構造とメンテナンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:59 UTC 版)
「トラックボール」の記事における「構造とメンテナンス」の解説
トラックボールはその構造上、操作球を支持しておく構造を持たなければならない。そしてその構造は操作球の動きを妨げず、滑らかな操球感を実現しなければトラックボールとしての実用性を損なってしまう。 初期のトラックボールは、通常のボールマウスと同様に2軸のシャフトによってX軸Y軸の移動量を検出していた。それぞれのシャフトの端に、放射状に細かい隙間の空いたホイールが取り付けられており、その動きを光学センサーで読み取る方法である。また、それぞれのシャフトにはボールとの接触面に微小なゴムチューブが取り付けられており、ボールの挙動を取りこぼさないようグリップしていた。この構造は後に改良が重ねられ、カップ内にミニチュアベアリングを3つ配置し、内2つの動きを読み取る形式に進化した。ただしこの構造は複雑で部品点数も多く、何よりコストがかかる。しかし比較的耐久性があることから、時代が進んだ後も根強い愛好者がいる。また、この当時はボールの脱落を防ぐために、ボール径より小さい着脱可能なリング式のキャップがカップに被せられているタイプが多かったが、ボール直読みの光学式が普及するにつれ埃掃除のメンテナンス頻度が上がったためか、筐体の開口部をボール径より微妙に狭くして固定する形になり、キャップは廃れていった。この開口部が狭いタイプの筐体は、ボールを外すのに細長い道具で裏側から押し出す必要があり、底面にそのための穴が空いている。 トラックボールで最も一般的に普及した支持形式は、カップに硬質の数ミリ径の小さなボールを配置し、それにより操作球を支持する支持球式である。小さな支持球の点接触により、摩擦摺動でありながら滑らかに操作球が動くようにしたものであり、ベアリングや軸を用いるより構造を簡略化し、コストを抑えることが可能となった。ただし、モーション検出方式が光学式、またはそれに準ずる物でないと構造的に使えない。また、指での操球感は滑らかになっているが、ベアリング式より摩擦は大きくなるため、慣性で転がし続けられるものは少ない。 最も受け入れられた支持球式ではあるが、摩擦摺動であることから耐久性に難がある宿命が生じてしまう事ともなった。この形式のトラックボールを使用していると汚れや埃による操作球の動きの渋さが出てくる。この程度ならば操作球を取り外し清掃することで解決可能だが、どうしても解決が難しかったのが支持球の摩耗である。 初期の支持球式、または価格の安いトラックボールマウスは、支持球にステンレス等の合金を用いている。一見堅そうな金属支持球だが、意外なほど摩耗には弱く、操作球との摩擦と巻き込んだ硬質の埃の影響により接触面が平たく削れていってしまう欠点がある。こうなると点接触が面接触になり、非常に操球感を悪くするばかりか操作球に傷まで付けてしまう。 これを解決すべく登場したのが、非常に硬度の高いルビーや酸化アルミニウムセラミックスを用いた支持球で、これらはダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、通常まず摩耗しないことから、摩耗問題の決定打として比較的高級なトラックボール製品には好んで用いられる。 また、現在でも製品の絶対数の少ないトラックボール市場において、使い慣れた古い製品を使い続けたいという需要もあり、有志によりさまざまな補修方法が考えられており、支持球のセラミック化もその一つである。サイズの適合するセラミックボールを入手し、金属支持球をリプレースする改造であるが、現行のトラックボールを部品取りとするほか、ラジコンの駆動系部品からセラミック製のベアリングボールを入手するなど様々な方法が考案されている。 メンテナンス性に関しては、マウスは光学式に変わってボールの動きを読み取る接触部分の掃除が必要なくなったが、トラックボールの場合、従来と必要個所は異なるにしても定期的な掃除が欠かせないことに変わりはない。以前はシャフトのゴム取り付け部やベアリングといった、ボールとの接触面に埃が溜まることで、ボールが空回りを起こし読み取り不良を招いていたが、ボール直読みの光学式では採光部分(CCDが球体の回転を読み取る窓)や球体支持部などに溜まるようになっており、採光部分では意外と少量の綿埃でも読み取り不良が起き、球体支持部に溜まると操球感の滑らかさが失われる。
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