加され、外観では太いタイヤ、ヴィクターの間隔の詰まった横棒仕立てのグリルがハーモニカ状となり屋根は黒のビニールレザーで覆われていた。 1968年5月にボクスホールの扱い車種にヴィクター FDを基にしたヴィクター エステートが復活した。サルーンと同様にエステートには1,599 cc か 1,975 ccの4気筒エンジンが選択可能で、通常はクレスタに搭載されている3,294 ccの6気筒エンジンも提供されていた。(3294 ccエンジンのヴィクター エステートは国内市場では唯一の6気筒エンジンを搭載したヴィクターであったが、6気筒エンジン搭載のサルーンは別名のヴェントゥーラが補完していた)エステート版では後輪サスペンションが強化され、ベースの1,599 ccモデル以外は全モデルが前輪ディスクブレーキ付であった。FDサルーンの標準トランスミッションはコラムシフトの3速MTであったが、4気筒モデルにも追い金を払えばフロアシフトの4速MTを注文することが可能であり、3,294 ccのヴィクター エステートにはフロアシフトの4速MTは全体パッケージ内に含まれていた。1,599 ccモデルに標準の前席ベンチシートの足元空間を確保するためにフロアシフトの変速レバーは十分前方の床から生えていた。 FDの販売はFCよりも少なく、1971年12月までの多少長い製造期間中に19万8,000台が生産された。1972年3月にヴィクター FEが発売された後もFDの新車が販売されていた。少ない生産台数は、1970年のボクスホール社の長期ストライキの影響と海外市場の幾つかで販売を止めたためであった。FDはカナダでボクスホール・ブランドやエンヴォイの名称を冠して販売された最後のヴィクターであり、ニュージーランドに公式に輸入(と組み立て)が行われた最後のヴィクターでもあった。 1.6 と 2.0 Lの直列4気筒エンジンを搭載したヴィクターは、ヴィクター 3300(後に3300SL)と命名された大型の3,294 ccのクレスタ PCと共に販売された。(サルーンのみ、エステートは僅かが輸入)これらの車は4速MTかGM製2速パワーグライドATを搭載して製造され、ごく初期を除いてほとんど車がヴェントゥーラのグリルを装着していた。ホールデン・トライマチック(Holden Trimatic)変速機が最終モデルに搭載され、ベンチシート(ごく初期のモデルのみ)かバケットシートが据え付けられていた。
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