新団体設立企図の有無
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 14:37 UTC 版)
「日本ボクシングコミッション事件」の記事における「新団体設立企図の有無」の解説
安河内は従前からJBCの将来的な発展形態として米国各州のアスレチックコミッションのような統括機関のあり方が望ましいとの理想論を持っていたが、日米の制度の根本的な違いから1国1コミッション制が根付いている日本のプロボクシング界に米国の制度をそのまま持ち込んで複数のコミッションを設立することは現実的でなく、日本に馴染まないとの考えであった。日本のプロボクシング界に深く関わってきた安河内は1国1コミッション制が根付いている日本のプロボクシング界の土壌について当然に熟知していたことが推認され、その安河内が有力な支援団体等もなく複数コミッション制を求める一般的な機運等もない中で安易に新コミッションの設立を企図するとは考えがたい。また、JBCの主張によればすでに安河内が新団体の設立を企図して画策していたとされる2013年12月以降の時点で、安河内は、同月7日および8日にはB4に対し「JBCに協力したいのです」と述べて業務の引継ぎやアドバイスをさせてくれるようメールで懇願し、同月19日および27日にはB4に対し、被告の信頼失墜のおそれがあるからと指摘して年末の世界戦を担当させてくれるようメールで懇願し、C1からの誘いには全く取り合わず、2012年2月6日および同月10日にはB3・谷口やB4と面談し、一日も早く通常の業務を行わせてほしいと訴え、同月29日にはB4・谷口に対し、JBCにおける暴力団排除の業務が実質上停滞していることを指摘して同業務を再び担当させてくれるようメールで懇願するなどしており、安河内にJBCを離れる意思があった様子は全くうかがわれない。安河内の考え、経歴や当時の客観的言動等に照らせば、安河内がA1らとともに新団体の設立を企図していたとは考えがたく、全証拠によってもこれを認めることはできない。 「B4、B11及びB5らは、平成23年6月23日、マスコミ向けの記者会見を開き、被告に代わって国内試合を統括する新団体設立の意向を表明するとともに、原告を被告から排除する内容の処分が被告の理事会で出れば被告に再合流することを示唆し、その結果、被告の分裂の危機との報道がされるに至っているところ、上記B4、B11及びB5らによる行動は、まさに被告とは別のコミッションの設立を企図したものと評価し得るにもかかわらず、被告は、B4らの上記行動に対して何らの処分もしていないのであるから、原告についてのみ、[略]断片的な事象を根拠に別組織の設立を企図したものとして原告につき懲戒解雇事由に当たるとするのは、明らかに均衡を欠き、平等原則にも反するというべきである。なお、B4、B11らによる上記新団体の設立に関し、あくまで暫定的なものである旨B11が述べていること[略]に理由がないのは、[略]において述べたとおりである。」 懲戒解雇事由としてJBCが主張する事実はいずれも認めることができないから、それ以外の点について判断するまでもなく、懲戒解雇処分は正当な理由なく行われたものであり無効である。また、懲戒解雇処分の手続に関し、JBCは、「原告及びA2の弁解を聴取したが、いずれも肯けいに当たらず、C1、D1及びC2に対する聞き取り調査を実施する必要がなかった」と主張しているが、2012年6月12日実施の聞き取り調査では、安河内が新団体の設立などJBCが懲戒解雇事由として挙げた重要事項に関してJBCの認識が間違っていることを具体的な理由を説明して反論したのに対し、JBCは基本的にこれを聞き流し、この調査についてB11が「非常にあいまいなもので、参考にできるものが非常に少なかった」と述べ、調査結果の報告を受けたB3が「分からないとか、覚えていないとか、記憶にないとかいうようなことばかりだった」と述べていることなどから、B11らは当初からこの聞き取り調査で安河内の言い分を真摯に受け止める意思がなかったものと推認される。さらに、安河内がJBCに対し、関係者からの聞き取り調査の実施を求めたにもかかわらず、JBCはメールがあること、C2・C1・D1のいずれもJBCのライセンスを持っていないことを理由にこれを実施せず、また、B3とB4は怪文書に添付された写真が週刊誌に載ったことも理由の一つとして勘案した上で懲戒解雇処分を決定していることも考慮すれば、JBCは当初から懲戒解雇相当という結論ありきで安河内に対する聞き取り調査を行ったものと考えられ、懲戒解雇事由について十分かつ慎重な調査を欠いていたといわざるをえない。
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