大阪市天王寺動物園とは? わかりやすく解説

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天王寺動物園

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/23 01:28 UTC 版)

天王寺動物園
TENNOJI ZOO

施設情報
前身 大阪市立動物園
専門分野 総合
所有者 地方独立行政法人
(2021年3月までは大阪市の直営)
管理運営 地方独立行政法人
(2021年3月までは大阪市の直営)
園長 向井猛
開園 1915年(大正4年)1月1日
所在地 543-0063
大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-108
位置 北緯34度39分2秒 東経135度30分30.2秒 / 北緯34.65056度 東経135.508389度 / 34.65056; 135.508389座標: 北緯34度39分2秒 東経135度30分30.2秒 / 北緯34.65056度 東経135.508389度 / 34.65056; 135.508389
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天王寺動物園
天王寺動物園に保存されているニホンアシカの剥製
アフリカサバンナゾーン NZABI NATIONAL PARK

天王寺動物園(てんのうじどうぶつえん)は、大阪府大阪市天王寺区天王寺公園内にある動物園1915年(大正4年)1月1日に開園した、日本で3番目に長い歴史をもつ動物園。面積約11ヘクタールの園内に、約200種1000匹の動物が飼育されている都市型総合動物園。

2006年7月16日に、総有料入園者数が1億人を超えた[1]。国内では恩賜上野動物園に次いで2番目。

大阪市の直営であったが、2020年12月9日の大阪市会で「地方独立行政法人天王寺動物園への職員の引継ぎに関する条例案」他の議案が可決[2]され、2021年4月1日付けで設立された地方独立行政法人天王寺動物園に移管された。

特徴

天王寺動物園は開園当初から、「動物の研究」と「種の保存」という動物園本来の目的から離れ、商業主義的なレクリエーション性を重視していた。この背景には、阪急宝塚動植物園阪神浜甲子園阪神パーク大軌菖蒲池遊園地など、動物園を併設した遊園地が大阪周辺に相次いで開業したため、「動物を見せること」以外の付加価値をもって対抗する必要があった。

その代表が1932年に来日したチンパンジーの「リタ」(愛称:リタ嬢)で、三輪車竹馬に乗ったり、フォークナイフを使って食事をするなどの芸を披露し、一躍人気者となった。しかし第二次世界大戦中には軍服ガスマスク姿などで戦意高揚の広告塔となった一方で、同園でも空襲に備えた動物たちの殺処分戦時猛獣処分)が行われた[3]。これらのことをふまえ、現在同園では動物に芸を仕込むことは一切行っていない。

開園翌年から、春は夜桜、夏は納涼のため、夜間開園を1937年まで実施していた[4]。戦後も、珍獣の「ライガー」や「タイゴン」づくりなど、「レクリエーション施設」としての客寄せに取り組んでいた[5]

このような商業路線は1970年代まで続いていたが、現在は、ドリル[6]の飼育展示を日本で唯一行っているほか、シシオザルクロサイ、ツル類、ニホンコウノトリホオアカトキヨウスコウワニなどの希少動物の繁殖に力を入れるなど、動物園本来の姿に転換している。特にナベヅルについては、飼育繁殖実績があることから、国際血統登録を担当している。

また、大阪ドームの建設候補地に挙げられたことに端を発する「ZOO21計画」が1990年代後半から推し進められ、以後、動物の生息地の環境を可能な限り再現した生態展示に切り替わった。これまでに、爬虫類生態館「アイファー」、日本初の水中観察プールを有するカバ舎やサバンナの環境を再現したサイ舎を含む「アフリカサバンナゾーン」、アジアゾウを飼育しているタイの国立公園を再現した「アジアの熱帯雨林ゾーン」を開設し、展示環境は一新された。

2006年11月3日 - 11月5日に行われた「絶滅の危機にある動物展」で、保存されている絶滅したニホンアシカ剥製が、初めて一般公開された。

主な展示施設

アフリカサバンナゾーンと周辺エリアの動物
鳥のセカイと周辺エリアの動物
アジアの熱帯雨林ゾーンとふれんどしっぷガーデンと周辺エリアの動物
鳥の楽園ゾーンと周辺エリアの動物
現在建設中・建設予定の施設
  • 新ホッキョクグマ舎 - 南園に建設予定。オスとメスを分けて飼育できる施設になる予定。2025年オープン予定[14]
その他の施設
  • TENNOJI ZOO MUSEUM
    • 標本展示コーナー - 天王寺動物園で飼育していたアジアゾウのユリ子の全身骨格標本と半身のレプリカ展示、絶滅の危機にある動物種の剥製や解説を展示
    • 見せる(魅せる)収蔵庫 - 普段は見ることができない天王寺動物園所蔵の剥製標本(約280点)の一部を、一面がガラス張りとなっている収蔵庫に配置し、定期的に入れ替えながら展示
    • だいしんワクワクホール - 講演や大規模スクールの開催が可能な定員240名のスクリーンを備えた多目的ホール
    • その他 - 動物に関する子ども向けの図書を中心としたキッズライブラリーや、ワークショップ等の開催が可能な実験・作業室、多目的室等がある
  • FooZoo・GooZoo
    • FooZoo - 当園のキリンの柄を模したキリンドッグや、「ディッピンドッツ」のホッキョクグマクレープ等、天王寺動物園オリジナルメニューが楽しめる
    • GooZoo - 日本では天王寺動物園でのみ飼育されているキーウィのぬいぐるみ等のオリジナルグッズが購入できる
    • 授乳室 - 幼児用ベッドや給湯器等を備えた授乳スペース

再生に向けたプラン

天王寺動物園は、戦前の1934年度(昭和9年度)に有料入園者数が年間250万人を超えるなど、古くから東京の上野動物園と並ぶ都市型動物園として認知されてきた。1972年度(昭和47年度)から中学生以下が入園無料になったことで有料入園者は減少したが、翌1973年度の総入園者は335万人を数えた。

その後、入園者数は減少に転じるが、「アフリカサバンナゾーン」がオープンした2006年度は約184万人[15](有料入場者数は68万1,934人[16])、2007年度は約194万人と増加。その後再び減少に転じ、2010年度は約120万人、2013年度には約116万人まで落ち込んでいる。

2013年4月から、従来無料だった大阪市外の小中学生の入園料を有料とするなど、開園100周年となる2015年に向け、集客を増やすための計画が進められた。その結果、2014年には約136万人、2015年には約173万人と見事なV字回復を見せた[17]

ZOO21計画

野生動物の種の保存や環境教育に貢献する、新しい動物園のあり方を確立するための計画で、古くなった動物舎を生態的展示の施設に建て替えることが主な目的である。

1995年(平成7年)に大阪芸術大学教授の若生謙二主導の下、爬虫類生態館「アイファー」、1997年(平成9年)にカバ舎、1998年(平成10年)にサイ舎を開設。2000年(平成12年)には「アフリカサバンナゾーン草食動物エリア」、2004年(平成16年)1月31日には「アジアの熱帯雨林ゾーン」、2006年(平成18年)9月には「アフリカサバンナゾーン肉食動物エリア」が開設され、従来の系統分類展示型から環境デザインが一変した。

2007年6月には入場者数を増やすためビジネスパートナーを初めて公募、150社を超える多数の企業が関心を示した[15][16]

天王寺動物園101計画

2016年7月21日、天王寺動物園の新たな改革案として、「天王寺動物園101計画」の素案が発表された[18]。20年の長期計画で施設の整備も進めていく予定である。

チンパンジーの脱走事件

2007年4月16日、オスのチンパンジーのプテリが、健康診断のために麻酔をしたが、効き目が不十分で逃げ出し、ホッキョクグマ舎に逃げ込んだ。ホッキョクグマとは諍いは起きず、獣医により麻酔銃で眠らされて捕獲された。当日は休園日であり入場者はいなかった[19]

2023年10月17日もメスのチンパンジーが脱走して急遽臨時休園措置が取られた。

交通

てんしばゲート
地下街あべちか」を出てすぐのところにある天王寺公園「てんしば」内を通り徒歩数分程度に位置する。
新世界ゲート

周辺施設

出典

  1. ^ 山下, 覚「入園者1億人突破」『なきごえ』第42巻第8号、天王寺動物園、2006年8月、2023年3月2日閲覧 
  2. ^ 議決等案件事項一覧”. 大阪市会. 2020年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月2日閲覧。
  3. ^ 戦中の殺処分、悲劇伝える 天王寺動物園で剥製展示」『中日新聞』2022年8月2日。オリジナルの2022年8月20日時点におけるアーカイブ。2022年8月2日閲覧。
  4. ^ 現在は、閉園時間1時間延長を行っている時期有り。夜間開園は2015年8月に復活。
  5. ^ 若生謙二、「近代日本における動物園の発展過程に関する研究」『造園雑誌』1982年 46巻 1号 pp.1-12, doi:10.5632/jila1934.46.1, 日本造園学会
  6. ^ ドンちゃんのクリスマス”. 天王寺動物園 スタッフブログ (2016年12月26日). 2019年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月2日閲覧。
  7. ^ https://www.tennojizoo.jp/information/20190/
  8. ^ https://www.tennojizoo.jp/information/19955/
  9. ^ a b 向井猛「【園長は獣医さん】天王寺動物園が生まれ変わる 新しい獣舎計画が続々」『産経WEST』2021年4月24日。2023年3月2日閲覧。
  10. ^ 新施設「ふれんどしっぷガーデン」がオープンします』(プレスリリース)天王寺動物園、2022年4月14日https://www.tennojizoo.jp/information/8696/2023年3月2日閲覧 
  11. ^ https://www.tennojizoo.jp/blog/33479/
  12. ^ 西村, 慶太「鳥の楽園 ~素晴らしくてむずかしいバードケージ~」『なきごえ』第48巻第7号、天王寺動物園、2012年7月、2023年3月2日閲覧 
  13. ^ https://www.tennojizoo.jp/information/15828/
  14. ^ https://www.tennojizoo.jp/message/director/
  15. ^ a b “天王寺動物園が民間企業のお知恵拝借!”. 日刊スポーツ. (2007年5月10日). オリジナルの2007年11月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071130125529/http://osaka.nikkansports.com/news/p-on-tp6-20070510-196533.html 2014年8月13日閲覧。 
  16. ^ a b “天王寺動物園ビジネスに150社関心…19日公募説明会 ユニークな発想わくわく”. 読売新聞 (Seesaa). (2007年6月10日). オリジナルの2007年6月10日時点におけるアーカイブ。. http://park-management.seesaa.net/article/44424255.html 2014年8月13日閲覧。 
  17. ^ 天王寺動物園101計画』(PDF)(レポート)天王寺動物園、2016年7月、9-1頁https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/cmsfiles/contents/0000375/375448/siryou2-2_101honpen.pdf2023年3月2日閲覧 
  18. ^ 『天王寺動物園101計画』について』(プレスリリース)大阪市 建設局公園緑化部調整課、2020年5月26日https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000383054.html2023年3月2日閲覧 
  19. ^ チンパンジーが「脱走」/休園日の天王寺動物園」『四国新聞』2007年4月16日。2023年3月2日閲覧。

関連項目

外部リンク




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