「第一列島線」構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:47 UTC 版)
「中国人民解放軍」の記事における「「第一列島線」構想」の解説
「第一列島線」を参照 米議会諮問機関「米中経済安全保障見直し委員会」年次報告書は2011年11月16日、中国が東アジアにおける有事の際、奇襲攻撃や先制攻撃で米軍の戦力を低下させ、日本周辺を含む東シナ海までの海洋権益を支配する戦略を中国軍は持っていると指摘した。また中国軍は、指揮系統をコンピューターに依存する米軍の弱点を突く形でサイバー攻撃を仕掛ける作戦や、南シナ海や東シナ海での紛争では対艦弾道ミサイルや巡航ミサイルによって、九州―沖縄―台湾―フィリピンを結ぶ第一列島線を規準に防衛戦線をとり、かつ米軍等を含む他国の介入を阻害する作戦があるとも指摘した。 第一列島線はもともと1982年に鄧小平の意向を受けて、中国人民解放軍海軍司令官・劉華清(1989年から1997年まで党中央軍事委員会副主席)が打ち出した構想で、2010年までに第一列島線内部(近海)の制海確保をし、2020年までに第二列島線内部の制海権確保をし、2040年までに航空母艦建造によって、米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止し、米海軍と対等な海軍を持つというものであった。 2011年12月25日の日中首脳会談では、中国側が中国包囲網を切り崩すために懐柔するとみられ、実際、日中で高級事務レベル海洋協議の開設と海上捜索・救助協定(SAR協定)の締結で合意した。なお12月17日(発表は19日)には北朝鮮の金正日書記の死去をうけて、周辺諸国は緊張していた。 2012年1月5日、オバマ大統領は5日、アジア太平洋地域での軍事的なプレゼンスを強化する内容の新国防戦略「米国の世界的リーダーシップの維持と21世紀の国防の優先事項」を発表した。新戦略文書では中国とイランを名指し、サイバー攻撃やミサイル開発などの非対称的手段で米国に対抗していると指摘、中国について軍事力増強の意図の透明化を求めたうえで、オバマ大統領は演説で「第二次大戦やベトナム戦争の後のように、軍を将来への準備もない状態にする失敗は許されない。米軍を機動的かつ柔軟に、あらゆる有事に対応できるようにする」と述べ、米国が安全保障を主導する決意を示した。これに対して中国政府系メディアは警戒感を示した。 2013年5月、中華民国総統であった李登輝は、「(中国は)周辺国への内政や領土干渉を繰り返すことによって、自分たちの力を誇示しているのである。こうした中国の動きを説明するのに、私は『成金』という言葉をよく使う。経済力を背景に、ベトナムから西沙諸島を奪い、南沙諸島でフィリピンが領有していた地域に手を出し、そして日本領土である尖閣諸島の領海、領空侵犯を繰り返す中国は、札束の力で威張り散らす浅ましい『成金』の姿そのものである」と中国を批判しつつ、中国人民解放軍は、陸軍には覇権を拡張する道がないため、海軍を強化することに努めているが、日本の同盟国であるアメリカ軍を恐れているため、現在のところ尖閣諸島に軍事侵攻する可能性は低いが、尖閣諸島周辺の領海・領空侵犯を繰り返して日本に揺さぶりをかけて、日本が怯んだ隙に、尖閣諸島の「共同管理」を突破口にして、太平洋に進出することを狙っており、従って中国による尖閣諸島の「共同管理」の申し出は断固拒絶すべきであると述べている。
※この「「第一列島線」構想」の解説は、「中国人民解放軍」の解説の一部です。
「「第一列島線」構想」を含む「中国人民解放軍」の記事については、「中国人民解放軍」の概要を参照ください。
- 「第一列島線」構想のページへのリンク