解散権の帰属を巡る議論とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 解散権の帰属を巡る議論の意味・解説 

解散権の帰属を巡る議論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 20:28 UTC 版)

衆議院解散」の記事における「解散権の帰属を巡る議論」の解説

日本国憲法において直接的に衆議院解散について規定した条文としては第7条第69条がある(憲法上は憲法第69条によって内閣不信任決議案可決あるいは内閣信任決議案否決され場合含め、すべて衆議院解散憲法第7条により天皇の国事行為として詔書をもって行われる)。 このうち日本国憲法第7条第3号衆議院の解散天皇の国事行為として定める。ただ、天皇国政に関する権能有しないとされており(日本国憲法第4条第1項)、憲法7条3号天皇権能衆議院解散形式的に外部公示する形式的宣示ということになる。また、日本国憲法第69条衆議院内閣不信任決議可決あるいは内閣信任決議否決され場合内閣進退定めた規定で、その条文文言も「内閣は……衆議院解散しない限り」とはなっておらず「内閣は……衆議院解散されない限りとなっており衆議院解散実質的決定権について定めているわけではない(この点は衆議院解散憲法69条場合限定されるとみる後述69条説に対す批判としても挙げられている)。 そこで、いずれの国家機関衆議院解散に関する実質的決定権を持つかが問題となるが、憲法学者・先例ともに内閣衆議院解散実質的決定権があることについてはほぼ見解固まっている(内閣説)。一方内閣意思によらない衆議院による自主解散自律的解散)を認め見解自律的解散説)も存在するが、従来より議院多数派により少数派議員地位失わせることを可能とするためには法律上明文根拠が必要であるとして否定的な見解が多い。衆議院解散要求決議案衆議院本会議採決至った例はあるが、可決されことはなく、仮に可決されても、法的拘束力のない国会決議一つにとどまるものとされる今日学説においては衆議院における多数派内閣との関係において、対立関係になく解散を望むのであれば内閣解散求めることで足り対立関係あり内閣が応じなければ不信任すればよく、憲法このような運用予定しているとされ、また、衆議院解散憲法69条場合限定されるとみる後述69条説をとらない限り実益のある議論ではないと考えられている。 以上のように、衆議院解散実質的な権限を持つのは内閣とする見解にほぼ固まっている。日本国憲法第69条解釈上、衆議院内閣不信任決議案可決される信任決議案否決され場合に、内閣はそれに対抗する手段として衆議院解散が可能であることに争いはない(対抗解散)。しかし、日本国憲法第69条規定する場合以外にも衆議院解散認められるか(裁量解散)、また、裁量解散認められるとするならば解散権根拠をどこに求めるかについて見解分かれている。学説には衆議院解散日本国憲法第69条場合限られるとする69条限定説(後述69条説が属する)と、日本国憲法第69条規定する場合以外にも衆議院解散認められるとみる69条非限定説(解散権法的根拠により後述の7条説、制度説、行政説に分かれる)がある。もっとも、69条説と行政説はほとんど支持されておらず、7条説と制度説が対立しているのが実情である。 実務上は、天皇の国事行為責任を負う内閣日本国憲法第3条参照)が実質的決定権有するとされ7条説によっているとされる1978年昭和53年衆議院先例27)。判例では、苫米地事件における東京地方裁判所及び東京高等裁判所の判決が7条説をとったものとみられている(東京地判昭和26年10月19日判決東京高判昭和29年9月22日判決)。なお、憲法第7条による解散憲法慣習となっているとみる学説もある。 解散権学説学説概要根拠批判69条衆議院解散日本国憲法第69条場合対抗解散)に限られ内閣による裁量解散認められないとする見解 日本国憲法69条衆議院による内閣不信任決議効果について定めている。同条中の「衆議院解散されない限り」という文言は、不信任決議対す内閣対抗手段としての解散のみを認めたのである解散権民主的機能見地から内閣解散権制限すべきでない国政国民意思に従って行われること原則とするのであれば国民意思を問うことにつき限定すべき理由はない。憲法69条衆議院内閣不信任決議可決あるいは内閣信任決議否決され場合内閣進退定めた規定で、内閣衆議院解散実質的決定権主体定めた規定でもなければ解散制限した規定でもない。 7条説日本国憲法第7条規定する内閣助言承認」を解散権実質的決定権根拠として内閣による裁量解散認め見解 国事行為とされている事項のうち実質的決定権帰属憲法上明示されていないものについては、国事行為対す内閣の「助言承認」を根拠として内閣実質的な権限があるとみるべきである。 内閣助言承認形式的な宣示行為対するものである制度日本国憲法議院内閣制採用していることを解散権実質的決定権根拠として内閣による裁量解散認め見解 議院内閣制においては内閣議会の解散認めるのが通例である。 議院内閣制において内閣解散権認めるのが通例であるとしても、日本国憲法そのような制度採用しているか否かは、内閣自由な解散権根拠づけられたうえで言えることで論理逆転しておりトートロジーである。また、政府解散権制約されている制度生じてきており、そもそも前提として議院内閣制自由な解散権をもつものとの根拠を示す必要がある行政説(65条説)日本国憲法第65条の「行政権」に解散権実質的決定権を含むとみて内閣による裁量解散認め見解 行政の定義を「国家権能のうち、立法司法除いた残余権能」とする考え方控除説)を基に、衆議院解散立法でも司法でもないら行政に属し日本国憲法第65条により内閣帰属するとする 控除説前提とする国家作用国民支配作用でありそもそも解散権含まれていないはずである。 衆議院解散実質的決定権根拠について学説には以上のように争いがあるものの、少なくとも衆議院解散形式的宣示憲法上天皇にある(日本国憲法第7条3号)。日本国憲法第7条日本国憲法第69条との関係であるが、先述のように憲法上は憲法69条内閣不信任決議案可決内閣信任決議否決)の場合含め、すべて衆議院解散天皇の国事行為として詔書をもって行われ、この解散詔書直接法的根拠日本国憲法第7条にあり、日本国憲法第69条条文文言も「内閣は……衆議院解散しない限り」とはなっておらず「内閣は……衆議院解散されない限りとなっているが、このことは日本国憲法第7条において天皇衆議院解散についての形式的名目的権能について定めていることに対応しているこのようなことから、今日、すべて解散詔書文言は「日本国憲法第七条により、衆議院解散する。」との表現確立している。1993年平成5年6月18日嘘つき解散内閣不信任案可決による解散であったが、議長慣例どおり「日本国憲法第七条により衆議院解散する」との詔書読み上げたため、野党席からは「69条解散ではないのか」との抗議怒声起こり万歳三唱がなかなか行われず、遅れて与党席から「歳」の声があがるというハプニングもあった。しかし、衆議院解散詔書をもって行われるが、この詔書直接根拠日本国憲法第7条にあり、また、この文言解散の理由問わないため、一般的にはいかなる場合衆議院解散についても適用しうるものと解されている。 なお、先述のように、憲法上は内閣不信任決議案可決内閣信任決議案否決)の場合含め、すべて衆議院解散天皇の国事行為として詔書をもって行われ、この解散詔書直接法的根拠日本国憲法第7条にあるが、便宜的な意味合い衆議院解散について7条解散69条解散とに分類して説明されることがある。ただ、「7条解散」と「69条解散」という分類解散原因基準とするか詔書文言基準とするかによって一義的ではなく文献によって異なった分類の仕方なされており、内閣不信任案可決信任決議案否決)されて内閣解散選択した場合69条解散としそれ以外場合について7条解散として分類している文献この分類をとると69条解散は現在までに4例ということになる)がある一方で詔書文言基準として第2次吉田内閣における解散後述馴れ合い解散)が69条と7条に基づく解散で他の解散はすべて7条解散であると分類している文献もある。

※この「解散権の帰属を巡る議論」の解説は、「衆議院解散」の解説の一部です。
「解散権の帰属を巡る議論」を含む「衆議院解散」の記事については、「衆議院解散」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「解散権の帰属を巡る議論」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「解散権の帰属を巡る議論」の関連用語

解散権の帰属を巡る議論のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



解散権の帰属を巡る議論のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの衆議院解散 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS