飛翔行動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:53 UTC 版)
夜間は活発に飛び回り、水系間を移動したり(正の走光性により)水銀灯などの灯火などにも飛来したりするが、いったん上陸してからでないと飛翔できない。内山 (2013) は「初めて野生の本種を観察した生息池では水温が上昇する5月初旬にゲンゴロウをはじめとした水生昆虫が忽然と姿を消し、9月初旬ごろから再び姿が見られるようになった。『夏季は水温が低い深い場所に移動しているのではないか?』と考えて池の深い場所を探してみてもゲンゴロウたちはいなかったが、周辺ではゲンゴロウなどが街頭に飛来したり幼虫類が水田で確認できたりしたことから『ゲンゴロウは季節に応じて生活場所を移動し“越冬に適した深い池”と“繁殖・摂餌などに適した水田など浅い水域”を使い分けている』と推測した」と述べている。 多くの水生昆虫は飛翔行動前に体を乾かして体温を上昇させるために上陸して甲羅干しを行う習性があるが、タガメ以外の水生カメムシ類(水生半翅目)の多くが日常的な甲羅干しを必要としないのに対しゲンゴロウ類など水生甲虫類の場合はミズカビ発生を防ぐなど飛翔目的以外のため日常的に甲羅干しをよく行い、長い時では約2時間ほどにおよぶ。甲羅干しは日光浴・体温調節・殺菌のためと考えられており、飼育下でこの行動を阻害すると体表・後脚付け根部分にミズカビが発生したり、水生菌による感染症を起こしやすくなる。そのため、飼育時には甲羅干しができるよう流木・ヘゴの支柱などで足場を作ることが望ましい。
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飛翔行動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 19:58 UTC 版)
タガメは6月中旬以降から飛翔するようになり、特に繁殖期には雌雄とも夜間に頻繁に飛行・移動するが、日中に飛翔した記録がないため「おそらく夜間にしか飛ばない」と考察されているほか、都築 (2003) は「タガメの飛翔行動は日没後から数時間の間に集中しているようで、22時以降に街灯に飛来した個体は見たことがない」と述べている。タガメは以下のような理由で飛翔し、一夜で3キロメートル (km) ほど移動するほか、前年夏に背番号を着けたタガメが翌年の夏に7 km先の小さな山を越えた隣町で捕獲された記録もある。 冬眠前後に陸地と水辺を往来する際 餌・繁殖相手を求め別の池・水田へ移動する際タガメは繁殖期間中には頻繁に飛翔するが、その理由は後述(#天敵の節)のように同種間で激しく共食いすることから「同じ場所で繰り返し繁殖すると、新しい幼虫たちが先に生まれた幼虫たちに捕食されるリスクが高まるため」と考察されている。 稲刈りの準備で水田の水がなくなった際 タガメはカブトムシのように急に飛翔することはできず、草など足場に登って胸部を前後に動かす準備運動が必要となるほか、飛翔時を含めて日常的に甲羅干しを行う。飛翔前の甲羅干しはゲンゴロウなど水生甲虫類によくみられる習性だが、タガメ以外の水生カメムシ類では滅多に見られない。また、タガメは飛翔行動前以外にも頻繁に甲羅干しを行うほか、飼育下では捕獲した餌を持ったまま上陸して食べる光景も観察される。 タガメは強い正の走光性を持ち、タガメが多数生息する地域では野球場のナイター照明・パチンコ店・大型スーパーマーケットなど強い光源へ飛来することが多いが、体が大きいタガメにとって長距離飛行はかなり体への負担が大きく、着陸する際にはうまく着陸できず地面に落ちることが多い。地面へ落下した個体は再びすぐ飛翔しようとする個体もいるが、通常はすぐ飛翔・歩行移動せずその場でじっとしている。飛翔行動にも季節ごとに違いがあり、繁殖期に当たる7月下旬にはオスが比較的高い位置を飛行するのに対し、メスは腹に卵を抱えて体重が増しているため低空飛行することが多い。一方で10月初旬には雌雄とも軽快に高い位置を飛行し、外灯周辺を旋回して飛び去る個体が多い。なお7月末からは新成虫が灯火へ飛来するようになり、お盆以降は灯火へ飛来する個体の大半が新成虫となる。 降り立った先がグラウンドなどの場合はしばらくして再び飛翔して水辺へ戻る場合が多いが、水生昆虫であるタガメは陸上において体内水分の損失が大きく、夜通し人工照明の強い光で照らされるような場所へ誘引された個体はそこから飛翔できず、朝日を浴びて乾燥により死亡してしまう。また外灯へ飛翔した個体は体力的に衰弱していることが多く、明け方にカラスに捕食される個体もいるほか、パチンコ店駐車場・街灯・道路脇の自動販売機などへ飛来した個体は車に轢かれて死亡(ロードキル)するものも少なくなく、これも個体数減少の一因となっている。 実際にタガメの生息地がごくわずかしか残っていない大韓民国(韓国)では最大の生息地付近で水田から遠く離れた住宅地の水銀灯へタガメが多数飛来しており、現地の研究者が「元の水辺に戻れないのではないか?」と懸念しているほか、市川・北添 (2009) も「周囲に安全な水辺が多くない場所では強すぎる照明がタガメの生存を脅かす可能性がある」と指摘している。 日本でも徳島県徳島市内(眉山・徳島駅前のバスターミナルなど)では1960年代ごろに水銀灯照明が設置されたところ、付近の生息地から大量のタガメが飛来して水銀灯周辺で死亡し、踏みつけられたタガメの死体が山のようになる現象が1 - 2年ほど続いたが、やがて付近のタガメ個体群が絶滅状態になったことで終息した。また、同県では山間部でも街路灯・学校校庭の照明装置がタガメの激減・絶滅の要因となった。
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