治療薬としての可能性
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「アンチセンスRNA」の記事における「治療薬としての可能性」の解説
asRNAは調節エレメントとして機能するため、創薬標的として多くの利点が存在する。まず、asRNAは転写、転写後、エピジェネティックな修飾など複数の段階で遺伝子発現を調節する。次に、シスに作用するasRNAは配列特異的であり、標的遺伝子と高い相補性を示す。3番目に、asRNAの発現レベルは標的mRNAと比較して非常に低いため、効果を示すために必要なasRNAはごく少量でよい。創薬標的という観点からは、このことは有効性を示すために必要な用量が低いという大きな利点となる。 asRNAを標的として遺伝子座特異的に遺伝子発現を増加させる試みが近年多くの関心を集めている。薬剤の開発においては、ダウンレギュレーターや阻害剤として機能する薬剤の開発のほうがが容易であることが常である。しかし、がん抑制遺伝子、神経保護作用を示す成長因子、遺伝疾患においてサイレンシングされている遺伝子などの発現を活性化またはアップレギュレーションする薬剤の開発の需要も存在する。現在のところ、遺伝子発現やタンパク質の機能の欠陥の回復のためのアプローチとしては、酵素補充療法、miRNAによる治療、機能的cDNAのデリバリーなどがある。しかしながら、そのそれぞれにいくつかの短所が存在する。例えば、酵素補充療法で用いられる合成タンパク質は、内因性タンパク質の機能を完全に模倣することはできないことが多い。さらに、酵素補充療法法は生涯継続することが必要であり、患者にとって大きな金銭的負担となる。asRNAの作用は遺伝子座特異的であり、また多くの疾患においてasRNAの発現が変化していることから、asRNAの阻害によって最終的に特定の遺伝子の発現を増加させる、antagoNATと呼ばれる一本鎖オリゴヌクレオチドのデザインが試みられている。 asRNAは創薬標的または医薬品候補として有望であるものの、いくつかの課題も残されている。まず、asRNAやantagoNATはリボヌクレアーゼや他の分解酵素によって容易に分解される。治療用オリゴヌクレオチドの分解を防ぐためには、通常は化学修飾が必要である。オリゴヌクレオチドに対する最も一般的な化学修飾は、骨格へのチオリン酸結合の付加である。しかし、チオリン酸修飾は炎症促進作用を示す場合がある。チオリン酸修飾オリゴヌクレオチドの局所注入後には、発熱、悪寒、吐き気などの副作用が観察される。次に、オフターゲット毒性も大きな問題である。内因性asRNAは遺伝子座特異的であるが、目的の標的効果を示す合成オリゴヌクレオチドはわずか10–50%である。こうした問題が生じる理由の1つは、asRNAが標的配列やRNase Hによって認識されるためには、その構造に関して高い要求性があるためであると考えられている。1か所のミスマッチであっても二次構造のゆがみが生じ、オフターゲット効果が引き起こされる場合がある。また、人工asRNAは細胞内への取り込みが限られていることが示されている。神経細胞やグリア細胞は裸のアンチセンスオリゴヌクレオチドを自由に取り込むことができることが示されているが、細胞内の濃度や代謝を監視・制御するためには未だウイルスや脂質小胞などの追跡可能なキャリアを利用が適している。
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治療薬としての可能性
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「抗微生物ペプチド」の記事における「治療薬としての可能性」の解説
これらのペプチドは、新規治療薬および従来の抗生物質治療の新規補助剤の開発における非常に有力な候補である。それは、従来の抗生物質と比べ、抗生物質耐性を引き起こすように見えないが、一般に広範囲な活性を持っており、静菌的ではなく殺菌的であり、殺菌の誘導が短時間に起こるからである。非常に多くの天然ペプチドとそれらの派生物が、口腔粘膜炎、嚢胞性線維症(CF)に関連している肺の感染症、がん、、および典型的な皮膚感染症にわたるさまざまな疾患に対する新規抗伝染病療法として開発されてきた。ペクシガナンは糖尿病による足の壊疽を関係した感染症の治療で役に立つことが示されている。
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治療薬としての可能性
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「グリア細胞株由来神経栄養因子」の記事における「治療薬としての可能性」の解説
GDNFはパーキンソン病の治療薬としての研究が行われているが、初期の研究では有意な効果は示されていない。 ビタミンDはGDNFの発現を強力に誘導する。 2012年、ブリストル大学はパーキンソン病患者に対する5年間の臨床試験を開始した。41人の参加者は、薬剤が損傷細胞へ直接到達することができるよう、頭蓋内へのポートの外科的な導入が行われた。GDNFとプラセボの定期的注入による二重盲検試験の結果、GDNF投与群とプラセボ投与群の間でパーキンソン病の症状に関しては有意な差がみられなかったが、損傷した脳細胞に対する効果は確認された。この臨床試験はParkinson's UKの資金提供、The Cure Parkinson's Trust(CPT)の支援の下行われ、CPTの設立者Tom Isaacsも参加者の1人となった。
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