『明治文学史』とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 『明治文学史』の意味・解説 

『明治文学史』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 07:48 UTC 版)

亀井秀雄」の記事における「『明治文学史』」の解説

『明治文学史』(岩波書店2000年)の最も顕著な特徴は、文学史考察する上で歴史主義的・年表的な思考方法意識的に排されている事である。なお、この著書は、1995年アメリカコーネル大学大学院において行った講義基づいたのである承前仕事の中で、亀井は、作品の内容テーマ時代状況等と関連させて説明する実証的方法〉を取らず、常に、言語表現それ自体焦点当ててきた。亀井が自らの方法を〈表現論〉〈表現史〉と呼んできたのは、そのためである。だが、一方で時代〉という大きな枠組み先験的な前提としていたことは否定できない講義テーマ決めにあたりコーネル大学は、「近代的文体形成中心とする文学史」を希望してきた。 1980年代から90年代にかけての欧米圏における日本学流行テーマは、〈日本における近代的な文体言文一致体)の形成であった。その根底には、「言文一致体による日本語統一国民国家創出のための国家的文化戦略」という図式がある。 だが、亀井は、その要望を容れつつ「日本明治期小説とその文体について、読者作者文体物語構造などどのようにからみあいながら変化していったか」に焦点合わせその変遷たどっている。 例えば、三遊亭円朝の「怪談牡丹灯籠」の速記本は、従来言文一致運動研究にとっては落とすことの出来ない事項であるが、亀井は、その事について、〈テクスト生産〉という観点に基づき速記術という新テクノロジーや、速記記号文字化する際の速記者関与にも視点を拡げている。また、怪談牡丹灯籠」の〈文〉における漢字振り仮名との独特な関係に注目し、〈読者リテラシーへの配慮〉や〈読者生産〉という問題にまで考察及ぼしている。 亀井1986年シカゴ大学で「日本言文一致運動に関する講演行った。その講演の中で彼は、自分基本的な見方を「日本における言文一致試みは、端的に言えばlinguistic capital言語的資本)を高め運動だったと思う」と説明したところ、多く聴衆賛同的な反応示した、と述べている 。なお、この際の〈linguistic capital高める〉という言葉意味するところは、言語学習効果economy)と、階層的地域的な流通circulation)と、言語等価交換equivalent exchange)の三点において機能的な質(quality)を高めることであった亀井は『明治文学史』の中で、新しテクスト生産システムの中で言語どのように表現的な質(quality)を高めていったかを論述した亀井このように先の図式に基づく〈文体史〉を批判し文化的文学的な事象日本近代史に関する大きな物語(グランド・ナラティヴ)に回収還元してしまう歴史主義的なやり方避け歴史年表含まない表現史〉を試みたその意味亀井の『明治文学史』は、〈文学史そのもの批判した文学史と言えるが、それが従来文学史超えて自立的な文学史なり得るためには、言語表現それ自体歴史を描く方法を持たなければならない。そのため、亀井は、文体内に取り込まれ新たな記号による〈内面〉の生産や、風景描写視点位置変遷を追う等の観点方法導入することにより、この課題応えている。 さらに最終章では、田山花袋の『田舎教師』を取り上げ、この作品どのようにして物語自身のためのグランド・ナラティヴを作り出しているかを分析し、「作品自体が語る自分文学史」を描きうる可能性示した

※この「『明治文学史』」の解説は、「亀井秀雄」の解説の一部です。
「『明治文学史』」を含む「亀井秀雄」の記事については、「亀井秀雄」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「『明治文学史』」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「『明治文学史』」の関連用語

『明治文学史』のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



『明治文学史』のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの亀井秀雄 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS