生前信託とは? わかりやすく解説

生前信託

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 13:45 UTC 版)

信託」の記事における「生前信託」の解説

アメリカ合衆国中流上の階層では、相続円滑に行うことを目的とした「生前信託(living trust)」を作成することが一般的であり、遺言(will)、事前医療措置指示書advanced medical instructions)、(自己判断不能事態陥った場合の)継続委任状(durable power of attorney)とセットで「相続対策estate planning)」として生前用意することが推奨されている。以下に典型的な例を基に生前信託の概要述べる。 正常な判断能力有する単身者または夫婦自分(達)を委託者とし、相続させたい子孫近親者或いはその他の者を受益者として、自らを受託者とする信託作成する夫婦場合委託者受託者夫婦共同名義である。信託撤回能信託とし、委託者である本人夫婦場合夫婦どちらか)が生存中はいつでも撤回変更が可能である。信託中には遺産分配先、分配方法分配条件などできるだけ詳細に記す。分配先は現存する人物子・孫)に限らず将来人物(例:××の子委託者死亡時に存在するもの)や寄付先当てることもあるし、また「満25歳達するまでは必要な生活費のみ、既に満25歳達しているか満25歳達した後は全額」などの時間的条件付けることも一般的である。また、例え分配先の続柄として「子」を指定するなら、「子」には養子として迎えたもの、養子として他所に出て行ったもの、非嫡出子婚外子胎児などを含めかどうかの定義や、もし委託者夫婦場合どちらが先に死んだかで分配形態異なるなら、例えば「夫婦両人30日以内死亡した場合或いは30日以内行方不明となって死亡宣告成され場合夫婦はは同時に死亡したみなして、この信託遺贈される資産半分を夫が後に死亡した場合分配方法で、残り半分を妻が後に死亡した場合分配方法で…」のような死のあとさきの定義、胎児分配先に含めるなら「後から死亡した委託者死後300以内出生した者、ただし出生後180日以内死亡した者を含まない」のように、後日論議呼びそうな事柄できるだけ排除するために詳細な定義書き込む委託者受託者信託作成者夫婦場合両方)が死んでしまうと受託者がいなくなってしまうので、委託者受託者死後受託者地位承継する承継受託者successor trustee)」を予め信託中に指名しておく。承継受託者には多く場合信頼できる近親者或いは弁護士銀行証券会社などの信託部門などを指名し、また委託者兼原受託者死亡を以て撤回可能から撤回不能信託変性することを信託中に明記するので、信託作成委託者(達)の死後誰も信託撤回変更できなくなる。承継受託者には適切な報酬払われることは一般的である。 信託証書定められ書式存在せず、また日本公正証書遺言などとは異なり、生前信託は公的機関提出などせずに、作成するだけで効力持ち通常はノタリー・パブリックの面前正常な判断能力有する委託者自分自由意志署名したことをノタリー・パブリックが証明するスタンプ原本押して委託者受託者信託作成者本人保管し写し控え弁護士などの介助者と承継受託者保管し委託者死後受益者原本を基に自己の権利主張するために使う。 信託作成者委託者)は、信託実効性持たせるために以下の名義を信託変更する居住している不動産名義title証券口座などの金融資産死後移転受益者(transferable on death (TOD) beneficiary相続人不動産名義変更共有community propertyまたはjoint tenancy with right of survivorship=JTWROS)から信託への変更実質所有者変化がないので譲渡には当たらず、郡の登記局に払う数十ドル程度の手数料で済む。夫婦共有(JTWROS)の金融資産口座問題ないが、IRA個人退職資金口座)は個人名義であり多くの州では配偶者以外を優先受益者primary beneficiary)に指名することには当該配偶者同意必要などの制限があるので、既婚者場合信託劣後受益者contingent beneficiary)に指定することが多い。また銀行などの預金口座通常信託相続人として認めないので、死後支払い受益者payable on death (POD) beneficiary)として個人指定する同時に作成する遺言に「自分死後は『ジョン・スミス信託』に全財産遺贈する」と記す。既婚者遺言では「自分死後配偶者××に全財産遺贈する。ただし配偶者なき場合は全財産ジョン・スミス=ベティ・スミス家族信託遺贈する」と記すことが多い。 信託作成者委託者)の生前委託者受託者兼ねているので、信託中の自分(達)の財産の管理自分(達)自身委託している形になり、委託者受託者信託中の財産いかように管理処分でき、信託存在実質何も影響しない。しかし委託者夫婦信託場合夫婦両人)が死ぬと、信託中の定めにより信託撤回変更不能になり、信託指名され承継受託者受益者利益のために信託指示に従って信託中の財産管理処分することになる。 生前信託は遺言による遺産処理と似ているが、以下の点が異なり、生前信託の利点とされる。 生前信託中の財産裁判所検認不要。ほとんどの州では信託外の遺産総額15ドル超える遺言のあるなしに拘わらず裁判所検認が必要で、金額状況により検認には数か月単位時間数万ドル弁護士費用必要な場合もある。 生前信託による遺贈非公開検認裁判公開原則により秘密にできない。 その他、以下の点も生前信託の利点考えられる遺言個人のものなので夫婦場合それぞれに作成するが、生前信託は夫婦共同のものを作れる。 遺言遺産直接的な処分方法しか指定できない一代限り」の指示だが、生前信託は承継受託者将来含めた処分委託できる。 以上、生前信託は日本民事信託家族信託自己信託部分的に似ているところもあるが非なるものであるまた、アメリカ合衆国法体系英米法コモンロー)に基礎をおいており、夫婦共有財産制(JTWROS、スペイン法の流れをくむ西部一部の州ではcommunity propertyも)が認められている、相続遺留分がない(ドイツなどの大陸法国家には存在)などの法体系も生前信託と日本の制度違いとなる(例え日本不動産の「夫婦共有」は持ち分定めたものであり片方の「共有者」の死後はその持ち分相続対象になるが、JTWROSでは夫婦互いに重複する100%所有権有し片方配偶者死後生き残った方が自動的に100%所有権引き継ぐ)。

※この「生前信託」の解説は、「信託」の解説の一部です。
「生前信託」を含む「信託」の記事については、「信託」の概要を参照ください。

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