対日請求の再燃と賠償請求裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 06:14 UTC 版)
「日本統治時代の朝鮮人徴用」の記事における「対日請求の再燃と賠償請求裁判」の解説
詳細は「徴用工訴訟問題, 新日鉄株金強制徴用訴訟/朝鮮語版ページ」を参照 韓国は1965年の請求権協定によって対日請求権を放棄したとしてきた。しかし、1991年8月27日、日本の参議院予算委員会で当時の柳井俊二外務省条約局長が「(日韓基本条約は[要出典])いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることができないという意味だ」と答弁。それを受けて、韓国では1997年に朝鮮人強制連行に関連して賠償請求訴訟がはじまった。その後、原告敗訴が続いた。 2002年10月には、日本弁護士連合会が小泉政権に朝鮮人強制連行問題の真相究明と被害回復措置を講じるよう勧告した。 また、朝鮮人強制連行問題は未解決であるとする強制動員真相究明ネットワークが組織され、日韓政府へ働きかけて行った。 2005年の盧武鉉政権以降、対日請求が再燃したが、2009年、韓国政府は日韓請求権協定によって完了したと確認した。 しかし、さらに2012年5月、韓国最高裁(大法院)が「個人請求権は消えていない」と判定し、三菱重工業や新日本製鉄(現新日鉄住金)など日本企業は、徴用者に対する賠償責任があるとした。 2013年2月、富山市の機械メーカー不二越による戦時中の動員に対して、強制動員被害者13人と遺族が計17億ウォン(約1億5000万円)の賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こした。 2013年3月、日本製鐵(現日本製鉄)の釜石製鉄所(岩手県)と八幡製鐵所(福岡県)に強制動員された元朝鮮人労務者ら8人が、新日本製鐵(現日本製鉄)に8億ウォン(約7000万円)支払いを要求してソウル中央地裁に損害賠償請求訴訟をおこした。2013年7月10日、ソウル高裁は判決で新日鉄住金に賠償を命じた。その後、新日鉄住金は上告し、菅義偉官房長官は「日韓間の財産請求権の問題は解決済みという我が国の立場に相いれない判決であれば容認できない」とコメントした。しかし、前記柳井局長答弁にあるように協定自体は個人の請求権を国内法的な意味で消滅させるものではない。1993年5月26日の衆議院予算委員会における丹波實外務省条約局長答弁や、2003年に参議院に提出された小泉総理の答弁書によれば同協定を受けて日本国内で成立した措置法によって請求の根拠となる韓国国民の財産権は国内法上消滅した。実際に日本の裁判所で争われた旧日本製鉄大阪訴訟において、大阪高裁は2002年11月19日の判決で協定の国内法的措置である財産措置法による財産権消滅を根拠に一審原告の控訴を棄却している。この裁判はその後上告を棄却され確定した。大阪高裁が決め手とした財産措置法は日本の国内法であるから、日本法が準拠法として採用されない限り韓国の裁判所を拘束しない。そのため、大阪高裁で決め手となった財産措置法は韓国の裁判所では争点となっていない。 その後、2018年10月30日、韓国大法院は個人的請求権を認めた控訴審を支持し、新日鉄住金の上告を退けた。大法院判決多数意見は、徴用工の個人賠償請求権は請求権協定の効力範囲に含まれないと判断した。これに対し、3人の裁判官の個別意見は、徴用工の個人賠償請求権は請求権協定の効力範囲に含まれるが、両国間で外交上の保護権が放棄されたに過ぎないとした。この中で現在の日本政府の見解を肯定した日本の2007年最高裁判決の事案で問題となったサンフランシスコ平和条約についても言及し、個人損害賠償請求権の放棄を明確に定めたサンフランシスコ平和条約と「完全かつ最終的な解決」を宣言しただけの請求権協定を同じに解することは出来ないとしている。また、2人の裁判官の反対意見は、徴用工の個人賠償請求権は請求権協定の効力範囲に含まれ、かつ、請求権協定によって日韓両国民が個人損害賠償請求権を裁判上訴求する権利が失われたとした。その意見によれば、個人損害賠償請求権自体は消滅していないものの、日韓請求権協定によって外交上の保護権が放棄されただけでなく、日韓両国民が個人損害賠償請求権を裁判上訴求する権利も制限されたため、個人損害賠償請求権の裁判上の権利行使は許されないとのことである。これに対して安倍首相は衆議院本会議において「1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している。この判決は、国際法に照らしあり得ない判断だ。日本政府として毅然として対応していく」と答弁している。 2018年11月29日には同じく新日鉄住金に対して別の徴用工の遺族3人が提訴した訴訟の第二審判決が下される予定である。
※この「対日請求の再燃と賠償請求裁判」の解説は、「日本統治時代の朝鮮人徴用」の解説の一部です。
「対日請求の再燃と賠償請求裁判」を含む「日本統治時代の朝鮮人徴用」の記事については、「日本統治時代の朝鮮人徴用」の概要を参照ください。
- 対日請求の再燃と賠償請求裁判のページへのリンク