精神的影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 00:27 UTC 版)
性的虐待を受けた児童は多くが深刻な心的外傷を負う。その症状は、抑うつ、不安、自傷行為、自尊心の欠如である。この原因は性的虐待そのものというよりは、性的虐待の最中に虐待者によって行われる問題の否認・矮小化・ごまかし・責任のなすりつけ・侮辱などの結果であると考えられている。男性の場合怒りや憤り、女性の場合悲しみや抑うつといった感情に最初に気づき、復讐を果たそうと他者に対して虐待を行う男女には特に顕著にこの傾向が見られるが、この怒りは被害者にもある悲しみの感情を誤魔化すためではないかという見方もある。 また、斎藤学 (2001) によると、父親に身体的虐待を加えられ性的な境界侵犯もあった女性が健忘症状を呈した症例において、MRIでは海馬領域の萎縮とグリア性瘢痕化、SPECTでは両側側頭の血流不全が見られたという。 また、臨床では過食症や拒食症の患者も多くいるため、斎藤学などのように摂食障害との関連を指摘する論者もいる。だが、それらに関してはっきりと因果関係が認められている訳ではない。 かつては年齢が低ければ心理的な影響が少ないという俗説が出回っていたが、現在は完全に否定されている。特に5歳以前の場合には親との同一化がさほど起こっておらず強い感情の統制能力と耐久力が備わっていないため、トラウマに対してうまく対処できないために、恐怖や怒りといった感情が一気に自我の調整能力を超えてしまう現象が起こることで知られている。 また、性的虐待を受けた人は男女ともに子どもの自己を迫害妄想的な世界に追いやり、大人の自己はそれらの有害な体験を排除することで統合のまねごとを図ることもある。 性的虐待によって、児童の後頭葉、脳梁の容積が減少する、前頭前野への影響があるなどと言った悪影響が指摘されている。前頭前野の容積減少は、虐待までエスカレートしなくても、強い体罰で発生する。虐待は、発達障害を抱える子供に対して、その増悪因子になる。
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