トヨタ・ダイナミックフォースエンジン
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ダイナミックフォースエンジン シリーズ |
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A25A-FXS(カムリ)
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生産拠点 | トヨタ自動車 |
製造期間 | 2017年6月 - |
タイプ | M15A型 - 1.5L - 直列3気筒 DOHC 12バルブ G16E型 - 1.6L - 直列3気筒 DOHC 12バルブ M20A型 - 2.0L - 直列4気筒 DOHC 16バルブ S20A型 - 2.0L (中国市場用) - 直列4気筒 DOHC 16バルブ T24A型 - 2.4L - 直列4気筒 DOHC 16バルブ A25A型 - 2.5L - 直列4気筒 DOHC 16バルブ F33A型 - 3.3L (ディーゼル) - V型6気筒 DOHC 24バルブ V35A型 - 3.5L - V型6気筒 DOHC 24バルブ |
トヨタ・ダイナミック・フォース・エンジンとはトヨタ自動車のトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)戦略の下に開発されたエンジンのシリーズ。
開発コンセプト
高効率、低燃費を徹底的に追求すると同時に、ダイレクト感があり、滑らかで気持ちの良い加速性能を目指し、走りと環境性能を両立させるエンジンとして、トヨタ社内で放置されていた膨大な量の基礎研究やレース[注釈 1][1]で得た知見を詰め込んで開発された。基本的には現在流行のダウンサイジングコンセプトよりも『ライトサイジングコンセプト』の考え方であり、自然吸気を主眼としている[2]。
具体的には空気吸入量の増大のためのタンブル流(縦渦)の改善を主眼に、
- 1) バルブ挟角の拡大
- 2) ボア・ストローク比のロング化
- 3) ポート端部形状の変更とシート内径の拡大
- 4) 新D-4S(マルチホールインジェクター)の採用
などにより「高速燃焼」を実現した[3]。
元々トヨタは2010年代に入ってから、既存のNR型やZR型、KR型などにタンブル流を意識した改良を施して40%あるいはそれに近い燃焼効率を達成していた[4][5]が、ダイナミックフォースエンジンは基本設計からタンブル流を重視して開発されている点が大きく異なる。特にバルブ挟角は冷却損失低減のために狭くするのが定石の中、タンブル流のためにあえて広げているのは画期的な点といえる[6]。
こうした工夫により、カムリのハイブリッドモデルに採用されたM25A-FXSでは最大燃焼効率41%を記録した。またエンジンのみのグレード(いわゆるコンベンショナル[注釈 2]モデル)においても従来型を大きく凌ぐ低燃費を実現している[注釈 3]。
開発生産においてもTNGA戦略に基づく完全新設計となる。これまで排気量や各国の規制対応に比例して膨大な数になったエンジン規格を整理し、燃焼形式・共通形状の部品・生産工程のモジュール化・相似形化を増やした上で、1気筒あたり排気量500 ccを基本として気筒数を増減することで車両サイズに対応し、生産性の向上と経費削減を図る、いわゆる『モジュラーエンジン』である。
ダイナミックフォーススポーツエンジン
- ダイナミックフォース・スポーツ・エンジンは、ダイナミックフォースエンジンのスポーツ版として開発されたエンジンの呼称である[8]。ダイナミックフォースエンジンと同様の効率の良さを持ち、それがパワーを引き出すことにつながっているとされる。
- 2020年の東京オートサロンでの世界初公開に先駆け、世界ラリー選手権(WRC)に参戦するヤリスをベースとするスポーツカーとして位置付けられているGRヤリスのプロトタイプに、M15A型に排気量拡大とボールベアリングターボチャージャーを組み合わせて強大なトルクとパワーを叩き出す拡張を行った直列3気筒 1.6リットルターボエンジンを搭載していることが2019年12月に公表され[8]、2020年1月10日に開幕した東京オートサロン2020にて、形式は「G16E-GTS」と発表された[9]。
型式命名規則
- このダイナミックフォースエンジンシリーズから、エンジン型式命名規則も変更されている。
-
参考例 『 G 16 E - G T S 』 G 『原動機シリーズ記号』: ボアストローク比、気筒容積、コンセプト、等にちなんだ記号。 16 『排気量』: この場合は 1600 cc を意味している。 E 『異種原動機区分記号』: 同じシリンダーブロックでの開発順を示している[注釈 4]。
この場合は、アルファベット順の5番目の『 E 』なので『同一シリンダーブロックでの(ベースの”M15A型”から数えて)5番目の派生エンジン』を意味している。 決して『 G 』形式としての順番ではない。 - ハイフン 前 の記号は 『シリンダーブロックの形式』 (広義のエンジン型式)、
ハイフン 後 の記号は 『シリンダーブロックに付随した装備』(類別記号)を示している。 G バルブ機構を示している。 この場合は 『可変バルブ搭載 高効率型スポーツ用ツインカム』 を意味している。 ※ その他の記号 F 『可変バルブ搭載 高効率型実用ツインカム』 T 過給器装備等の出力に関わるものを示している。 この場合は『ターボチャージャー装備』を意味している。 ※ その他の記号 K 『コンベンショナル用[注釈 2] 高膨張比サイクル(ミラーサイクル) 仕様』 X 『ハイブリッド用 高膨張比サイクル(ミラーサイクル) 仕様』 S 対応燃料種別または 燃料供給式を示している。 この場合は『 D-4 (筒内直接燃料噴射装置)装備 』を意味している。 ※ その他の記号 E 『EFI (電子制御式燃料噴射装置)装備』 B 『E85 エタノール燃料・ フレックス燃料対応』 V 『コモンレール式燃料噴射装置装備』(ディーゼル)
系譜
- エンジン型式一覧の自動車用エンジンの系譜を参照。
年表
- 2022年7月 - デュアルブーストハイブリッドシステムとしてターボとHVを組み合わせたT24A型[15]発表。
- 2024年〜 - G16E-GTSをベースに形式TGE33としてスーパーフォーミュラ・ライツ(F3)に、M20A-FKSをベースに形式TMA43としてFIA-F4選手権に、それぞれワンメイクエンジンとして採用された。いずれもトヨタのセミワークスチームでありエンジンコンストラクター・チューナーであるTOM'Sが手掛けている。
バリエーション一覧
-
- 『 1 PS = 約 0.98632 HP = 約 0.7355 kW 』
- 『 1 kgf・m = 約 7.23301 lbf・ft = 約 9.80665 N・m 』
M15A型
Dynamic Force Engine 1.5 , 【 M15A型 】 | ||
種類 | 直列3気筒 , DOHC 12バルブ | |
排気量 | 1,490 cc | 約 497 cc × 3 |
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80.5 × 97.6 mm | |
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1:1.212 |
M15A - FKS
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M15A - FXE
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M15D - FXE (インド)
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- M15A型 エンジン シリーズ ギャラリー
G16E型
Dynamic Force Sport Engine 1.6 , 【 G16E型 】 | ||
種類 | 直列3気筒 , DOHC 12バルブ | |
排気量 | 1,618 cc | 約 539 cc × 3 |
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87.5 × 89.7 mm | |
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1:1.025 |
G16E - GTS
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- G16E型 エンジン ギャラリー
M20A型
Dynamic Force Engine 2.0 , 【 M20A型 】[19] | ||
種類 | 直列4気筒 , DOHC 16バルブ | |
排気量 | 1,986 cc | 約 497 cc × 4 |
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80.5 × 97.6 mm | |
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1:1.212 |
M20A - FKS
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M20A - FXS
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M20A - FKB (ブラジル)
- ブラジルでのアルコール燃料対応エンジン
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- M20A型 エンジン シリーズ ギャラリー
S20A型
Dynamic Force Engine 2.0 , 【 S20A型 】 ※ 画像募集中 |
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種類 | 直列4気筒 , DOHC 16バルブ | |
排気量 | 1,997 cc | 約 499 cc × 4 |
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85.0 × 88.0 mm | |
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1:1.035 |
S20A - FTS (中国)
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T24A型
Dynamic Force Engine 2.4 , 【 T24A型 】 | ||
種類 | 直列4気筒 , DOHC 16バルブ | |
排気量 | 2,393 cc | 約 598 cc × 4 |
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87.5 × 99.5 mm | |
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1:1.137 |
T24A - FTS
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- T24A型 エンジン ギャラリー
A25A型
Dynamic Force Engine 2.5 , 【 A25A型 】[20] | ||
種類 | 直列4気筒 , DOHC 16バルブ | |
排気量 | 2,487 cc | 約 622 cc × 4 |
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87.5 × 103.4 mm | |
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1:1.182 |
A25A - FKS
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A25A - FXS
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A25A - FKB (タイ)
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A25B - FXS (中国)
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- A25A型 エンジン シリーズ ギャラリー
F33A型
Dynamic Force Engine 3.3 , 【 F33A型 】 (ディーゼル) ※ 画像募集中 |
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種類 | V型6気筒 , DOHC 24バルブ | |
排気量 | 3,345 cc | 約 558 cc × 6 |
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86.0 × 96.0 mm | |
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1:1.116 |
F33A - FTV
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V35A型
Dynamic Force Engine 3.5 , 【 V35A型 】 | ||
種類 | V型6気筒 , DOHC 24バルブ | |
排気量 | 3,444 cc | 574 cc × 6 |
|
85.5 × 100.0 mm | |
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1:1.17 |
V35A - FTS
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- V35A型 エンジン ギャラリー
関連項目
- トヨタ自動車
- トヨタのエンジン型式命名規則
- トヨタのエンジン系列名
- トヨタのエンジン型式一覧
- トヨタの自動車用エンジンの系譜
- トヨタの可変バルブ機構
- トヨタの燃料直噴機構
- トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー
- トヨタ・ハイブリッド・システム
- トヨタの電動機型式一覧
- トヨタ自動車の車種一覧
- トヨタのレーシングカーエンジン一覧
- トヨタ自動車のモータースポーツ
- デザクセ
- GR_(トヨタ自動車)
- トヨタ・カムリ
外部リンク
- 公式ウェブサイト - トヨタ自動車公式企業サイト
- 公式ウェブサイト - トヨタ (日本)
- 公式ウェブサイト - レクサス (日本)
- 公式ウェブサイト - 北米トヨタ
- 公式ウェブサイト - 北米レクサス
- 公式ウェブサイト - ブラジルトヨタ
- 公式ウェブサイト - ブラジルレクサス
- 公式ウェブサイト - 欧州トヨタ (ベルギー)
- 公式ウェブサイト - 欧州レクサス (ベルギー)
- 公式ウェブサイト - 中国トヨタ
- 公式ウェブサイト - 中国レクサス
- 公式ウェブサイト - 広汽トヨタ
- 公式ウェブサイト - 天津一汽トヨタ
- 公式ウェブサイト - アジアトヨタ (タイ)
- 公式ウェブサイト - アジアレクサス (タイ)
- 公式ウェブサイト - シンガポールトヨタ
- 公式ウェブサイト - シンガポールレクサス
- トヨタ・グローバル・ニュースルーム
- TOYOTA「ダイナミックフォース エンジンetc.」の魅力 早わかり(グーネットマガジン)
脚注
注釈
- ^ 高速タンブル流を実現するためのレーザークラッドバルブシートが一例
- ^ a b c 「コンベンショナル」(英語:conventional) とは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、電気モーターを使用しないエンジンを指す場合に使われ、トヨタにおいては「非HV」「非PHV」を意味している[7]。
- ^ 例えば車重1,330 kg・2WDのカローラクロスの1.8L車(2021年9月 - 2023年10月発売モデルの2ZR-FAE型バルブマチックエンジン)はWLTCモード総合14.4 km/Lなのに対し、車重1,570 kg・4WDのRAV4(M20A型)は15.2 km/Lと上回っている
- ^ 「M15A型」が、4番目の派生形式であるM15”D”型まで存在し、同じく「M15A型」の派生型である「G16E型」は、ベースとなった「M15A型」の5番目の派生形なので、アルファベット5番目の「E」となっている。
- ^ 馬力#仏馬力 - ドイツ語の Pferdestärke(馬の力)の頭文字。
- ^ 馬力#英馬力 - 英語の Horsepower の頭文字。
- ^ キロワット
- ^ 重量キログラム・メートル
- ^ 重量ポンド・フィート
- ^ ニュートン・メートル
- ^ ヤリス(日本仕様)がベース
- ^ ヤリス(日本仕様)がベース
- ^ ヤリス(欧州仕様)がベース
- ^ 2020 - 2023 年
- ^ 2022 - 2023 年
- ^ 2024 年 -
- ^ カムリ OEM
- ^ RAV4 がベース
- ^ RAV4 PHV OEM
出典
- ^ 「トヨタ・新型プリウスが搭載する4気筒2.0Lエンジン[M20A]」『MotorFan』株式会社 三栄、2023年1月2日。
- ^ 『Motor fan illustrated vol.155 図解特集 第5世代エンジン』三栄書房刊、2019年8月10日。ISBN 9784779639722。
- ^ トヨタ自動車株式会社 2016年12月5日 Dynamic Force Engine( トヨタ自動車株式会社 2016年12月5日〜) - YouTube
- ^ 「トヨタ、熱効率38%などを達成した新型アトキンソンサイクル低燃費エンジン説明会」『Car Watch』株式会社インプレス、2014年4月11日。
- ^ 「新型「プリウス」は目標燃費40km/lをどうやって達成するのか」『Monoist』アイティメディア株式会社、2015年10月14日。
- ^ 「内燃機関超基礎講座」『MotorFan』株式会社 三栄、2021年5月28日。
- ^ 「エンジンはなくなるのか?---「ほぼゼロにする」というトヨタ発表の真意」『日経BP』日経クロステック (xTECH)、2016年11月15日。
- ^ a b 「【試乗インプレ】トヨタ、「GR ヤリス プロトタイプ」。市販予定、WRCに直結した3気筒 1.6リッターターボのスーパー4WDマシン」『Car Watch』株式会社インプレス、2019年12月20日。
- ^ 「【速報】トヨタは272PS/370Nmの「GR ヤリス」世界初公開。First Editionは396万円から」『Car Watch』株式会社インプレス、2020年1月10日。
- ^ “TOYOTA、カムリをフルモデルチェンジ-TNGAに基づきプラットフォーム、パワートレーンなどすべてを一新、意のままの走りと美しいデザインを実現-”. トヨタ公式グローバルニュースルーム (トヨタ自動車). (2017年7月10日)
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 「トヨタ、新型「ヤリス」世界初公開。12月中旬国内発表、2020年2月中旬発売 TNGAの「GA-Bプラットフォーム」に新開発1.5リッターエンジン搭載」『Car Watch』株式会社インプレス、2019年10月16日。
- ^ “TOYOTA、新型車GRヤリスを初公開”. ガズーレーシングニュースリリース (TOYOTA GAZOO Racing). (2020年1月10日)
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “新型ランドクルーザーを発売”. トヨタ公式グローバルニュースルーム (トヨタ自動車). (2021年8月2日)
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “LEXUS、新型「NX」を発売”. トヨタ公式グローバルニュースルーム (トヨタ自動車). (2021年10月7日)
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “新型「クラウン」を世界初公開-第1弾として新型クラウン(クロスオーバー)を2022年秋頃に発売-”. トヨタ公式グローバルニュースルーム (トヨタ自動車). (2022年7月15日)
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “Maruti Grand Vitara SUV Homologated – 10 Variants, GVW 1,755 Kgs”. RushLane(PEARL DANIELS). Copyright (C) 'RUSH LANE' (2022年9月7日). 2025年8月24日閲覧。
- ^ “Toyota opens TNGA assembly line at Bidadi plant”. Team-BHP(Tushar Kelshikar). Team-BHP (2022年8月2日). 2025年8月24日閲覧。
- ^ “トヨタ、インドの工場で開所式を実施”. トヨタ企業情報. トヨタ自動車 (2000年3月17日). 2025年8月24日閲覧。
- ^ “新型「直列4気筒2.0L直噴エンジン」-Dynamic Force Engine(2.0L)-”. トヨタ公式サイト. トヨタ自動車 (2018年2月26日). 2025年8月24日閲覧。
- ^ “新型「直列4気筒2.5L直噴エンジン」-Dynamic Force Engine-”. トヨタ公式サイト. トヨタ自動車 (2016年12月6日). 2025年8月24日閲覧。
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