フランス語圏と英語圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 06:18 UTC 版)
「モントリオール」の記事における「フランス語圏と英語圏」の解説
モントリオール島(英語版)内は中心部(ダウンタウン)を境に東部と西部によって言語が分かれている。中心部(ダウンタウン)ではフランス語が主体であるものの、英語も幅広く多く使われている。また、通りの名前などもフランス語圏と英語圏の呼び名があり、目抜き通りのサント・カトリーヌ通り(Sainte-Catherine)はフランス語圏の読み方で、英語圏ではセント・キャサリン通りとなる。しかし、東部へ行くほど完全なフランス語圏になり、地下鉄Berri-UQAM駅(英語版)周辺のカルチエ・ラタン地区(英語版)やサンドニ地区(英語版)では英語を聞く機会はかなり少なくなる。一方、ダウンタウンから西側に向かうウエストマウント、ノートル=ダム=ド=グラース(英語版)(NDG)、ハンプステッドやコート・サン・リュックといった西部はフランス語よりも英語が主体に使われている。そのさらに西側には住民の半数以上は英語を母語とする英語圏であるウエストアイランド(英語版)と呼ばれる地域にはイギリス系、アイルランド系、スコットランド系住民が多く住む緑豊かで閑静な住宅街が広がる。 なおモントリオール島外はオンタリオ州に向かう東側(ヴォードライユ=スランジュ地域)や南岸(グリーンフィールドパーク、シャトゲ、先住民居留区のカナワク等)の一部を除いてほぼフランス語圏であり、英語の通用度は低くなる。 公用語はフランス語のみ ケベック州の公用語はフランス語のみであり、原則的にフランス語表記が義務付けられている。したがって通説でモントリオールは仏語、英語の二言語都市と紹介されるがこれは厳密には間違いである。 地下鉄のアナウンスなどもフランス語でしか行われない。案内板などでも英語は併記されていないことが多く、道路標識もすべてフランス語のみである。モントリオール市自治体でも住民サービスは基本的にフランス語のみで行われる。英語のみが店舗名や広告看板などで使われることも禁止されているので、英語を目にする機会は話されている割合に比べるとずっと少なくなっている。これは、ケベック州のフランス語社会を守る法律が適用されているためであり、移民も基本的にはフランス語社会への統合・同化が求められる。就職においても仏語の習得が最低条件となっている。英語での住民サービスは限定的であるため、長期的に滞在する場合はフランス語の習得は不可欠となっており、政府による無償のフランス語教育プログラムが充実している。これらは、仏語が理解できない移民やカナダの他州出身者、外国人にとっては不便に感じるが、ケベック州で育った英語系住民も高齢者層を除きフランス語に堪能であるために問題はないとされる。 英語の使用 公用語はフランス語のみであるが、行政区分上でモントリオール市に属さない英語圏の地区(ウエストマウント市など西部の市)では、道路標識に英語併記がされている場合が多くなり、英語での行政サービスが行われており、2002年にモントリオール島内が単一自治体に統合された後の2006年の再離脱は言語の問題が理由とされる。中心街においても、世界中から留学生やビジネスパーソンの集まるマギル大学やコンコルディア大学のある周辺以西の地域ではフランス語よりも英語を聞く機会が多くり、中心街や英語圏地域に住む場合はフランス語の知識がなくても苦労しない。 静かなる革命によるフランス語憲章が制定される前の1960年代までは、モントリオールの中心部では英語が主体であり、経営者や管理職(イギリス系)の言語は英語で企業内での使用は英語に限定されており、フランス語は労働者(フランス系)の言語であった。現在、法律による規制から街中に英語のみによる看板はほとんど見られないものの、特に旧市街のビルの古い広告看板などは大きく英語のみで書かれていたり、消された跡が残っていることから、古い建物にはその時代の名残が見受けられる。 学校教育においても、フランス語と英語の学校に分かれているが、英語圏出身者やその移民(厳密には英語が母語であるか、英語で初等・中等教育を受けたものに限るなどの詳細な規定がある)は英語を教授言語とする学校に入ることができるが、フランス語圏出身者や非英語圏出身の移民はフランス語で教育を受けることが義務付けられている。例外的に短期滞在者のみ、非英語圏出身者であっても英語で教育を受けることが可能であるが、その場合もたいていの学校でイマージョン教育が行われているので、フランス語で授業を受ける時間が多くなっている。なお、大学などにはこの規定は適用されないため、英語系であるマギル大学などは全体の2割近くがフランス語を母語とする学生である。 このような政策の結果、1970年代より英語系住民は州外へ流出し、フランス語色が強くなった。1960年代まではドイツ、ポーランド、イタリア、ギリシャ、ポルトガル等を中心とした移民の言語は主に英語に統合されていたが、その後の移民の出身国は旧フランスやベルギーの植民地であったフランス語圏が中心となってきている等移民受け入れにおいてもフランス語化が進められており少子化によりフランス系住民の減少が進む中、移民によってフランス語社会を維持していけるかどうかが大きな課題となっている。また、非フランス語圏からの移民、特に中国人などの東洋系やインド人などの南アジア系移民は、より同胞コミュニティ規模の大きいトロントなど他州へ再移住する人も少なくない。これは、ケベック州の移民審査基準が他州に比べると緩いからと言われている。
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