憑依 日本

憑依

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 00:04 UTC 版)

日本

神道・古神道

大相撲も、皇室奉納される神事であり、横綱はそのときの「戦いの神」の宿る御霊代である。昔の巫女は1週間程度水垢離をとりながら祈祷を行うことで、自分に憑いた霊を祓い浄める「サバキ」の行をおこなうこともあった。

沖縄

沖縄では「ターリ」あるいは「フリ」「カカイ」などと呼ばれる憑依現象は、その一部が「聖なる狂気」として人々から神聖視された。そのおかげで憑依者は、治療される対象として病院に隔離・監禁すべきとする近代西洋的思考に絡め取られることは免れた[21]、ともされる。

沖縄の本土復帰以降には、同地に精神病院が設立されたものの、同じころ(西洋的思考の)精神医学でも「カミダーリ」なども、人間の示す積極的な営為の一つであるというように肯定的な見方もなされるようになったおかげで、沖縄は憑依(の一部)を肯定する社会、として現在まで存続している[22]ともされている。

日本語における憑依の別名

  • 神宿り - 和御魂の状態の神霊が宿っている時に使われる。
  • 神降ろし - 神を宿すための儀式をさす場合が多い。「神降ろしを行って神を宿した」などと使われる。降ろす神によって、夷下ろし、稲荷下ろしと称される[23]能管のヒシギと呼ばれる甲高い音は「神降ろしの音」と呼ばれ、神道の儀式で神降ろしに使われた岩笛から発達したさとれる[24]。新潟県の葛塚まつりでは、笛は神降ろしの笛と言われて演奏者は尊重され、吹き手以外笛に触れない[25]
  • 神懸り - 主に「人」に対し、和御魂の状態の神霊が宿った時に使われる。
  • 憑き物 - 人や動物や器物(道具)に、荒御魂の状態の神霊や、位の低い神である妖怪や九十九神や貧乏神疫病神が宿った時や、悪霊といわれる怨霊生霊がこれらのものに宿った時など、相対的に良くない状態の神霊の憑依をさす。
  • ヨリマシ -尸童と書かれる。祭礼に関する語で、稚児など神霊を降ろし託宣を垂れる資格のある少年少女がそう称された。尚柳田國男は『先祖の話』中で憑依に「ヨリマシ」のふりがなを当てている[26]

  1. ^ 『広辞苑』第四版、第五版
  2. ^ a b c d e f g 羽仁礼『超常現象大事典』成甲書房、2001年、p.76。ISBN 978-4880861159
  3. ^ 『広辞苑』第四版、第五版
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 池上良正「第五章」『死者の救済史: 供養と憑依の宗教学』角川学芸出版、2003年、p.157-194。ISBN 4047033545
  5. ^ 『宗教学辞典』249頁 - 250頁、東京大学出版会 (1973/01) ISBN 9784130100274
  6. ^ 『宗教学辞典』555頁、東京大学出版会 (1973/01) ISBN 9784130100274
  7. ^ 日本テレビ謎の憑依現象を追え!」(ウェイバックマシン)
  8. ^ p.159
  9. ^ 秋葉降『朝鮮巫俗の現地研究』
  10. ^ p.159
  11. ^ 『憑霊信仰論』伝統と現代社、1982年
  12. ^ 川村邦光『憑依の視座』青弓社、1997年
  13. ^ p.167
  14. ^ a b c 古東哲明『現代思想としてのギリシア哲学』 <講談社選書メチエ> 講談社 1998年 ISBN 4062581272 pp.136-148.
  15. ^ Jeffers, Ann (1996). Magic and Divination in Ancient Palestine and Syria. Brill. p. 181 
  16. ^ 山崎ランサム和彦『平和の神の勝利』プレイズ出版 p.47
  17. ^ 『聖書語句大辞典』教文館
  18. ^ オルダス・ハックスリーが『ルーダンの悪魔』 - The Devils of Loudun (1952)を書き、これを原作にケン・ラッセル監督が『肉体の悪魔』(1971)として映画化。同じ事件はヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ『尼僧ヨアンナ』(岩波文庫)などにも描かれていて、イェジー・カヴァレロヴィチが同名の映画化(1961)。
  19. ^ ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』みすず書房 2008。原書はMichel de CERTEAU, LA POSSESSION DE L’OUDUN. PARIS, JULLIARD, 1970.
  20. ^ 『宗教学辞典』419頁、東京大学出版会 (1973/01) ISBN 9784130100274
  21. ^ 塩月亮子「憑依を肯定する社会 : 沖縄の精神医療史とシャーマニズム(憑依の近代とポリティクス,自由テーマパネル,<特集>第六十四回学術大会紀要)」『宗教研究』第79巻第4号、日本宗教学会、2006年、 1035-1036頁、 doi:10.20716/rsjars.79.4_1035ISSN 0387-3293NAID 110004752051
  22. ^ 塩月亮子 同上
  23. ^ 定本柳田國男集9巻 247頁
  24. ^ 笛「ヒシギ」洗足学園音楽大学伝統音楽デジタルライブラリー
  25. ^ 会報『さえずり』平成24年2号(平成24年10月13日発行)祭り囃子が聞こえる新潟県リコーダー教育研究会
  26. ^ 定本柳田國男集10巻 137頁
  27. ^ 小松和彦『憑霊信仰論』30頁 伝統と現代社 1982年
  28. ^ 『魔の系譜』『谷川健一著作集1』三一書房。29頁 書中で引用される石塚尊俊の『日本の憑き物』では犬神の一種として吸葛(スヒカツラ)が出る。
  29. ^ a b c d e f g h i j k l m n o リン・ピクネット『超常現象の事典』青土社、1994年、p.220-222。ISBN 978-4791753079






品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  憑依のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「憑依」の関連用語

憑依のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



憑依のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの憑依 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS