まつ‐かれは【松枯=葉=蛾】
マツカレハ(イメージ)
マツカレハは幼虫をマツケムシと呼ぶことが多い。成虫は翅の開張が雌で70~90mm、老熟幼虫の体長は約70mm。幼虫は背面が銀灰色で腹面は金色、背面に藍黒色の長い毛を密生する。胸部の毛には毒針毛を備える。
タケノホソクロバはタケケムシと呼ばれることがある。成虫は翅の開張が20mm、全体的に黒褐色をしている。老熟幼虫は体長27mm程度、全体的に黄褐色から淡黄褐色を呈し、環節に4個ずつ黒いこぶがある。このこぶから毒毛が生えている。
庭のマツを手入れしている際や竹やササの葉を触った時などに、誤ってケムシに触ってしまうと、刺される。
幼虫は球状の部分を持った毒針毛を持ち、毛が刺さると球状部分が割れて毒液が出る。幼虫に触れると毒針毛が刺さり、患部を掻いたり触ったりすると激しい痛みを感じ、次いで患部がじん麻疹のように赤く腫れ、かゆみが10日~3週間続く。
成虫は無害である。
マツカレハは年1回の発生で、越冬した幼虫は4月頃から活動し始め、6月頃まで活発に活動する。6月~10月に成虫が出現し、マツの樹上に数百の卵を産み付ける。夏~秋に孵化した幼虫は、10月末頃になると樹皮の間等に集団で潜り込み越冬に入る。
タケノホソクロバは竹や笹から発生し、幼虫は5~9月頃に見られ、蛹で越冬する。成虫は黒い小さな蛾であるが、幼虫は毒針毛を持っている。竹や笹の葉の裏に産み付けられた卵から孵化した幼虫は、当初集合して生活するが、成長すると次第に分散し、終令幼虫のころには一枚の葉に1頭程度の密度となる。
マツカレハ
和名:マツカレハ |
学名:Dendrolimus spectabilis Butler |
チョウ目,カレハガ科 |
分布:北海道南部以南日本全土に分布 |
写真(上):マツカレハ成虫(左:雌,右下:雄) |
写真(下):マツカレハ幼虫(左)と樹幹上に産まれた卵塊(右下) |
説明 アカマツ・クロマツなど全てのマツ属と,カラマツ・ヒマラヤスギを加害する。被害面積は,1975年までは数万haにおよんでいたが,近年は減少しているが,マツ材線虫病の防除の影響とみられる。成虫は雌で開張85mm内外,雄65mm内外であるが,色彩とともに個体差が大きい。卵は長さが2mm程度の長楕円形で淡赤褐色から青白色をしている。幼虫は脱皮が進むと黄褐色から黒褐色となり,個体差が大きくなる。全体に剛毛を生じ,胸部第2,3節背面の黒藍色の刺毛が目立つ。体長は大きいものでは90mmになる。繭は灰色から灰褐色で幼虫の刺毛がついている。普通年1回の発生である。茨城,京都,兵庫,高知,熊本,福岡,鹿児島などでは年2回発生する地域もある。年に2回発生する地域では複雑に生態となっている。年1回発生する生活史の場合,7月から8月に成虫が発生し,幼虫で越冬し,翌年の7月に蛹になり,成虫となるという経過を示す。この場合,春先の被害が大きくなる。産卵は針葉に卵塊状に産まれる。1卵塊の卵数は100〜300個である。雌1頭の産卵数は200〜600個である。孵化した幼虫は周囲の針葉の片側だけを食害することから,針葉が赤変する。早期発見の目安となる。幼虫はマツケムシと呼ばれる。この時期の幼虫は口から糸をはいて落下し移動する。2齢以降の幼虫は針葉を完全に食べる。繭は樹上や下草に作られる。被害が激しい場合枯損にいたることがある。食害量が多ければ枯損しない場合にも成長に影響をあたえる。本種の天敵についてはよく調べられており,補食性の鳥類,寄生性昆虫21種,微生物等がある。 |
松枯葉蛾
マツカレハ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/21 23:31 UTC 版)
マツカレハ | ||||||||||||||||||||||||
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マツカレハ♀
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Dendrolimus spectabilis (Butler, 1877) |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
マツカレハ |
マツカレハ(学名:Dendrolimus spectabilis)は、チョウ目カレハガ科に属する昆虫である。幼虫はマツケムシと呼ばれることがある[1]。日本全国およびシベリア、樺太、朝鮮半島に分布する。
特徴
成虫は通常年1回、6月から10月(最盛期は7月から8月)に出現する[1][2]。成虫は茶褐色で翅(はね)に白の斑紋があるが、個体差が大きく斑紋がないものもある[1]。その年に伸びた針葉に100から300の塊状の卵を産卵する[1]。
産卵後約1週間でふ化し、集団でマツ類の針葉の片側だけを鋸歯状に食害する(食害を受けた葉は赤変する)[1]。幼虫は1回脱皮すると分散し、マツ類の基部まで食害するようになる[1]。
寄生植物はアカマツ、クロマツ、チョウセンマツなどマツ属、カラマツである[2]。
10月頃に針葉さらに樹幹から根際や樹皮の割れ間などに移動し、若齢幼虫として越冬する[1][2]。その後、3月から4月頃に再び針葉上に移って食害し、針葉上、枝、幹などで蛹化する[1]。
老熟幼虫は、体長約60ミリで頭部は暗褐色、胴部は銀から黄褐色で、全体に黒色長毛があり、背中の一部に毒毛をもつ[1]。
被害
森林への被害
時には大量発生し、食害により地域の森林が大規模に枯損するほどになることがある。
1919年以降、樺太でマツカレハの食害が顕著となり、4年間で8800万石が被害に遭った[3]。
また、1924年には樺太の大泊湾一帯で大量発生。一夜にして数百町歩の森林が食い荒らされたとの記録も残る[4]。
毛虫皮膚炎
幼虫は全体に黒色長毛があるが[1]、背中の一部に黒藍色(藍黒色)の毒毛(毒針毛)をもち、刺されると激痛を生じ腫れ上がる[1][2]。
防除
新梢上の針葉の卵塊を見つけてつぶす物理的方法がある[1]。薬剤としてはスミパイン乳剤やDDVP乳剤などを使用する方法があるが、薬剤の効果は若齢幼虫で高く、老熟幼虫では効果が劣るとされる[1]。
日本では伝統的にマツの幹の胸高付近に藁でできた「こも」を巻くこも巻きが行われてきたが[1]、害虫防除効果は僅かで、むしろ益虫に越冬場所を提供する効果が指摘され、益虫を集めて殺すことにならないよう、こもの処理には十分な配慮が必要とされた[5]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “マツカレハ”. 長野県林業総合センタ- ミニ技術情報. 2024年10月22日閲覧。
- ^ a b c d “公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル”. 環境省. p. 12. 2024年10月21日閲覧。
- ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』p333 河出書房新社 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
- ^ 上野金太郎編『北洋材十年史』1970年 全国北洋材協同組合連合会 p.34 記録編
- ^ 新穂千賀子,中居裕美,村上諒,松村和典. “姫路城のマツのこも巻き調査(2002年-2007年)”. 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨. 2024年10月21日閲覧。
固有名詞の分類
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