東南アジア諸国における反中
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 04:52 UTC 版)
中国人社会は東南アジアにも存在しており華僑として経済的に優位な立場である。特にマレーシアとシンガポールでは国自体が華僑が大多数である。しかし、そのほかの国では少数派であるが経済的にその国を支配しているとみられるため、華僑に対する反発から反中暴動がしばしば起きている。一方、華人の現地への同化が進んだ国、たとえばタイでは現在では華僑への反感は顕著でなくなっている。 インドネシア インドシナ戦争時のベトナムでの迫害や、インドネシアにおける反中暴動などが起きている。特にインドネシアでは激しい暴動事件が過去に何回か起きている。 2013年のインドネシアの調査では、過半数が中国の軍拡を懸念していると回答した。 ベトナム ベトナムは長い歴史の中、中国歴代王朝から繰り返し支配と侵略を受け、南北ベトナム統一後も、親中派の民主カンプチアに対する親ソ派のベトナムによる侵攻(カンボジア・ベトナム戦争)を巡って1979年に中国との大規模な戦争を起こし(中越戦争)、1989年までたびたび交戦(中越国境紛争)をしている状態であった。 2012年7月には南沙諸島の領有権をめぐり、「打倒中国」を旗印にした反中デモが勃発、2012年末には、南シナ海でベトナムの石油探査船のケーブルが中国漁船に切断されるという事件が発生したが、中国外務省はベトナムの抗議を却下しただけでなく、中国漁船の航行に支障が生じたとして、ベトナム海軍を非難し、ベトナムでは反中デモが起きている。2014年には南沙諸島の領有権をめぐり、中国とベトナムの当局の船が衝突して緊張が高まり、ベトナムでは中国人が殺害されたり、傷害事件が相次いだ他、中国企業と間違われて韓国企業、台湾企業、日本企業、香港企業、マレーシア企業、シンガポール企業の工場が襲撃される事態に発展している。このような一連の出来事に対して、毎週日曜日に首都・ハノイにある中国大使館前にて、2014年ベトナム反中デモが勃発した。対中関係は首脳レベルでの会議は行われるものの、領土・領海紛争問題で対立を続けている。中華人民共和国とは陸続きのため、中国製品(Made in China, Made in PRC)も多く流通しているが、ベトナムでは華人が急増し、不法滞在・不法就労も多発していることから、過去の侵略された歴史を含めて、反中感情を抱く者は非常に多い。 フィリピン 2013年、南沙諸島の領有権をめぐり、中国と領土紛争を抱えるフィリピンの調査では、中国を「ほとんど信頼していない」と回答した人の割合が1990年半ばの調査開始以来最高値となった。 シンガポール 統制社会のシンガポールでは、2013年に中国人移民のバス運転手らがストライキを起こし、公共交通機関が混乱した際、インターネットに反中メッセージが氾濫した。 カンボジア 2013年、カンボジアの地元住民からは、中国経済の農業投資のために村民が立ち退きを強いられたとの批判が上がっている。 ミャンマー ミャンマーでは、過去10年の間に大勢の中国人商人がマンダレーに押し寄せ、地元企業を買い漁り、住民を市外に追い出した。ミャンマーの歌手リンリンは、コンサートでファンがいつも求めてくる曲は、中国人商人に乗っ取られた故郷を嘆いた作品である。「この都市に住みついた彼らは誰だ? /北東の国からここにたどり着いた隣人/僕は恥ずかしさのあまり耳をふさぐしかない/異邦人にめちゃくちゃにされてしまったのだ/愛するマンダレーは死んだ」。この「マンダレーの死」という曲を歌うリンリンの姿はファンによって撮影され、インターネットに公開され、数十万人がその動画を見た。リンリンは「どの公演でも、必ずこの曲がリクエストされ」、中国文化や勤勉な中国人は尊敬するが、取引では得られるものより奪われるもののほうが多いと述べており、歌に込めた厳しいメッセージやその反響の大きさは、経済、軍事、政治で大国化した中国に対する反感がミャンマーで高まっていることを示している。 アメリカの働きかけでミャンマーが西側諸国との関係を改善させたのは、中国に対する不安感も要因の一つであり、欧米企業に門戸が開かれ、中国国有企業との競争に向けた態勢が整いつつあるが、中国政府は、アメリカが反中感情をかき立て、中国の「封じ込め」を目指したアジア諸国との協力関係を強化していると非難している。 中国社会科学院の郭継光は、地域安全保障環境に関するリポートで「近隣諸国の一部を見ると、一般市民の間では中国に対する不満感が日ごとに強くなっている」と指摘しており、天然資源の確保、他国から敬意を示されること、同盟国をつくることなどの中国の戦略は反中感情の高まりから複雑化しており、中国が、相手国政府や財界幹部としか接触せず、反政府派などと関係を持つことを避けたことから、ミャンマーなどの国々における国民感情に対応できていないという指摘もある。
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