オクラ 生産

オクラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 15:26 UTC 版)

生産

日本の平成24年度における全国作付面積は799ヘクタール (ha) 、年間国内出荷量は11,224トン (t) であり、主な生産地は鹿児島4,383 t(39%)、高知1,946 t(17%)、沖縄992 t(9%)、熊本898 t(8%)、宮崎523 t(5%)である[16]。また、国内出荷量が減る冬季を中心にタイフィリピンなどから輸入している。

人間との関わり

紀元前から食べられていたと言われるβ-カロテンビタミンB群が豊富な緑黄色野菜で、やわらかいうちの未熟果を食用にする[17]エジプトインドでは古くから重要な野菜で、用途も多い[11]。日本では夏野菜の一つに数えられ、主な旬は夏場(7 - 9月)と言われているが、ハウス栽培や東南アジアからの輸入品もあり通年出回っている[17][6]。食味はクセがなく特有の風味があり[5]、切ったときに出る粘り成分はペクチンムチレージである。胃腸の調子を整えたり、夏バテ防止に役立つ健康野菜と評されており、刻んで生食するほか、サラダ、和え物、天ぷら、スープ、ソテー、煮込み料理、炒め料理などに使われる[17][7]

鮮度の良いおいしいオクラの見分け方は、果実基部のヘタや萼の周辺に黒い斑点がなく、全体に濃い緑色で、産毛がしっかり生えているものが良品である[17][6]。また果実が大きすぎると熟しすぎて固くなってしまい、味が落ちる[17]

栄養

オクラ 果実 生[18]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 126 kJ (30 kcal)
6.6 g
デンプン 正確性注意 1.9 g
食物繊維 5.0 g
0.2 g
飽和脂肪酸 (0.03) g
一価不飽和 (0.02) g
多価不飽和 (0.03) g
2.1 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(7%)
56 µg
(6%)
670 µg
チアミン (B1)
(8%)
0.09 mg
リボフラビン (B2)
(8%)
0.09 mg
ナイアシン (B3)
(5%)
0.8 mg
パントテン酸 (B5)
(8%)
0.42 mg
ビタミンB6
(8%)
0.10 mg
葉酸 (B9)
(28%)
110 µg
ビタミンC
(13%)
11 mg
ビタミンE
(8%)
1.2 mg
ビタミンK
(68%)
71 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
4 mg
カリウム
(6%)
260 mg
カルシウム
(9%)
92 mg
マグネシウム
(14%)
51 mg
リン
(8%)
58 mg
鉄分
(4%)
0.5 mg
亜鉛
(6%)
0.6 mg
(7%)
0.13 mg
マンガン
(23%)
0.48 mg
他の成分
水分 90.2 g
水溶性食物繊維 1.4 g
不溶性食物繊維 3.6 g
ビオチン(B7 6.0 µg
有機酸 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[19]。廃棄部位: へた
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

オクラは、刻んだ時にぬめぬめした粘り気が出るが、この粘り気の正体は、主に水溶性食物繊維ペクチンと植物性糖タンパク質のムチレージである[17][6]。ペクチンは、血糖値の上昇を抑制したり、便通をよくする作用がある[17][6]。またムチレージは、脂肪や悪玉コレステロールの吸収を減らす効果をもっているといわれ、胃の粘膜保護、タンパク質の消化吸収を助ける働きがある[17][6]。ペクチン以外の不溶性食物繊維も豊富に含まれ、便秘を改善して、大腸がんリスクなどを抑制するといわれている[5]

他の栄養素としては、β-カロテンビタミンB1ビタミンB2ビタミンCカルシウム葉酸食物繊維などが豊富に含まれるため、夏バテ防止、便秘下痢に効く整腸作用などが期待できる[17][6]

調理

果実の表面に細かい産毛があり、そのままでは口当たりが悪いので塩をまぶしてこすり取ると口当たりが良くなる[17][6]。生でも食べられるが、茹でるときは固めに仕上がるように、熱湯に入れてから手早く冷水に取って冷ますと、鮮やかな緑色で茹で上がる[17][6]。果実の基部にある角張った部分(萼がついている場所)は苦味があるので、丸ごと使う場合は面取りするように削り取って使う[17]

加熱調理をしても栄養素があまり失われない特徴を持っているが、茹でると水溶性のぬめり成分が減少するため、粘り気の効果を期待して料理に活かすのであれば、生食のほうがよい[5]。粘り気を出して料理に活かすためには、包丁で細かく刻んだり、たたいたりして、オクラの組織を破壊するようにする[17]。また少し加熱することでも粘りは出てくるが、加熱しすぎると栄養分が損なわれてしまうので、軽くゆがいて細かく刻んだほうが、他の食材ともなじみやすくなる[17]

粘り気を外に出さないように、莢のままやさしく加熱する料理もある。また、穀粉と一緒に加熱する、酸味の水に漬ける、先に油通ししておくなど、粘り気を抑えるための調理法がある[20]

料理

日本では、生あるいは軽く茹でて小口切りにして粘り気を出し、醤油鰹節味噌などをつけて食べることが多い。他にも、煮物天ぷら炒め物酢の物和え物、汁の実、すりおろすことによってとろろの代わり、納豆の薬味、サラダなどの利用法がある[5]。花蕾を収穫して、天ぷらにしてもおいしく食べられる[7]

インドグジャラート州では、輪切りにしたオクラをひよこ豆の粉(ベサン besan)と炒めたビンディ・ヌ・シャーク (bhindi nu shāk) という料理があり、南インドには、炒めたオクラをヨーグルトで和え、で炒めた香辛料で香りをつけたヴェンダッカイ・タイール・パチャディ (vendakkai thair pachadi) という料理がある。

パキスタンから中東北アフリカ西アフリカ西インド諸島では、輪切りにしてトマトと煮込み、ご飯にかけて食べることが多い。

キューバでは、煮込み料理にする他、ピラフのようにと炊き込む。ブラジルバイーア州には、オクラ、タマネギ、干しえびラッカセイまたはカシューナッツを煮込んで作る「カルル・ド・パラ英語版」(caruru)というソースがある。

アメリカ合衆国では、南部の料理によく用いられる。北部ではオクラ特有の粘り気が嫌われることが多く、21世紀現在でもあまり栽培されていない。南部ではスープの具にしたり、輪切りにしてコーンミールトウモロコシの粉)をまぶして揚げたり、ピクルスにする他、オクラをベーコンと米と一緒に炊き込んだ、リンピン・スーザン (Limpin' Susan) というピラフのような料理もある。ルイジアナ州クレオールケイジャン料理では、ガンボ (gumbo) と呼ばれる煮込み料理にとろみをつけるのに、オクラが使われることが多い。オクラを入れたスープもしばしばガンボ・スープと呼ばれるが、これはフランス語の「ゴンボ」(gombo) が英語に導入されガンボとなったものである。なお、「ゴンボ」は「オクラ」を意味するアンゴラ語の「キンゴンボ」(ki ngombo) もしくは中央バントゥー語の「キゴンボ」(kigombo) に由来する。ちなみにオクラのことを、キューバでは「キンボンボ」(quimbombó)、プエルトリコでは「キンガンボ」(guingambó) と呼ぶ。

ベトナムでは、大振りのオクラをスライスしたものを、ヤギ肉の焼き肉と一緒に焼いて食べる。

西アフリカでは、細かく刻んだオクラをヤシ油で煮込んだソースを、米やフフなどの主食につけて食べる。

加工食品として、ソースケチャップ原材料としても用いられる。種子は煎じてコーヒー代用品として飲まれた歴史がある。

保存

収穫後は鮮度が落ちて固くなって風味が落ちるため、なるべくその日のうちに使い切るのが理想とされる[8]。5℃以下で低温障害を起こすので、保存するときはラップやポリ袋に入れて冷蔵保存するようにするが、もともと低温を嫌うため、常温の涼しい日陰の場所でも保存できる[8][6]。また、調理に使うのであれば、固めに茹でてから水気を切って保存袋で冷蔵保存しても良い[6]

薬用

薬用とする部位は果実で、薬草としての生薬名は特に定められていないが、便秘に効果があるといわれる[21]。潤いがなく乾燥気味の便のときに良いといわれ、使い方は普通の食事をとるときに、1日2、3個のオクラを生で食べたり、スープや汁の実として利用する[22]

脚注


注釈

  1. ^ 以前はフヨウ属Hibiscus)に分類されていたが、現在ではトロロアオイ属に分類されている。
  2. ^ 株元の土壌を、ポリフィルムシートで覆って、保温や乾燥防止を行うこと。
  3. ^ 株元の根が露出して株が弱ってしまわないようにするため、鍬などを使って株元に土を寄せる作業のこと。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Abelmoschus esculentus (L.) Moench”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年9月16日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Hibiscus esculentus L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月16日閲覧。
  3. ^ 守屋荒美雄ほか 編「オクラ(秋葵)」『最新物産辞典』帝国書院、1925年、40頁。 
  4. ^ Okra BBC Good Food 2015年5月13日閲覧
  5. ^ a b c d e f g h i j 講談社編 2013, p. 75.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 66.
  7. ^ a b c d e f g h i オクラの育て方・栽培方法”. 園芸通信. サカタのタネ. 2021年7月16日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 83.
  9. ^ 講談社編 2013, p. 104.
  10. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 84.
  11. ^ a b c d e 板木利隆 2020, p. 88.
  12. ^ 板木利隆 2020, p. 89.
  13. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 85.
  14. ^ a b c 板木利隆 2020, p. 90.
  15. ^ a b c 板木利隆 2020, p. 91.
  16. ^ 地域特産野菜生産状況調査”. 農林水産省. 2014年8月23日閲覧。
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m n 主婦の友社編 2011, p. 82.
  18. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  19. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  20. ^ バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント監修 山本紀夫監訳『世界の食用植物文化図鑑』、柊風社、2010年、p190
  21. ^ 貝津好孝 1995, p. 18.
  22. ^ 貝津好孝 2013, p. 18.






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