2010年代後半 微細化の停滞
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「CPU年表」の記事における「2010年代後半 微細化の停滞」の解説
2010年代後半になると、半導体の集積ペースの鈍化が顕著となり、「ムーアの法則の終わり」が語られだした。最先端の半導体プロセスのコストは微細化のたびに高騰を続け、東芝、ルネサス、GlobalFoundriesなど名だたる半導体メーカーは開発競争から次々と脱落。IBMは半導体製造部門を譲渡し撤退した。インテル、UMCも先端プロセスの立ち上げでもたつき、最先端ロジックの開発競争では世界最大手の半導体製造ファウンドリとしてトップを走るTSMCにサムスン電子が食いつく状態となっている。 微細化の停滞で汎用プロセッサコアの性能向上ペースが緩やかになったため、機械学習に特化したTPUなどのコアを組み合わせるハードウェアアクセラレーションの多用がトレンドとなる。またArmのbig.LITTLEやインテルのLakefieldのように大規模で高性能なコアと小さくて省電力なコアを組み合わせることで性能と平均消費電力削減の両立を狙うアプローチも現れた(ヘテロジニアスマルチコア)。半導体分野の技術革新はモバイルと高密度サーバが主導するようになり、ハイエンドコンピューティングの分野にもArmアーキテクチャが進出した。日々生成されるビッグデータを活用して有用な知見を得るため「データセントリック・コンピューティング」が叫ばれ、サーバ各メーカーはArmやRISC-Vコアと独自開発の専用回路を組み合わせたカスタムチップの開発を競うようになった。ただし、このようなASICは汎用CPUではないためこの項目では詳述しない。 2015年8月 インテル、Skylakeマイクロアーキテクチャを採用した第6世代Coreシリーズを発表。64ビットマルチコアCPU。DDR4及びDDR3Lに対応のメモリコントローラを内蔵。Intel Speed Shift Technologyを搭載した。 新ブランドとして「Intel Core m3」・「Intel Core m5」・「Intel Core m7」 プロセスルールは14nmから変更はない。 2016年8月30日 インテル、Kaby Lakeマイクロアーキテクチャを採用した第7世代Coreシリーズを発表。64ビットマルチコアCPU。全モデル動作周波数の増加(最大で300MHz)。CPUに接続された最大16のPCI Express 3.0レーン。PCHに接続された最大24のPCI Express 3.0レーンに対応。Intel Optane テクノロジーのサポート 今まであった「Core m5」・「Core m7」はブランドから排除された。プロセスルールは14nmから変更はない。 2017年4月4日 富士通、SPARC64 XIIを発表64ビットマルチコアCPU。富士通のUNIXサーバ「SPARC M12」に搭載される。 2017年5月29日 アーム、Cortex-A75/A55を発表。ARMv8.2-Aアーキテクチャに準拠し、仮想化やセキュリティ機能の強化など、サーバ分野を意識した機能を多く盛り込んだ。 2017年6月 オラクル、SPARC S7/M7を発表データベース処理の高速化に特化したSoftware in Silicon機能を搭載。 2017年9月 IBM、POWER9を発表。64ビットマルチコアCPU。NVIDIAのインターコネクト規格「NVLink」に対応し、GPUを多用するワークロードでの性能を高めた。2019年時点で世界最速のSummitなどに採用された。 2017年10月5日 インテル、Coffee Lakeマイクロアーキテクチャを採用した第8世代Coreシリーズを発表。64ビットマルチコアCPU。DDR4対応のメモリコントローラを内蔵。第6世代と第7世代と同じLGA1151ソケットを採用しているが、第8世代は100番台・200番台チップセットとの互換性はない。300番台チップセットを採用した。Intel創業40周年記念として「Core i7 8086K」が販売された。 ブランド名が変更され「Pentium」→「Pentium G」 「Xeon」→「Xeon E」となり、「Core m3」はブランドから排除された。 プロセスルールは14nmから変更はない。 2018年1月3日 多くの高性能CPUにSpectreとMeltdown脆弱性の存在が発覚する。投機的実行やアウトオブオーダ実行のプロセスを悪用するもので、x86、Arm、POWERなど多くの高性能プロセッサに脆弱性が見つかった。OSやアプリケーション側で回避策が取られたが、特に第5世代以前のIntel Coreプロセッサでは大きな性能低下が発生した。 2018年10月8日 インテル、Coffee Lake Refreshマイクロアーキテクチャを採用した第9世代Coreシリーズを発表。64ビットマルチコアCPU。 プロセスルールは14nmから変更はない。 2018年8月 インテル、Cannon Lakeマイクロアーキテクチャを採用した第10世代Corei3を発表。64ビットマルチコアCPU。300番台チップセットを採用。LGAではなくBGAパッケージのみ。 プロセスルールはCoffee Lakeマイクロアーキテクチャの14nmから10nmへ変更された。インテルのインテル チック・タックでは最も小さいプロセスルールである。 2019年2月20日 アーム、サーバ専用プロセッサNeoverse N1/E1を発表。2017年に発表したサーバ専用プロセッサブランドNeoverseの初の製品。設計はモバイル向けプロセッサコアCortex-A76/65AEと大きな違いはない。 Amazon Web ServicesのGraviton 2など多くの企業に採用された。この頃からArmアーキテクチャのサーバ分野への進出が本格的に進み、サーバ市場でのx86の圧倒的優位は揺らいでいく。 2019年6月 富士通、A64FXを発表。Arm v8.2準拠のメニーコアプロセッサ。「京」の後継機「富岳」に搭載されるほか、クレイも自社ハードウェアに採用の意向を示している。 2019年7月 AMD、ZEN 2アーキテクチャを採用した第3世代Ryzenシリーズを発表。前世代のZENの改良版である。対応チップセットはX570、X470.B450、X370.B350など。 Ryzen9、3950Xでの最大ブーストクロックは4.7GHz。インテルが7nmプロセスの立ち上げにつまづいたことにより、TSMCのプロセスを使うAMDの存在感が高まった。 2019年11月 マイクロソフト、Microsoft SQ1を搭載したSurface Pro Xを発売。64ビットマルチコアプロセッサ。マイクロソフトとしては初の自社プランドSoCだが、クアルコムとの共同開発で、Snapdragonの性能強化版である。
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