文明以前・原始から未開へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 15:22 UTC 版)
「家族・私有財産・国家の起源」の記事における「文明以前・原始から未開へ」の解説
本書の概要は三部分に整理することができる。一章から三章までの冒頭はモーガン説と古代の人類史の発展過程の紹介に充てられている。まず、原始の人類社会には新時代が到来し始めていた。 第一章では文明時代への移行の契機が整理されている。人間が動物界から分離したばかりの「過渡的な状態」である「野蛮」から、「未開」をへて、「文明」にいたる、人類社会の発展図を略述した章である。生活技術によって「野蛮」と「未開」に区分し、さらにそのなかを「上位・中位・下位」段階に分ける方法を用いている。契機は採集・漁業・狩猟からなる野蛮段階から技術の取得によって新段階へと移行する発展のなかにあった。人々は土器の製作をおこない家屋を建て定住生活をなす中間段階を経て、牧畜農耕への未開段階へと移行を果たす。この段階で新大陸と旧大陸で主要穀物の相違と家畜類の種特性の相違によって異なる道筋をとり、熱帯や極地を中心に旧型の原始社会に留まる地域が生じた。旧大陸を中心に更に進歩を続けた人類はムラからクニへと社会編成を変えて、金属器の製作技術を高めて灌漑農業や騎乗遊牧生活を拡大させて、肥沃な大河周辺地帯で有史時代への最初の移行を果たした。第二章は、原始的な家族形態を復原して今日の社会における一夫一婦制の起源を明らかにする部分、資本主義の階級社会における一夫一婦制の批判する部分、いかに婦人は解放されるのかという共産主義社会での家族と結婚という三つの部分が書かれている。 第三章では、原始的な家族形態をなすイロコイ族の具体的事例が紹介されている。 イロコイ族などアメリカ・インディアン、インドの部族において現存する家族制度と、血族呼称制度が矛盾している例をとりあげている。家族は社会編成の基本体制であったが、野蛮段階では部族を構成する男性と女性による集団婚であり、誰が子どもの父親であるかが不確定であったため、母系制の共同体を形成していた。しかし、農牧業の発達による富の形成は土地の分割と私的所有をもたらしていく。未開段階に入った人類は、財産となる土地や家畜の所有を戦闘力に優れる男性の権限に移し替えていった。私有財産制度は、実子への財産の継承、即ち世襲原理を可能とするために、母系制の集団婚から父系制の対偶婚へと婚姻制度の変更を余儀なくさせた。ここで「乱婚(無規律性交)→血族婚→プナルア婚→集団婚→対偶婚→父系制単婚」という発展図式を考え、私有財産制度の成立と富の拡大ともに父系制社会への移行が起きたとした。これが画期となって人類は古典古代へと移行していく。エンゲルスは第二章の一節で次のように語っている。 「富が増大するのに比例して、この富は、一方では家族内で男性に女性よりも重要な地位を与え、他方では、この強化された地位を利用して、伝来の相続順位を子(父の嫡子)に有利なように覆そうとする衝動を生み出した。しかしこれは、母権制による血統がおこなわれているかぎり、だめであった。したがって、この血統が覆されなければならなかった。そしてそれはくつがえされた。……。一部は富の増加と生活様式の変化(森林から大草原への移転)の影響のもとに、一部は文明と宣教師の精神的影響から、……、ショーニー族、マイアミ族、デラウェア族では子が父から相続できるように、父の氏族に属する氏族名をつけて、子をこの氏族に移す慣習が拡がっている。……。母権制の転覆は女性の世界史的敗北であった。男性は家のなかでも舵をにぎり、女性は品位を穢され、隷属されられて、男性の情欲の奴隷、子供を産む単なる道具となった。」
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