汎用動力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 00:59 UTC 版)
汎用エンジン 様々な機器の動力源として用いられる小型の汎用エンジンは、ロータリーを手掛けた多くのメーカーで研究段階初期の習作として試作が行われた事例が多いが、実際に販売に至ったケースは少なかった。この分野で最も大きな成功を収めたのは1965年に発売されたZFザックスのザックス・KM48エンジンである。KM48は定置機器のみならず、モーターボート、オートバイ、小型農業機械などの乗用機械への搭載も意識した設計が成されており、前述のロータリーエンジン搭載オートバイのいくつかは、技術者がこのエンジンをオートバイに搭載できないかを真剣に検討した末に誕生したという経緯を持つものも存在した程であった。ザックスはKM48を軽量化しモーターグライダー用としたザックス・K8Bの販売も行ったが、KM48、K8B共に石油危機後の1975年に販売終了に追い込まれた。 ヤンマーは1962年4月に4.5馬力エンジンの試作を行っているが、既に空冷ディーゼルの汎用エンジンが1959年に販売開始していた事もあり、ロータリーは飽くまでも研究用のみで市販はしなかった。なお、ヤンマーが一般向けにレシプロ方式の小型ガソリンエンジンの市販を開始するのは1971年の事である。 スズキは1971年にロータリーエンジン研究部門である東京研究所を設立し、RE-5の前段階として汎用エンジンの研究開発に取り組んだ。元スズキ社員の中野広之に依ると、1974年時点で強制空冷1ローターのスズキ・T0013(66.7cc)と、減速機付き仕様のスズキ・T0015(93.2cc)の二種類が完成していたが、諸事情から実際に発売される事はなかった。中野はT0013を開発中に遭遇した未知の現象として、「エンジン停止後数時間放置した後に再始動すると全開出力が大幅に低下し、エンジンを回し続けてもその回復に数時間を要する」というものを挙げており、出力特性グラフの形状からスズキ技術者の間ではのこぎり歯現象と呼ばれ恐れられていたという。のこぎり歯現象は常時安定した出力特性が求められる汎用エンジンには致命的な事象である為、東京研究所の技師達はその原因究明の為に様々な努力を行い、全開出力低下時間を20分程度まで短縮する事はできたものの、最終的にその原因を突き止める事は出来なかったという。 チェーンソー 1970年代にヤンマーディーゼル(現・ヤンマーホールディングス)がチェーンソー用として開発した経緯がある。当時の林業労働者に、チェーンソーによる振動により極度の血行不良が発生したり(白蝋病)、騒音による難聴などの労働災害が頻発した。1966年、名古屋大学医学部の山田信也らの研究グループがチェーンソーと振動障害の関連性を証明した事により、振動障害は正式に職業病として認定された。山田は名古屋営林局(現:中部森林管理局)と共同で振動の少ないチェーンソーの研究開発に当たる事となり、林野庁も富士重工や共立エコーなど国産各社に低振動のチェーンソーの開発を指示、ヤンマーが行き着いた先がロータリーエンジンであった。 ヤンマーは船外機の実績を土台として1975年3月に世界初のロータリーエンジン搭載チェーンソー、ヤンマー・RH57(57cc)を納入するも、持ち運びが不便なほど大型であったこと、トルクが薄かったことから次第に敬遠され、普及するに至らなかった。なお、RH57は総重量10.15kg(本体7.9kg)であったが、同時期に「黄色のマッカラー」の渾名で日本の林業従事者からも大きな支持を得ていた米国マッカラー・モータース(英語版)のマッカラー・2-10(54cc)は本体重量7.1kg、大型機のマッカラー・スーパープロ80(80cc)でも本体重量は6.86kgであった。 なお、ヤンマーはRH57の改良と小型化をその後も進め、1978年にはRH57の改良型のヤンマー・RH600A(57cc)、1979年には枝打ち作業用の小型機であるヤンマー・RH350(33cc)の林野庁納入も果たしているが、主として燃費の問題が解消できなかった事から同年限りでロータリーの製造を打ち切り、研究開発からも撤退している。
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