第三者委員会の設置と検証作業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 03:21 UTC 版)
「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事における「第三者委員会の設置と検証作業」の解説
2月14日に全柔連は今回の問題を検証して、組織のあり方を提言する第三者委員会の設置を発表した。委員長には前検事総長で弁護士の笠間治雄、委員には空手家の高橋優子、精神科医の香山リカ、日本サッカー協会の副会長・田嶋幸三、柔道元フランス代表で慶應大学柔道部コーチのピエール・フラマンが就くことになった。第三者委員会は場合によっては告発選手や辞任した園田らも含めた聞き取り調査を行う可能性もあることを示唆した。 また、同日には全柔連の上村会長が文部科学大臣の下村博文に今回の経緯を説明するとともに、謝罪した。さらに、全柔連強化委員長の斉藤も味の素ナショナルトレーニングセンターで開催されたJOCの緊急コーチ会議の席上において今回の一件を謝罪することになった。 一方、ヨーロッパ遠征から帰国した筑波大学の緒方亜香里が今回の問題に関して選手として初めて言及して「騒動になっているんですど、いい方向に進んでもらいたい。柔道をやりやすい環境になってくれたらいいと思います。」と語った。また、監督やコーチが辞任した件に関しては「仕方ないですね。いろいろありましたし。」と述べた。さらに綜合警備保障の田知本愛は「いつも通り試合に集中できました」、渋谷教育学園渋谷高校の朝比奈沙羅も「みんな混乱しているんで、早く問題が収束してほしいです」とそれぞれ感想を述べた。 2月19日には全柔連が設置した「柔道女子暴力・パワハラ問題」第三者委員会の初会合が開かれた。全柔連が独自に調査した事実関係を踏まえた上で、第三者委員会に改革への提言をしてもらう意向だという。第三者委員会は全柔連会長である上村や前監督の園田など約30名の関係者から事情を聞くために「聞き取りリスト」を作成した。委員の1人はJOCとは別に選手の聞き取り調査も希望したものの、委員長の笠間は選手が匿名にしている以上それは難しく、上村は今回の提言を全て受け止めると語った。 一方、JOCは同日までに選手15名のうち約10名の聞き取りを終え、全柔連に対して指導を行うとしていて、補助金の減額も有り得るという。 2月21日にJOC加盟団体審査委員会は全柔連に対する処分を3月19日の理事会で答申することに決めた。 2月26日に代理人である辻口・岡村両氏は、25日に第三者委員会による告発選手への聞き取り要請があったものの選手側による全柔連への強い不信感や匿名性確保という観点、さらにはJOCによる聞き取りがすでに行われていることを理由に拒否したことを明らかにした。 また、JOCの「緊急調査対策プロジェクト」は26日までに選手への聞き取り調査が4分の3以上終了したことを発表した。今後は辞任した園田ら指導者側からの聞き取りも行うとしている。聞き取り調査に関しては、いつ、どこで、誰に暴力を受けたかという具体的な事実に重点が置かれたという。さらに、暴力以前の問題として、指導者と選手間に人間同士のごく当たり前の関係が構築できていたのか疑問が呈されることにもなった。加えて、告発選手の名前は今後も明らかにされることはないことを改めて述べた。 さらにこの日、ヨーロッパ遠征から帰国した強化委員長の斉藤は指導者と選手間のコミュニケーショーンを円滑に図るために選手会結成を提案した。 2月28日に部会長の山口香は全柔連の第三者委員会の聞き取り調査を受けて、「選手の意見を吸い上げるような組織システムを構築してほしい」と提言した。また、女性監督の起用に関しては、「時期尚早。顔が浮かばない。お飾りになるならやらない方がいい。」との見解を示した。ただ、2020年のオリンピックでは女性監督もありうるとして、その候補として塚田真希や谷本歩実の名前を挙げた。 3月1日には第三者委員会の2回目の会合が開かれて、全柔連会長である上村や園田を始めとした10名以上の関係者への聞き取り調査の経過報告や意見交換が行われた。ある委員によれば、15名の告発選手が全柔連への不信感から第三者委員会による聞き取りを拒否していることもあり、問題の核心に迫るのが難しいことから、具体性を有した提案はしづらい状況にあるという。委員の1人である田嶋も「人事や、強化システムそのものについて言及するのは難しい」との見解を示した。ただ、委員長の笠間によれば、これからも告発選手への聞き取りへ向けた接触は図っていくつもりだとも述べた。この会合を受けて、上村は8日の最終会合での答申を期待していると述べた。この答申を基に18日の全柔連理事会で組織改革を協議することになるという。 さらに上村は、未整備な状況になっているライセンス制度の導入にも前向きの姿勢を示した。 また、この日ヨーロッパ遠征から帰国した監督代行の田辺勝は、今回の騒動で試合に出場した選手にも多少の動揺が見られたものの、選手のサポートはきちんと果たすことができたと語った。さらに、「強化体制に関しては、変えるべきところは変えていかなければならない」と付け加えた。自身は女子強化コーチである貝山仁美、薪谷翠とともに、今後JOCから今回の問題に関する聞き取り調査を受けることになるという。 3月4日には監督代行を務める田辺とコーチの貝山及び薪谷が、これ以上コーチを続けるのは難しいことを理由に辞任の意向を示した。暴力行為への関与なしとされながら、暴力行為を認めて辞任した前監督園田らとともに連帯責任で戒告処分を受けたことへの撤回を全柔連に求めていたが、それが受け入れられなかったためだという。しかしその後、全柔連会長の上村が3名は暴力やパワーハラスメントには関わりなかったと明言した。「連帯責任にしたのは悪しき慣習で、手続き上も不備があった」とその見直しも示唆した。さらに、強化委員長の斉藤による説得などもあり、田辺は処分が撤回された場合に限り、女子の新体制が発足するまで監督代行の職務を全うする意向だと語った。また、3月下旬に味の素ナショナルトレーニングセンターで、試験導入された新ルールの検証と対策を目的にした強化合宿を予定通り行うことも確認された。
※この「第三者委員会の設置と検証作業」の解説は、「女子柔道強化選手への暴力問題」の解説の一部です。
「第三者委員会の設置と検証作業」を含む「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事については、「女子柔道強化選手への暴力問題」の概要を参照ください。
- 第三者委員会の設置と検証作業のページへのリンク