ランの依頼元と報酬について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 00:26 UTC 版)
「シャドウラン」の記事における「ランの依頼元と報酬について」の解説
シャドウランの典型的な依頼元は、ミスター・ジョンソンという偽名の企業工作員であるとされる。ランナー達はフィクサーを経由し、各企業のミスター・ジョンソンから依頼を請ける。 シャドウランナーに対する報酬は通常、現代の電子マネーに当たる「クレッドスティック」によって支払われる。これは第六世界の21世紀中盤以降の世界において、現金の文化はほとんど廃れているためである。クレッドスティックにはIDや個人照合用の様々な機能が付随しているが、個人識別用のIDを持たないランナーに対して支払われるのは、“支払い保証済み”のクレッドスティック(サイン記入済みの小切手のようなもの)である。 複合企業体が過度に発達した第六世界では、大企業同士のシェア争いがプロの工作員同士の暗闘によって解決されるほど顕著に暴力化している。そのような時勢にあって、「足が付かず、個人識別用のIDを持たない 、いついかなる時でも否認可能な人材(deniable asset)を起用することで、大企業はメディアや政府に攻撃されることなく、その勢力を確実に伸張させることができる。その否認可能な人材として、シャドウランナー達は任務に抜擢される。 無論、企業だけがシャドウランナーの能力を独占しているわけではない。犯罪組織や特定の団体・組織(営利/非営利問わず)、その他ある程度の資産を持った個人がシャドウランを依頼することも少なくない。 一方、その特性と世界観上、シャドウランナーを裏切り、使い捨てにする企業や依頼人は公式に提供された諸作品でも頻繁に登場し、必ずしも信用できる存在ではない。作中世界においても「祖母と食事に行くにもバックアップを用意して裏取りをしろ」と評されているほどである。 ただしあくまでも使い捨てる事が「容易である」というだけで、依頼人側が毎回必ずランナー達を裏切って処分する事は、そのリソースやリスクの問題から非現実的である事も度々示唆されている。 例えば第4版ルールブックに掲載された小説『バズキル』では、依頼人(ジョンソン)ではなくその助手が個人的事情で裏切った結果、シャドウランナー達に報復されている。またルールにおいてもプレイヤーキャラクターが保持するコンタクト(コネクション)は、その忠誠値の範囲内なら裏切る事がないと保証されている(反面、強固な忠誠を持つコンタクトは逆にPC側からも裏切れず、窮地に陥っていれば助けなければならないが)。またルール上、裏切りを働いたキャラクターには悪評が立ち、交渉が不利になっていくため、悪名高い依頼人がランナーを雇うことは(そのランナーが裏取りをする限りにおいて)困難である。そして逆に裏切りを働くランナーに持ち込まれる依頼は、極めてきな臭いものとなりがちである。 加えて企業にとってランナーは道具であり、もはや必要不可欠な存在となっている。自社に損害を与えたランナーを処分したところで既に対立企業が利益を得ているという状況は変わらず、またランナーの根絶が不可能な以上、口封じにせよ報復にせよ、事後に行っても意味がないというのが現状である。そのため一部の大都市ではYouTuberのような動画配信者によるシャドウランの撮影が半ば公認されており、各企業が(被害を受けたとしても)自社の宣伝につながるとしてコマーシャルに利用している。またルールブック掲載小説でもリアリティ番組の一貫としてシャドウランナーの実録番組を撮影する一幕が描かれている他、シャドウランナーを題材にした映画やコミック、ゲームなどのフィクションも盛んに発表されている。 ただしこういった世情は、シャドウランが容認されているという事を意味するものではない。現場におけるランナーの排除による損害阻止は絶対であり、社内目標として「シャドウランナーの生還率ゼロ」を掲げている企業も存在する。口が軽かったり余計なことに首を突っ込んだり無関係な犠牲を出しすぎたり、やりすぎた結果(あるいは杜撰な計画や行動ばかりで"やりすぎなかった"結果)、消息を絶ったランナーは数え切れないとされる。また依頼人側にとってもランナーを庇ったりすることはよほど親密でなければありえず、わざわざ口封じこそしなくとも、ランナーの生死を気にする事は少ない。さらには被害者たちから賞金のかけられたランナーを残酷に処刑する秘密結社なども暗躍しており、人々からヒロイックに扱われるとしても社会的には職業犯罪者であり、依頼人にとっては使い捨てられる人材であることに変わりはない。 また依頼人が意図せずキャラクターに不利益を与えるような依頼(例えばランの標的がキャラクターの身内であったなど)を持ち込んだり、社会的正義に沿わない依頼(幼い子どもを誘拐するなど)が出され、依頼受諾後に事態が判明するケースも多々存在する。そのためランナーたちはしばしばランを遂行すべきかジョンソンを裏切るべきか、あるいは自分の道徳心と依頼達成の両立を目指すべきか悩まされることになり、リプレイ『ビギナーズ・バッドラック』ではそのような状況に陥ったランナーの葛藤が描かれている。 第5版ではこうした事から「社会的正義に沿わない依頼」は金銭的報酬が高い一方でカルマ(経験点)報酬が低く、「人情や仁義に従う依頼」は金銭的報酬が低いかわりにカルマ(経験点)報酬が高くなる、といった調整がなされている。これはどちらが正解というのではなく「金さえ貰えば何でもするプロフェッショナルとしてのランナー」も、「金銭に拘らず困っている人を助けるヒーローのようなランナー」も、どちらのプレイスタイルも尊重できるシステムとなっており、ランナーというのは時としてその両方の側面を持つのだということは公式小説などで過去幾度となく提示されている。
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