新図書館の建設と耐震改修
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 01:08 UTC 版)
「東京大学総合図書館」の記事における「新図書館の建設と耐震改修」の解説
総合図書館は昭和3年の創建以来、主なものとしては岸本館長と裏田館長時代に2回の大きな改修を行っていて、いずれも収容冊数の増加が図られてきたが、抜本的な解決とはなっていなかった。文学部等の本郷キャンパス内の文系諸学部に置かれた図書室も逼迫していて、書庫増設の要求が上がり続けていた。また、大学図書館に求められる機能もデジタル化の進展、学習機能への要求などに伴って変化が生じていたことから、これらの課題に対応する新たな図書館が求められていた。しかし本館は築90年を経過しているため、多くの既存不適格が存在していて、増築などによる抜本的な改善を行うためには現行の法制度に適合させる必要があることから、歴史的建築における空間を大きく改変しなければならない。ただ増築以外の選択肢を検討するにも、本郷キャンパス内は建て詰まりが著しく、建物を新設できる場所はほとんど存在しなかった。 その中で図書館前広場は、総合図書館に隣接して残された最後の大きなオープンスペースとなっていた。広場の東西に立地する法学部4号館、文学部3号館は地下に図書室を設けているため、これらの図書室との接続を図る上でも、図書館前広場の地下というのは好適な場所であった。地上におけるオープンスペースの確保と図書館の増築を両立するために、新館は図書館前広場の地下に建設することとされた。新館の地下1階には従来の図書館とは異なって活発な議論を行うことができる空間としてライブラリープラザが設けられることとなり、地下2階から4階にかけては300万冊の書籍を保管できる自動化書庫を設置することとなった。また、新館と合わせて本館も耐震改修、機能の改良を図ることとし、これらの計画は「新図書館構想」(具現化に伴いのちに「新図書館計画」)と呼ばれて検討が行われた。 着工前、2013年9月から2014年にかけて図書館前広場の埋蔵文化財調査が行われた。その結果、近代の遺跡としては関東大震災で焼失した旧図書館建物の基礎や、震災に伴う火災による灰と焦土、近世の遺跡としては一帯が溶姫御殿として使用されていた頃の排水溝石組みや井戸、便所などの遺構、その他縄文時代の小ピットや土器片、旧石器時代の石器などが出土した。これらの遺跡のうち、旧図書館基礎と溶姫御殿水路石組みについては、空間の歴史的重層性を象徴する存在として広場のデザインに取り込まれることとなり、前者はその形を活かしてベンチとなり、後者はスライスされて元の位置の地面に埋め込まれた。 新館の建物は2014年(平成26年)12月11日に起工式を行い、翌年4月から本格的な工事を開始、2017年(平成29年)4月下旬には竣工、同年8月には自動書庫の整備も完了した。7月からは本館の改修工事によって不足する閲覧スペースの代替に、学習スペースとして利用に供されることとなった。本館工事の進捗に伴って、2018年(平成30年)10月22日には、当初計画されていた通りの会話ができる学習空間として、ライブラリープラザはリニューアルオープンした。 本館は、当初別館が完成して蔵書を地下書庫に移した後に耐震改修工事を行う予定であったものの、別館建設中の2015年度に図書館西翼を含む図書館団地Ⅱ期工事の予算が通ったために、予定を前倒しして別館建設と同時並行で工事が進められることとなった。2015年度から2016年度にかけてⅡ期工事(西翼)、2016年度から2017年度にかけてⅢ-1期工事(北西部)、2017年度にはさらにⅢ-2期工事(中央部)、2018年度にはⅢ-3期工事(書庫)、2019年度から2020年度にかけてはⅣ期工事(東翼)が行われた。一連の工事は2020年(令和2年)に完了し、11月26日にはグランドオープンの式典が行われた。この工事においては、内部の各室のうち特に歴史性の高い空間(1階記念室、大階段、3階ホール、3階閲覧室)は歴史的価値を尊重することとし、シャンデリアの意匠や吹き抜けの再開口など、創建時の形態への復元も行われた。また、従来第二開架閲覧室として用いられていた4階には、アジア研究図書館が入ることとなり、アジア研究に資する学術資料や蔵書が集められることとなったほか、連携研究機構ヒューマニティーズセンターとU-Parl(アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部)の二つの研究機関が置かれ、本館2階にはグループで利用ができる個室型のプロジェクトボックスが設置されるなど、新たな設備が追加された。
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