アンチコンピュータ戦略
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「コンピュータチェス」の記事における「アンチコンピュータ戦略」の解説
コンピュータチェスの実力が人間のトップクラスに追いつき、さらにそれを追い越したと評価されるようになっても、コンピュータチェスに独特の弱点、落し穴はいくつか知られており、こうした穴を突く「アンチコンピュータ戦略」も人間対コンピュータの勝負では試みられてきた。 1997年のカスパロフ対ディープブルーでは、序盤の定跡を外して未知の局面に持ち込めば、定跡通りに指させるよりもディープブルーの力を落とすことができると考えたカスパロフが、第3局でイレギュラーなゲームの入り方をしたが、有利な先手を持ったにもかかわらず引き分けに終わった。 2008年3月15日に行われたヒカル・ナカムラ(世界ランク46位、レーティング2670)とRybkaの対局では、ナカムラが一切の攻撃の意思を見せずひたすら手待ちを続けることで、Rybkaに「自らが優勢である」と錯覚させて無理な動きを誘発させ、途中で一気の反撃に転じて勝利した。この弱点をついたために、この対局は271ムーブ(チェスでは先手後手の2手をセットで1ムーブとしてカウントするため、将棋式では542手)の長期戦となった。
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アンチコンピュータ戦略
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「コンピュータ将棋」の記事における「アンチコンピュータ戦略」の解説
「稲庭将棋」というソフトウェアは対コンピュータ将棋に特化した作戦を行う。これは、基本的には自陣の歩を動かさず、守備に駒を配置したあとはひたすら手待ちして相手の時間切れを目指す戦法である。人間にとっては簡単に打開できる駒組みでも、コンピュータにとっては読む手順が難しい穴となっていることによる。稲庭将棋が出場した当時の世界コンピュータ将棋選手権は時間切れ負けで秒読みが無いため、有力な戦法となった(後に「持ち時間10分で切れたら1手10秒以内」→「持ち時間10分で1手指すごとに10秒加算」と変化し、この戦法で勝つことはできなくなっている)。2010年の第20回世界コンピュータ将棋選手権での「独創賞」は、新しい技術や工夫、面白い趣向を凝らして選手権を盛り上げたプログラムとして、丸山スペシャルをさらに進化させて実装し、コンピュータ将棋の弱点をあらわにした「稲庭将棋」が選出された。 第2回将棋電王戦開催記念イベント「ニコニコ本社(原宿)で誰でもGPS将棋に挑戦! 勝てたら賞金100万円!!」で、ponanza開発者の山本一成が前述の稲庭将棋の戦術を使ってGPS将棋の無理攻めを誘う作戦(山本曰く「400手以上攻めないで待ってると、無理に攻めてくるバグを見つけた」)を取ろうとした。あまりにも時間がかかり、順番待ちの人が対局できなくなるために、明文化はされていなかったが、勝又清和の裁定によって引き分けとなった。なお、その後のイベントでは256手目まで指して決着がつかなければ引き分けなどのルールが明文化されている。 その他、通常あり得ない手を指すことにより、考察する分岐を省いて計算するコンピュータにバグのような挙動をさせることができる。基本的に同じ挙動をするコンピュータでは、相手に応じて指し手を変化させることのできる人間には不利になってしまう戦法である。 第2回将棋電王戦第5局の総括インタビューで三浦弘行は「事前の研究で、GPS将棋の弱点には気づきませんでしたか?」と質問されて「明らかな癖などは見つかりませんでした。でも逆に、それでよかったと思っています。もし見つかっていれば、そこを衝くべきかどうか思い悩んだでしょうから。弱点を衝いて勝ったとしても、それで勝ったといえるのかというところがありますので。ただ団体戦だから、本当はやりたくなくてもそうすべきだという考え方もありますし・・・難しいところです」と答えている。 高見泰地は「(自分が電王戦の対局者だったらどうするかとの問いに)まず貸し出されたソフトで本番と同じ環境・時間設定にして同じ作戦を試して、どのくらいの確率で使えるのか、もちろん研究はしますね。ただ使えたとしても、やはり『ハメ手』ではあるので、今回のような一発勝負のイベント対局ではいいと思うんですが、電王戦では(プロとしての)自尊心の問題も出てくると思います。難しいですね」と答えている。 電王戦FINALの第二局において永瀬拓矢がSeleneに対し「2七角不成」という通常あり得ない手を指した。ソフトウェアは角、飛、歩が成らない局面を省くことで探索効率を上げており、こういった手を指し、ソフトウェアに一から計算させることで持ち時間を使わせることができる。この対局の場合はSeleneに角不成を認識できないバグがあり、王手放置によって反則負けとなった。この時、開発者は事前にバグを認識できていなかった。 電王戦FINALの第五局において阿久津主税があえて自陣に隙を作ることでコンピュータの「2八角」を誘いAWAKEに勝利した(開発者による投了)。この戦法は、ponanza対策として以前から知られていた戦法の一つであり、コンピュータ将棋が短期的には有利と評価されても、長手数後に不利になることを読めない(計算コストの問題からその前に探索を打ち切る)ことに基づくコンピュータ将棋共通の弱点(水平線効果)を突いたものである。対局前に弱点は明らかになっていたが、プログラムの修正は認められていなかった。
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