母子世帯対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
そもそも母子世帯の貧困には、離婚や未婚の母に対して子どもの別れた父親の養育費が2割しかない現状が根幹にあるため、母子世帯にはアメリカ並みに養育費の徴収を強化し経済的自立を助ける必要がある。しかし、養育費徴収強化については「児童扶養手当の母親の収入申告に「養育費」を8割算入したことには無理があります。現状では自己申告はほとんどされていないし、養育費を受け取ることを逆に妨げる効果になっています」というシングルマザー支援団体自身が認めている、養育費未申告による児童扶養手当の不正受給問題も解決しなくてはならない。 生活保護母子世帯に対しての父の子どもに対する扶養義務履行率は、ある市では1割で、その援助額も月額平均2千円となっているため、非生活保護受給世帯に対してさらに低調である。 1960年に厚生労働省婦人少年局が行った養育費に関する調査では、協議離婚をした1940人のわずか8%しか養育費を受けておらず、調査不能となった母908人のうち35%は住民登録地に住まず、親元とも音信不通となっていて行方不明であった。 このような登録住所地に存在しない「消えた子ども」といわれる居所不明児童生徒は2011年度で全国に1191人となっている。このような登録住所地外にいる子どもは、行政サービスにアクセスしづらい上、行政側もその存在を把握できない。 この一例として、2010年7月には大阪市西区で離婚の母(23歳)が3歳と1歳の幼児を50日間に渡り自室に放置し、餓死させた事件がある。なお、本件は母自身も実母の慢性的な育児放棄を受け、引き取った実父も幼いころに自身が離婚や再婚を繰り返したことで不安定な家庭生活を送らせたと証言していて虐待の連鎖も伺われた。 居所不明児童は実際には死亡しており、親族による生活保護、児童扶養手当の不正受給とつながっている場合もある。 なお、2014年5月には、東京都足立区で6人の子を持つ夫婦が、死亡している次男の児童手当などを不正に受給した疑いで逮捕された事件が起こっている。夫婦は共に無職で生活保護費と児童手当の年間約573万円で暮らしていたが家賃や駐車場料金は滞納しがちだった報道されている。児童相談所の職員が家庭訪問するようになると、近所の住民に「(人数合わせで)子どもを貸してほしい」と頼み、断られると、今度はネットオークションでマネキンを購入し、職員の目をごまかしていた。両親は、次男(現在行方不明)の交通事故に絡み保険金をだまし取ったとして詐欺容疑などで再逮捕されている。 また、女性は非正規雇用職員として雇用されることが多く、国立社会保障・人口問題研究所の分析によると勤労世代単身女性(20~64歳)でも3人に1人が貧困であり、若く子どもがいない単身女性ですら「貧困女子」が存在する状況にある。これに対し、生活保護では大都市(1級地-1)での小学生1名と高校2名の子を持つ30代母の母子世帯の生活保護基準額は推定年収418万円以上であり、低所得・中所得の母子家庭より消費の水準が高い。勤労収入で同水準の所得を得ることは困難な現状がある。 生活保護母子世帯の5割は就業しているが、生活保護の母子世帯のうちパニック傷害、うつ病、統合失調症などの精神疾患を持つ者が3割を占めており、釧路市調査では無職者も働きたいという意欲はあるもの、自分の健康状態がよくなってからと回答した者が4割となっている。 しかし、離婚率が高く生活保護母子世帯が多い釧路市では、生活保護母子家庭の母を就労を促進する試みに取り組んでおり、経済的自立に結び付けている。 北海道釧路市で専業主婦をしていた女性(32)は、離婚後2児を抱え生活保護を受けたが保護費・児童扶養手当で月収20万、冬季には23万となり「離婚前、夫の給料でやりくりしていたよりも、ぜんぜんリッチ」となったが支援を受け就労し、手当てを含め月収約19万で、以前より所得が下がるものの生活保護を抜けた。 母子世帯の保護廃止の分析では、介護ヘルパーなどによって自立した例や子どもの就職による経済状況の好転が見られた。なお、自立に至った世帯では受給期間が2~4年以内と短い。 また他の自治体の市長も現場の長として、「特に若い方々への就労支援は最初の6か月が勝負」「貧困の連鎖とか貧困の罠とかという言葉を専門的に使いますが、1年以上生保を受給になるとなかなか脱却できないということが現実としてあります」と語る現状のため、早期の就労支援が有効である。 福岡県田川地区調査では就労による自立を果たした世帯についての分析では、世帯主の年齢が若く、保護期間の短い、高卒以上の学歴、何らかの免許・資格を有する、ひとり親家庭である傾向が見られたという。 非常勤等の被雇用者の場合には乳幼児の病気欠勤によって首になるなどの問題があるが、NPO法人ノーベルのひとり親向け病児保育「ひとりおかんっ子パック」NPO法人フローレンスの病児保育「ひとり親支援プラン」、宇都宮市のひとり親病児保育支援などの支援が始まっている。
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