杉山晋輔とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 杉山晋輔の意味・解説 

杉山晋輔

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/06 15:52 UTC 版)

すぎやま しんすけ

杉山 晋輔
米国農務省で(2018年5月)
生誕 (1953-05-14) 1953年5月14日(72歳)
日本 愛知県
出身校 東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業
早稲田大学法学部中退
職業 外交官アメリカ合衆国駐箚特命全権大使
テンプレートを表示

杉山 晋輔(すぎやま しんすけ、1953年昭和28年〉5月14日 - )は、日本外交官外務事務次官を経て、アメリカ合衆国駐箚特命全権大使を務めた[1]。2021年より、三井不動産株式会社顧問[2]

人物

愛知県出身。父は国際法学者法大教授だった杉山茂雄学習院初等科[3]、東京教育大学附属中学校・高等学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)を経て、早稲田大学法学部在学中に外交官試験に合格し、外務省入省。
アジア大洋州局長、外務審議官等の要職を歴任し、第2次安倍内閣の下で外務事務次官を、安倍・菅義偉政権で駐米大使を務めた。

経歴

外交官としての主な活動

杉山晋輔は外務省アジア大洋州局長や外務審議官を経て、外務事務次官・駐米大使などを歴任し、日米同盟の深化や対中・対韓外交に関与した。とくに2010年代には、慰安婦問題や歴史認識をめぐる国際的議論の中で、日本政府の立場を国際社会に説明する代表的な役割を果たした。 2017年初頭、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が新たに設置された際、日本政府はウィーン条約(外交関係に関するウィーン条約)への抵触の可能性を理由に韓国政府に抗議し、駐韓大使らの一時帰国、通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を講じたと報じられている[11]

杉山談話

2016年2月16日、杉山晋輔外務審議官(当時)は、スイス・ジュネーブで開かれた国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)において、日本政府代表団長として出席し、慰安婦問題に関する日本政府の見解を説明した。この発言は「杉山談話」としても言及され、後に外務省の日本語および英語公式サイトに要旨が掲載された[12][13]

杉山は、日本政府が1990年代に実施した調査の結果、慰安婦の募集や移送において日本軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を直接裏付ける資料は確認されなかったと述べた。また、被害者数として国際的に流布されている「20万人」という数字には具体的な根拠がなく、「性奴隷(sex slaves)」という表現も事実に反するとの立場を説明した[14]

さらに杉山は、こうした誤認の背景として、故・吉田清治が1983年に出版した著書『私の戦争犯罪』において「済州島で女性を狩り出した」と語った虚偽証言と、それを朝日新聞などが事実として大きく報道したことが国際社会での誤解を広める原因となったと主張した[15]

また、杉山は日本政府の過去の行為に対する謝罪と反省の意思を強調し、元慰安婦の尊厳と名誉の回復に向けた努力として、2015年の日韓合意に基づき10億円を拠出したことを説明した。日本政府としてはこの合意により「最終的かつ不可逆的な解決」が確認されたとの立場を示した[12]

エピソード

2001年に発覚した外務省機密費流用事件において、当時の斎藤邦彦次官付き秘書官をしていた杉山も、2億円の流用着服疑惑等で名前が挙がった[16]

外務省アジア大洋州局長在職中の2012年中国当局の船が尖閣諸島の日本側海域に侵入する問題がたけなわの頃、駐日中国大使館の韓志強公使に、電話を通じて「日本の領海への侵入は容認できない」との抗議を行った[17]

2015年7月6日、ユネスコ諮問機関イコモスによる端島第39回世界遺産委員会における登録勧告に対して、登録反対運動をしていた韓国と取り付けた日韓合意が韓国側により突如反故にされた。この対応で、岸田文雄外相、杉山晋輔政務担当外務審議官らと連携をとる佐藤地ユネスコ大使は、韓国代表側が求める徴用工に言及する“強い言葉(「forced labor」)”を一段和らげた形ながら、その趣旨を大幅に盛り込む形で譲歩した。

2017年12月19日、中国外交部の報道官華春瑩が定例記者会見で恩賜上野動物園パンダ「シャンシャン」(香香、Xiāng Xiāng)について日本人記者から質問を受け、当時外務次官だった杉山(中国語読みでShān Shān、つまりシャンシャン)に関する質問と勘違いするという珍事が発生した[18]

2023年、34歳歳下の妻に対するDV疑惑で警察沙汰のトラブルに発展していたことが写真週刊誌に報道された[19]

著書

共著

  • 『国際紛争の多様化と法的処理―栗山尚一先生・山田中正先生古稀記念論集』(信山社, 2007年)
  • 『国際法の新展開と課題―林司宣先生古稀祝賀』(信山社, 2009年)

同期

脚注

  1. ^ 閣議及び閣僚懇談会議事録首相官邸
  2. ^ 特別職国家公務員の再就職状況の公表について(令和3年4月1日~令和4年3月31日)”. 外務省. 2022年9月29日閲覧。
  3. ^ ワシントンDC桜友会 報告”. 学習院桜友会 (2019年6月9日). 2024年9月3日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 杉山晋輔外務省アジア大洋州局長 講師略歴、第18回 国際交流会議 アジアの未来
  5. ^ 『週刊東洋経済』2018年6月23日号 42頁
  6. ^ 『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』朝日文庫 321頁
  7. ^ 「外務次官に杉山氏決定 アジア大洋州局長は金杉氏 」日本経済新聞2016/6/14
  8. ^ 外務省 杉山晋輔・前外務次官が「開放感」毎日新聞
  9. ^ 駐米大使に冨田氏決定 : 日本経済新聞
  10. ^ 「日米同盟、着実に深化」 杉山駐米大使が離任会見 - 産経ニュース
  11. ^ 広川高史 (2017年1月6日). “政府:日韓通貨スワップ協議を中断-釜山総領事館前の少女像で”. Bloomberg.com. 2025年8月6日閲覧。
  12. ^ a b 女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査 (2016年2月16日、ジュネーブ)(質疑応答部分の杉山外務審議官発言概要)”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 2025年8月6日閲覧。
  13. ^ 産経新聞 (2016年8月20日). “外務省HPの英語版 慰安婦問題で2月の杉山晋輔外務審議官の国連での発言掲載”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年8月6日閲覧。
  14. ^ 産経新聞 (2016年2月17日). “【慰安婦問題】杉山外務審議官の発言要旨 慰安婦強制連行に関する国連女子差別撤廃委(1/2ページ)”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年8月6日閲覧。
  15. ^ 産経新聞 (2016年2月17日). “【慰安婦問題】杉山外務審議官の発言要旨 慰安婦強制連行に関する国連女子差別撤廃委(1/2ページ)”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年8月6日閲覧。
  16. ^ 『杉山晋輔外務審議官の罪状』の章「闇権力の執行人」(鈴木宗男、講談社、2007年)、「外務省犯罪黒書」(佐藤優、講談社、2015年)
  17. ^ 領海侵入に抗議=外務省時事ドットコム(2012/09/24-13:19)
  18. ^ INC., SANKEI DIGITAL (2017年12月19日). “【シャンシャン狂騒曲】中国外務省副報道局長、質問聞き間違え「政治文書に基づき処理を」…” (日本語). 産経ニュース. https://www.sankei.com/article/20171219-JSFOCQTIJZNXZPPJ5JPZAB7A6U/ 2018年7月25日閲覧。 
  19. ^ 安倍元総理″側近″超エリート元外務次官 が34歳年下妻への「DV」で警察沙汰になっていた!”. FRIDAYデジタル (2023年6月6日). 2025年7月5日閲覧。

関連項目

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「杉山晋輔」の関連用語

杉山晋輔のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



杉山晋輔のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの杉山晋輔 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS