読者を騙す語り手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 23:21 UTC 版)
「信頼できない語り手」の記事における「読者を騙す語り手」の解説
読者や他の登場人物を騙そうとする人物は、信頼できない語り手である。 アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』は、探偵と行動を共にする語り手の書いた手記という形式になっているが、実は語り手が犯人だったというトリックが成り立っている。語り手は「嘘は書かなかった」と作中で弁明しているが、殺人を犯した決定的な瞬間は曖昧に書いている。こうしたトリック(叙述トリック)は、発表当時に一部からアンフェアだと批判されたが、現在ではよく利用されている。 日本では横溝正史の『蝶々殺人事件』『夜歩く』、高木彬光の『能面殺人事件』、栗本薫の『ぼくらの時代』などで「語り手(事件の記述者)=犯人」という形式を採用している。 1995年の映画『ユージュアル・サスペクツ』では、警察に尋問される容疑者が「信頼できない語り手」となっている。容疑者は、カイザー・ソゼと呼ばれる謎の犯罪者の事件の詳細を語るが、映画の最後で、それらが即興ででっちあげたものであり、カイザー・ソゼの正体は彼自身であったことが示唆されて終わる。 『シャーロック・ホームズシリーズ』の主な語り手であるジョン・H・ワトスンは誠実な人物として描かれるが、事件の描写についての正確性をシャーロック・ホームズから疑問視される事がある(ただし、ホームズ自身がミスリードしている場合もある)。 ジーン・ウルフの『ケルベロス第五の首』では、異星人というSFの設定を用いて、正体を隠そうとする語り手を登場させている。 西尾維新の 『不気味で素朴な囲われた世界』の語り手である串中弔士は、探偵の助手役であるにも関わらず実は作中に登場した全ての事件の原因であり、周囲の人物を誘導したことで殺人を犯させたことが明らかになる。
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