創作者の告白
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熊本県の『熊本日日新聞』(熊日新聞)が、2017年12月19日付の1面コラム「新生面」で『万歳三唱令』を取り上げたところ、創作者を名乗る匿名の手紙が届いた。差出人は「正萬会議事務局」で、県内郵便局の消印があり、文面によれば長く県内に住んでいるという。手紙によれば、『万歳三唱令』は筆者とその仲間が創作したもので、1985年頃に行われた職場の月例ゴルフコンペの打ち上げにて、1人が突然右足を踏み出して万歳したところ、それが「面白い万歳」として仲間内で流行し、さらに周囲からの問い合わせが続いたため文書化し、「どうせやるなら尤もらしく」と文案を練り上げていったという。『万歳三唱令』が全国に広まったことに対しては、「国会図書館その他関係諸機関にご迷惑をお掛けしたことを少なからず反省」と述べる一方で、「全く悪気はなく、酒席の最後を盛り上げる一発芸と位置付けていた」と弁明していた。 2018年1月23日、熊本市中央区の「びぷれす熊日会館」にて、『万歳三唱令』創作者を名乗るグループで熊本市と合志市に居住する当時60〜70代の元公務員の男性3人組(以下A、B、C)が『熊日新聞』の取材に応じたことで、同文書が生まれた経緯が明らかになった。 彼らの証言によれば、『万歳三唱令』誕生の最初のきっかけは、Aが1985年前後に職場の定例ゴルフコンペ後の宴席にて、ふらふらと立ち上がり変な格好で万歳を行った人物を見たことにある。次いでAがそれを真似つつ、右足を前に出しながら両腕を挙げるという、後に『万歳三唱令』に記される方式で「万歳」を行うようになると仲間から好評を博したため宴会の終わりには必ず行うようになり、ゴルフをやらずに「万歳」だけを見たり行ったりするためだけに宴会に出席する者も現れるようになった。その後、職場を異動したAは、環境の変化もあって「万歳」を披露する機会をしばらく失っていたが、平成に入った1989年頃にとある研修に参加していた折、「あまりに暇だったので、万歳三唱令というものを作ってみよう」と思いつき、西南戦争後に出されたという設定で太政官布告の体裁をとり、『断髪令』や『廃刀令』に続く『明治三大布告』にしようという構想の下にその文章を練り始めた。そして同時期にAはBとCと知り合って親交を結び、3人は「正しい萬歳三唱を普及する国民会議」(正萬会議)を称し、その初代事務局長にはAが就任した(2代目事務局長はB)。彼ら正萬会議は『万歳三唱令』の作成に連携して当たったが、特に1990年代初め、AとBは東京出張の合間を縫って国立国会図書館を訪れ、明治時代の太政官布告の実物を閲覧し、その成果として文中の「条」の字を旧字の「條」にするなど細部にこだわりを見せるようになっていった。そして、「やるからには、できるだけもっともらしくしよう」と3人はさらに改定を重ね、最終的に『太政官布告 萬歳三唱令』と『萬歳三唱実践に関する勅令』が出来上がった。3人は職場が近かった熊本市健軍界隈を手始めに、Aは主に熊本市内、BとCはそれぞれの転勤先である久留米市内、鹿児島市内の飲み屋などで『万歳三唱令』の「普及活動」に努めた結果、実演をせがまれたり、指導を請われたりすることが増えていった。3人はそのたびに『万歳三唱令』や『勅令』の紙面を手渡すと同時に「酒の席以外では絶対にやっちゃダメだぞ」と必ず付け加えていたが、文書が繰り返しコピーされ全国に流通する過程で、口頭の注意は忘れ去られていった。そして1999年、共同通信が『万歳三唱令』に関する問い合わせが国立国会図書館に相次ぎ、同館が「うっかり信じないで」と呼び掛けているという内容の記事を配信し、『熊日新聞』や鹿児島県の『南日本新聞』、一部の全国紙にも掲載されたことで正萬会議に転機が訪れた。関係機関に迷惑をかけたという反省に加えて、『万歳三唱令』が「不幸の手紙のように広がった」と報じられたことにショックを受けた3人は、これを機に正萬会議としての活動を停止し、文書も封印したという。 上記の取材に立ち会った佐藤達哉は、噂の発信元が分かることは非常にまれで、日本国内では1例しか知られていないことを挙げ、『万歳三唱令』のように文書を介して広がる噂は「文書流言」と呼ばれるが作者本人が分かった例としては初めてではないか、「世界的に重要な発見…かもしれない」と指摘し、一連の創作活動を行った正萬会議に対しては、面白い動作の「万歳」を文書化するのみならず、それを『万歳三唱令』と名付けて明治三大布告に位置付けようとしたそのユーモアセンスと知性に驚かされ、本物の太政官布告を調査して様式を整えるという緻密さにも脱帽せざるを得ないと肯定的な評価を示している。
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