読者への挑戦
(読者への挑戦状 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 23:17 UTC 版)
読者への挑戦(英語Challenge your readers)とは、推理小説の技法である[1]。「読者の挑戦状」とも言う。探偵や刑事役などが犯人を特定する前に物語を止め、読者に対して誰が犯人であるかを問うことである。J・J・コニントンが1926年に『或る豪邸主の死』で用いたのが最初の用例で、その後エラリー・クイーンが『ローマ帽子の謎』をはじめとする「国名シリーズ」で用いることで広く知られるようになった。日本では有栖川有栖が『月光ゲーム Yの悲劇'88』をはじめとする「学生アリスシリーズ」の全長編作品で用いている。
ルール
明確なルールがあるわけではないが、読者が推理できること、推理できる材料が示されていることなどが挙げられる。[要出典]
主な読者への挑戦がある作品
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この節の出典や参考文献は、一次資料や記事主題の関係者による情報源に頼っています。
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海外小説
- 1926年 『或る豪邸主の死』(J・J・コニントン)
- 1929年 『ローマ帽子の謎』(エラリー・クイーン)
- 1930年 『フランス白粉の謎』(エラリー・クイーン)
- 1931年 『オランダ靴の謎』(エラリー・クイーン)
- 1932年 『ギリシア棺の謎』(エラリー・クイーン)
- 1932年 『エジプト十字架の謎』(エラリー・クイーン)
- 1933年 『アメリカ銃の謎』(エラリー・クイーン) - 同年の『シャム双生児の謎』には読者への挑戦は挿入されていない。
- 1934年 『チャイナ橙の謎』(エラリー・クイーン)
- 1935年 『スペイン岬の謎』(エラリー・クイーン)
- 1936年 『中途の家』(エラリー・クイーン) - クイーンの作品中、読者への挑戦が挿入された最後の長編。
- 1937年 『警官の騎士道』(ルーパート・ペニー)
- 1938年 『警官の挑戦』(ルーパート・ペニー)
- 1938年 『服用禁止』(アントニイ・バークリー)
国内小説
- 1936年 『人生の阿呆』(木々高太郎)
- 1946年 『蝶々殺人事件』(横溝正史)
- 1947年 - 1948年 『不連続殺人事件』(坂口安吾) - 連載時は懸賞金つき。角川文庫版など、挑戦が収録されていない版もある。
- 1949年 - 1950年 『呪縛の家』(高木彬光)
- 1955年 『人形はなぜ殺される』(高木彬光)
- 1957年 - 1958年 『樹のごときもの歩く』(坂口安吾・高木彬光) - 坂口安吾の未完の長編『復員殺人事件』(1949年 - 1950年)を高木彬光が補筆したもの。連載時は懸賞金つき。挑戦が収録されていない版もある。
- 1981年 『占星術殺人事件』(島田荘司)
- 1989年 『月光ゲーム Yの悲劇'88』(有栖川有栖)
- 1989年 『孤島パズル』(有栖川有栖)
- 1992年 『双頭の悪魔』(有栖川有栖)
- 1995年『鳴風荘事件 殺人方程式II』(綾辻行人)
- 1996年『星降り山荘の殺人』(倉知淳)
- 2007年 『女王国の城』(有栖川有栖)
- 2012年 『体育館の殺人』(青崎有吾)
- 2021年『硝子の塔の殺人』(知念実希人)
- 2023年 『不死探偵・冷堂紅葉』(零雫)
漫画
脚注
読者への挑戦状
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「読者への挑戦」を参照 作中で探偵役が犯人を指摘する「解決編」の前に「ここまでの部分で、推理に必要な手がかりは全て晒した。さあ犯人(もしくは真相等)を推理してみよ」という文言が挿入される演出があり、これが「読者への挑戦状」と呼ばれる。 エラリー・クイーンの『国名シリーズ』や東野圭吾の『どちらかが彼女を殺した』、『私が彼を殺した』のように本文で明示する作品もあるが、作者が「解決編の前で証拠が出揃っている」「読者の視点で推理可能」と序文や後書きで書いたり、インタビューで聞かれた際に答えるだけなど態度は様々である。 正解者に懸賞金やプレゼントが用意されることもあり、坂口安吾は『不連続殺人事件』の連載時に犯人を当てた者に解決編の原稿料を進呈すると発表した。また読者だけでなく、大井廣介、平野謙、荒正人、江戸川乱歩ら文人を指名した挑戦状も載せた。 読者への挑戦状の後に続く解決編を袋とじとした本もある。1936年に発表されたデニス・ホイートリーの『マイアミ沖殺人事件』がミステリ初の袋とじとされる。 古典的な本格ものの特徴とされるが、「変格」でも読者への挑戦状を載せる作品もある。また変則的な例として、パトリシア・マガーや貫井徳郎の『被害者は誰?』の「被害者当て」、都筑道夫による遺体の「発見者当て」などがある。
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