阿蘇くじゅう国立公園
九州中央部を縦に貫く直線上には、阿蘇、加久藤(かくとう)、姶良(あいら)、阿多、鬼界(きかい)という5個の巨大なカルデラが、見事に一列に並んでいる。そのうち、阿蘇カルデラは9万年前の噴火によってできたもので、世界でも最大級の噴火であった。火砕流は中部九州一帯の谷や低地を埋めて、広大な台地をつくり出した。
典型的な二重式カルデラの阿蘇
阿蘇火山一帯と九重山地、由布岳、鶴見岳を区域とする。昭和9年に阿蘇国立公園として指定され、28年に由布岳、鶴見岳を、40年にやまなみハイウェイ沿線を追加、61年、現在の名称になった。なお、別府の高崎山ははじめこの公園に入っていたが、31年に瀬戸内海国立公園に移し替えられた。
阿蘇は典型的な二重式カルデラで、東西18km、南北25km、外周は120km以上あり、世界でも有数の大きさである。内部の広大な火口原には町があり、水田が広がり、国道やHR豊肥本線なども通っている。
ほぼ中央部に阿蘇五岳と称される根子(ねこ)岳、高岳、中岳、杵島(きじま)岳、烏帽子(えぼし)岳の中央火口丘群が東西に並んでいて、国立公園としての探勝の中心はこの地区になる。その一つの中岳は現在も活動を続けているが、活動が穏やかなときには、火口縁に立って内部を見ることのできる数少ない火山である。
烏帽子岳の北西には草千里がある。径1kmほどの爆裂火口の跡で草地となり、放牧された牛馬がのどかに草を食んでいる。中岳北東麓の仙酔峡は溶岩流の跡の谷で、荒涼たる眺めだがミヤマキリシマが多い。ロープウェイの阿蘇山東駅がある。
外輪山は内側は急崖で、大観峰(だいかんぼう)(遠見ヶ鼻)など、カルデラ内を見渡すよい展望地点がある。西側山麓には自然林に包まれた菊池渓谷がある。
溶岩円頂丘からなる連山・くじゅう
[久住山]
九重山地は阿蘇カルデラの北東にある。最高峰は中岳(1,791m)で、九州本土の最高峰でもある。久住山、大船(たいせん)山、三俣(みまた)山など十数座からなるが、多くは火口のないドーム状の溶岩円頂丘の山群である。周辺には火砕流台地の広大な広がりがあり、北側に飯田(はんだ)高原、南側に久住高原の草原をつくっている。中心部の盆地状の平坦地が坊ガツルで草原となり、一部に中間湿原も形成されている。また、大船山付近にはミヤマキリシマが多い。やまなみハイウェイ沿道の長者原が利用基地である。
由布岳と鶴見岳は別府市の後背に立つ山で、ともに山頂からの展望がよい。鶴見岳は火山活動により別府温泉をつくった山であり、別府温泉からロープウェイがある。
人により維持される草地生態系
阿蘇、くじゅう両地域とも、ススキやシバの育つ草原が景観上の大きな特色となっている。これは採草、野焼き、放牧などによって人為的に維持されてきた特殊な自然である。しかし、長年にわたり安定した状態で維持されてきたため、ここには特有の生物相が見られる。
植物では、ハナシノブは阿蘇の固有種であり、ヒゴタイ、ツクシマツモト、オミナエシ、ヤツシロソウなども、分布が限られているか、希少な種である。昆虫では、オオルリシジミが草原性のチョウとして代表的であるが、ヒメシロチョウも九州での分布はこの両山地に限られる。
貴重な生態系を維持してきた草原も、近年は産業構造の変化や労力不足から火入れ、採草などの日常的管理が不足がちになり、また、一部は草地改良によって牧草地になるところも現れた。今、草原を維持するための再生事業などの努力が、始まっている。
野焼き
野焼きは、牧草になる草の発芽や生育の環境を準備し、有用な草原を維持するために必要な作業であり、阿蘇では千年以上の歴史を持っている。
しかし、近年畜産農家の減少や野焼きに従事する人の高齢化などの原因から、草地環境が悪化し、固有の動植物の衰退も起こってきた。このため、(財)阿蘇グリーンストックなどの団体や行政機関が協力して、野焼きの復活などによる草原維持の努力を行っており、大勢のボランティアも参加している。
関連リンク
- 阿蘇くじゅう国立公園 (環境省ホームページ)
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