はい‐らん【排卵】
排卵
一時的不妊(621-5)という用語は、女性の受胎不能が生理的条件の結果ではない場合でも使われる。一般に受胎は排卵 3時前後の2~3日間にのみ起こるから、女性は各月経周期 2の一時期に不妊の期間 1を持つともいえる。受胎(602-1)から分娩後の排卵再開までの不妊の期間は、特に数理的再生産モデルにおいては妊娠不能期間 5と呼ばれるが、これは妊娠状態(602-5)の時期を含むとともに、産後の母乳哺育 4の継続期間によっても左右される。一時的不妊は、無排卵周期 6(すなわち、排卵が起こらない月経周期)の発生あるいは無月経の異常な時期を指して使われることもある。非常に若い女性の低妊孕力 7は普通、思春期不妊 8と呼ばれるが、思春期低妊孕力 8と呼ぶほうが望ましいであろう。
排卵
排卵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/19 08:26 UTC 版)
排卵(はいらん)とは、成熟した卵胞が裂けて卵(正確には卵母細胞)を放出する月経周期の過程であり、生殖に関与している。排卵は発情周期を持つ動物でも起こり、月経周期を持つ動物とは基礎的な部分に多くの違いがある。
注:この記事では主にヒトの排卵について言及する。ヒト以外の排卵については結論で手短に述べる。
概要
ヒトでは、排卵が起きる期間を排卵期といい、正常なサイクルであれば周期の長短の個人差に関わらず排卵から14±2日後に(妊娠が成立していなければ)月経が起こる。言い換えれば、排卵は生理予定日のおよそ14日前頃に起こり、例えば平均的な28日間の周期の人では月経開始から数えると14日目前後にあたる。月経周期の短い女性は月経開始から排卵までの日数が短く、月経周期の長い女性は月経開始から排卵までの日数が長い。しかしながら、in vivo(生体内)の様々な条件によって女性の月経周期は容易に変化しうるため、月経開始日から排卵期までの実際の日数を事前予測するには、もろもろの不確定要素を含む。
ヒトにおいて、隠された排卵とは雌(女性)が目に見える繁殖できるというサインを出さないという事を意味している。何故こう進化したのかを分析できる単語に進化的ゲーム理論がある。
排卵の前に、卵胞は卵子が生きていく為に一連の変形を行なう。この過程が卵丘膨張である。これの後に卵胞へ裂け目ができ、これを通って卵子が卵胞を出る。卵子は卵管へ入って、子宮へ向かって行き、受精をすれば着床し、さもなくば24時間後に退化する。
排卵期の前には、未成熟の卵胞に包まれた卵子が成長を終える卵胞期があり、その後には子宮が受精卵を受ける準備をする卵胞期がある。この卵胞が成長して排卵へ至る全過程が卵胞形成といわれる。
[1]の様な研究で女性の嗅覚は排卵期に最も鋭くなる事が示されている。
必要な出来事
375日間すなわち月経周期約13回をかけた過程を通して、卵巣で眠っていた未成長の原始卵胞が成長して次第に一つの排卵前卵胞が選ばれる。組織学的に排卵前卵胞(成熟グラーフ卵胞または成熟三次卵胞)には放射冠顆粒層細胞に包まれた第一減数分裂前期で止まった卵母細胞、壁性顆粒層細胞、基底膜そして内膜・外膜細胞に挟まれた毛細血管網を含む。卵胞液の入った大きな嚢は卵胞洞と呼ばれる。卵丘顆粒層細胞(または単に卵丘細胞)の「橋」が放射冠・卵子複合体を壁性顆粒層細胞と結んでいる。
単純にいうと、卵胞の機能を促進する為に顆粒膜細胞と卵母細胞の双方向の指令を顆粒層細胞が繋いでいる。研究によって卵胞の指令に特有の因子が解明されたが、これについての考察はこの記事の範囲外とする。
黄体形成ホルモン(LH)の作用により排卵前卵胞の卵胞膜細胞はアンドロステンジオンを分泌し、これは壁性顆粒層細胞にエストロゲンの一種エストラジオールへ芳香環化される。高濃度のエストロゲンは視床下部の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の刺激作用を持つ。このホルモンは今度は下垂体のLHと卵胞刺激ホルモン(FSH)の発現を刺激する。
LHとFSHの高まりが周排卵期の始まりを意味する。
周排卵期
順調な排卵では、卵子は放射冠及び卵丘顆粒層細胞に支持されていなければならない。後者は卵丘膨張として知られる増殖と粘液分泌の段階を通る。その粘液はヒアルロン酸の豊富な混合物で、卵子周辺のベタついたマトリックスに卵丘細胞のネットワークが浮遊している。このネットワークは排卵後も卵子の周辺に残り、受精に必要なものとみられている。
卵丘細胞の増加は同時に卵胞液の量も増加させ、卵胞の直径は20mmに膨張させられる。これが卵巣の表面に水泡状の明確な膨らみを作る。
排卵期
LHによって開始されたシグナル伝達カスケードを通じて、タンパク質分解酵素が卵胞から分泌され、卵巣の表面に出ている卵胞の組織を分解して裂け目を作る。そこから卵子卵丘細胞複合体が卵胞を出て腹腔へ、更に卵管の末端にある卵管采に受け止められる。卵管へ入った後は、卵子卵丘細胞複合体は繊毛の動きにしたがって押されながら子宮への旅を始める。
この時に、卵母細胞は第一減数分裂を終え、二つの細胞―大きな方が全ての細胞質の物質を含む卵娘細胞(二次卵母細胞)、小さな方が不活性な第一極体―に分かれている。第二減数分裂は中期で止まっており、受精までは進行しない。排卵の時に第二減数分裂の紡錘体が出現する。もし受精しなければ卵母細胞は約24時間で退化する。
機能層(functionalis)と呼ばれる子宮の粘膜が最大の大きさに達し、子宮内膜腺を持つが、まだそれは機能していない。
排卵期後
卵胞自体はその寿命を終えるが、卵子なくして、自身を内側へ折り畳み、エストロゲンとプロゲステロンを産生する細胞の集合体である黄体へと変化する。これらのホルモンは子宮内膜腺へ、受精が行なわれれば着床が起こる場所である増殖性内膜の産生を誘発する。残りの月経周期を通じて黄体はこの内分泌作用を続け、月経の間に痕跡組織へ退化する。
臨床的発表
排卵の始まりは様々な医学上の徴候で検出できる。それは肉眼では識別できないが、しかしヒトは隠れた排卵を持つといわれている。
排卵している女性は3日の間に次第に、平均0.2℃の体温の上昇を経験する。体温の上昇は月経周期の終わりを意味する月経の間持続する。さらに排卵時、不快感や痛みを新たに下腹部に感じる―排卵時下腹部症と呼ばれる―女性もおり、これは殆どが腹壁が裂けた卵胞から流れ出た血液と卵胞液に過敏な所為である。最後に子宮頚部の粘膜の構成が精子に適した様に変化する。その粘膜は透明で、伸びやすく、粘着性で生卵の白身に似る。
新しい研究:卵胞波
Baerwaldらによる新たな研究によれば月経周期は卵胞の成長を厳密に前述の様に調節していないらしい。特に28日周期を持つ大部分の女性は2回から3回の卵胞成長の「波」を経験するが最後の波だけが排卵になる。残りの波は排卵にはならず、発達した排卵前卵胞が閉鎖するか(多数の無排卵周期)、または排卵前卵胞が全く選ばれない(少数の無排卵周期)かに特徴付けられる。
この現象はウシやウマで見られる卵胞波に似ている。これらの動物では、同時期に成長を始めた初期胞状卵胞の大集団の成長が卵胞期に一致する。これは内分泌系が卵胞形成を厳密に調節しているのではない事を示す。
この解明への挑戦が近年我々の卵胞発達と月経周期の動態の理解を変え、そしてなぜ理想周期を用いた自然家族計画と産児制限の伝統的な方法がそう効果的でないかを説明するだろう。
特に、この発見により、排卵していないと確信している時でも性交によって妊娠が起こりうるのかは説明されそうである。無論、他の説明に必ずしもそうでないのに14日目に排卵が起こると勘違いしている事もある。
誘発排卵と避妊
経口避妊薬と受胎促進剤の大部分は排卵期に使われる。なぜならこの時期が受胎の最重要な決定要素だからである。ホルモン療法は排卵に正へも負へも干渉でき、月経周期のコントロールをすることができる。
卵胞刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、エストラジオールは精製の研究に成功している。エストラジオールとプロゲステロンの類似体もまた合成されている。なおGnRHはFSHとLHの分泌の上流の誘発物質である。
一般的に、投与されたFSHまたはGnRHは早急に卵胞形成を加速し、排卵を起こして懐胎を可能とする。エストラジオールとプロゲステロンは経口避妊薬の形で、月経周期に関するホルモン水準に影響して卵胞形成と排卵へ負のフィードバックに関与する。
妊孕性と排卵のタイミング
妊娠可能な女性のほとんどは、排卵日の約5日前から排卵日の1日後まで妊娠可能である[1][2]。妊娠を試みてから12ヵ月未満で、女性の年齢が40歳未満のカップルの場合、時間差性交法(排卵を予測する尿検査を用いて排卵のタイミングに合わせて性交すること)が妊娠率および生児出生率の向上に役立つという証拠がいくつかある[3]。ストレスが排卵、受胎可能性に果たす役割、ストレス誘発性無排卵の生物学的基盤の理解、およびコルチゾールの役割については、完全には明らかになっていない[4]。
排卵カレンダーを使って排卵日を管理する女性もいる[5][6]。
排卵抑制
ホルモン複合避妊薬は卵胞の発育を抑制し、排卵を防ぐのが主な作用機序である[7][8]。エストロゲンまたはプロゲストーゲンの排卵抑制用量(OID)とは、女性の排卵を一貫して抑制するのに必要な用量を指す[9]。排卵阻害は抗ゴナドトロピン作用であり、下垂体によるゴナドトロピンであるLHとFSHの分泌阻害によって媒介される。
体外受精を含む生殖補助医療において、経膣的卵子採取が計画されている周期では、排卵後の卵子採取は事実上不可能であるため、通常は排卵抑制が必要である[10][11]。
動物の排卵
興味深い側面をいくつかここに記す:
- ラクダの排卵は雄のフェロモンによって引きおこされる。そのためキャラバンでは雌ラクダが発情しない様に雄を連れていない。
- ニワトリはほぼ毎日排卵する。
- 有袋類の胚には受精後、発生が休止して着床が遅れるものがある。
- ウマは排卵窩でのみ排卵する。
周期排卵動物
種毎の多様な排卵リズムに合わせて雌は発情し、排卵に至る。
交尾排卵動物
周期的な排卵ではなく、雌は雄からの機械的な誘発によって排卵する動物。
雄からの性的刺激(交尾)により、オルガスムスに達することで、視床下部を刺激し、下垂体からLHサージを引き起こす。その結果、排卵に至る。
ネコ、ウサギ、ミンクなど(高橋迪雄 2001)。
関連項目
参考文献
- Baewald AR, Adams GP, Pierson RA. 2004. A new model for ovarian follicular development during the human menstrual cycle. Fertil Steril 80:116-122 Abstract
- Chabbert Buffet N, Djakoure C, Maitre SC, Bouchard P. 1998. Regulation of the human menstrual cycle. Front Neuroendocrinol 19:151-86. Abstract
- Fortune JE. 1994.Ovarian follicular growth and development in mammals. Biol Reprod: 50:225-232
- Guraya SS, Dhanju CK. 1992. Mechanism of ovulation -- an overview. Indian J Exp Biol 30:958-967
- Roberts SC, Havlicek J, Flegr J, Hruskova M, Little AC, Jones BC, Perrett DI, Petrie M. 2003. Female facial attractiveness increases during the fertile phase of the menstrual cycle. Proc Biol Sci: 271 Suppl 5 Abstract
- 高橋 迪雄 「哺乳類の生殖戦略-ヒトの視点から俯瞰する」JRD2001年2月号(Vol.47, No.1)
出典・脚注
- ^ “Can You Only Get Pregnant During Ovulation?”. www.parents.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “The fertile days”. www.profecund.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Timed intercourse for couples trying to conceive”. www.cochranelibrary.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Infertility and cortisol: a systematic review”. www.ncbi.nlm.nih.gov. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Methods for Tracking Your Fertility and Ovulation”. walnuthillobgyn.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Ovulation Calculator”. conceiveplus.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “FSRH Guideline (January 2019, amended October 2023) Combined Hormonal Contraception”. srh.bmj.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Combined estrogen-progestin oral contraceptives: Patient selection, counseling, and use”. www.uptodate.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Ovulation inhibition doses of progestins: a systematic review of the available literature and of marketed preparations worldwide”. www.contraceptionjournal.org. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “In VitroFertilization and Other Assisted Reproductive Technology”. aneskey.com. 2024年9月19日閲覧。
- ^ “What Is ART? (Assisted Reproductive Technology)”. www.motherhoodivf.com. 2024年9月19日閲覧。
排卵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 09:36 UTC 版)
女性は胎児期から、卵巣内に原始卵胞を持っている。平均して12 - 13歳で初経(当初は無排卵月経であることが多い)が起こり、その約1 - 2年後から原始卵胞は毎周期いくつか発達を始め、そのうち成熟の最終段階に至った1個が卵巣から排出されるようになる。この成熟卵子の排出を「排卵」という。排卵された卵子は卵管の先端(膨大部)に拾われる。 毎期の月経開始とともに、卵巣内で次の排卵に向けた卵胞の発育が始まる一方、子宮では月経終了後に再び着床のための子宮内膜を用意して排卵を待つ。個人差はあるが、一般に28日前後を1周期として、排卵が起こる。(⇒卵胞形成)
※この「排卵」の解説は、「妊娠」の解説の一部です。
「排卵」を含む「妊娠」の記事については、「妊娠」の概要を参照ください。
「排卵」の例文・使い方・用例・文例
- 排卵の有無を調べる方法はありますか?
- 子宮後屈があると、排卵痛が痛くなりやすいですか?
- 排卵誘発剤を使っています。
- 排卵がありません。
- 女性は毎月約1回排卵する
- 通常排卵と共に起こる女性の月経周期の妊孕期が基礎体温の上昇に注意することにより推論される自然受胎調節法
- 排卵が月経開始のの14日前に生じると仮定される自然受胎調節法(妊孕期は、彼女のサイクルの10日目から18日目まで広がるとされる)
- 排卵を刺激するのに用いられ多産に関連してきている妊娠促進薬(商標名クロミド)
- 排卵を抑制し妊娠を防ぐためのエストロゲンとプロゲストゲンを含んでいる錠剤の避妊薬
- 排卵(通常月経周期の途中で)の際に感じられる卵巣での痛み
- 米国の生殖に関する生理学者で、プロゲステロンが排卵を妨げるかもしれないという直感が経口避妊薬の開発につながった(1903年−1967年)
- 未成熟もしくは成熟後、妊娠、経口避妊用ピル、子宮機能不全が原因で排卵がないこと
- 女性が排卵するのを止めた状態
- 受精が最も可能となる傾向(排卵前後の7日)月経周期の時間
- 月経周期の中で、排卵の後の後半
- 排卵誘発剤によって多胎妊娠した時に,一部の胎児だけを残し,他の胎児は中絶する手術
- 性交すると,周期的な排卵期でもないのに排卵が起こること
- 排卵が起こる時期
- 女性の排卵を誘発する薬
品詞の分類
- >> 「排卵」を含む用語の索引
- 排卵のページへのリンク