解散権論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/21 15:20 UTC 版)
この解散は日本国憲法下初めての第7条(天皇の国事行為)のみによる衆議院解散になった。日本国憲法は第7条第3号で衆議院の解散を天皇の国事行為として定めるが、天皇は国政に関する権能を有しないとされており(日本国憲法第4条第1項)、憲法7条3号の天皇の権能は衆議院解散を形式的に外部へ公示する形式的宣示権ということになる。そこで衆議院解散の実質的決定権の所在が問題となるが、これについては諸説がある。抜き打ち解散は、憲法7条が定める「内閣の助言と承認」を解散権の実質的根拠とする解散であり、その是非をめぐって野党・国民民主党の議員であった苫米地義三が衆議院議員資格の確認と歳費請求を求めて裁判を提起した(苫米地事件)が、最高裁大法廷は、高度の政治性があり裁判所の審査権外であることを理由に憲法判断をしなかった。なお、衆議院解散から2か月前の1952年6月17日には両院法規委員会は「衆議院の解散は憲法第69条の場合に限らない。ただし解散権を濫用しないように運用上について規制すべきである」とする内閣の幅広い解散権を認める勧告を両院議長に対して行っていた。 この解散以降、実務上、天皇の国事行為に責任を負う内閣が衆議院解散についての実質的決定権を有するとされている。なお、衆議院解散の実質的決定権という点については学説に争いがあるものの、少なくとも衆議院解散の形式的宣示権は憲法上天皇にある(日本国憲法第7条3号)。今日、解散詔書の文言については日本国憲法第69条により、内閣不信任決議が可決あるいは内閣信任決議が否決された場合か否かを問わず「日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。」との表現が確立している。これは、衆議院解散は詔書をもって行われるが、詔書の直接の根拠は日本国憲法第7条にあり、またこの文言は解散の理由を問わないため、一般的にはいかなる場合の衆議院解散についても適用しうるものと解されているためである。
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