構造とその課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/26 04:25 UTC 版)
「国鉄EF52形電気機関車」の記事における「構造とその課題」の解説
EF50形で先例のある2C+C2軸配置を採用した、先輪・デッキ付の長大なディテールを持つ機関車で、重厚なリベット組立構造の鋼製車体を備える。 基本システムは各国製輸入機関車での経験に基づき、ウェスティングハウス流の単位スイッチ方式制御として信頼性の向上を図ったことが特徴である。 運転室を広げ、運転機器配置も最適化を図って、乗務員の運転操作にゆとりを持たせる配慮が為された。主電動機や主制御器などの機器防護に著しい効果のある高速度遮断器も最初から装備され、制御回路に中継器を挿入することで機器類の連鎖的な故障を防ぐ措置が図られている。機械室の設計も、両側面通路・中央機器配置とし、整備性に意を払った合理化を図った。 当時の鉄道省および機関車メーカー・重電メーカーの技術者たちが手堅さを狙って設計したものであったが、それでも未熟な部分は少なくなかった。 根本的な問題としては、機器搭載に余裕を持たせるため全体に大型化し過ぎた点が挙げられよう。全長20.6mは、当時ではEF50形の21mに次ぐ大型であり、車重も108.0tという重量級で、いずれも過大であった。この重さに対する重量配分も偏り気味であったため、先輪と両端の動輪への負荷が大きく、内側軸受け式先輪台車のメタル焼け付き、動輪のフランジ磨耗過大などが顕著な問題となった。 時代相応に手動加速制御であるが、制御段数の多い割には低速寄りな3.45というギア比設定のため、高速運転を伴う東海道本線での旅客列車運用では、低速域ではコントロールが忙しく、高速に達すると速度維持のために連続力行を強いられて、主電動機に過負荷となる問題があった。 搭載された新開発のMT17主電動機(端子電圧675V時定格出力230kW/682rpm)は、芝間粂次郎ら鉄道省技術者と重電メーカー各社技術陣との協力で標準型として開発された意欲作で、先行導入された省形電車用制式主電動機のMT15系と同様、低回転に設計してフラットトルクな特性とした堅実な仕様であったが、初期製品は品質面で未熟でもあり、後年の改良型(MT17Aなど)に比べても弱め界磁領域が狭いなど、弱みを抱えていた。 また制御回路構成の検討がやや不十分で複雑気味であり、搭載する制御用の単位スイッチ基数が多すぎて、却って故障の増大原因になる問題もあった。新開発の電動発電機が故障を多発させ、ダンパーを欠いた新型パンタグラフが昇降時のバウンドで離線トラブルの原因になるなど、新しい試みや経験の浅さが問題を起こすことも少なくなかった。 これらの課題は、後にEF54形となった1931年(昭和6年)製の8, 9号機で軽量化など部分的改善が図られ、更に1932年完成の改良型のEF53形において大幅な改善を見た。 また初期形EF52形自体も、当初自動空気ブレーキと併設して搭載していた真空ブレーキ関連機器の撤去(EF52完成からほどなく、鉄道省の車両では自動空気ブレーキへの切り替えが完了した)などの機会を捉えて補機類の換装を行うなど、可能な範囲で実用面の改善を図っている。初期形の低速寄りギア比は、東海道線での第一線から外れた後には、勾配線でも走行可能な客貨両用の汎用性が生きて転用先に恵まれ、試作的要素の強い機関車ながら長寿を保つことにもなった。
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