高温岩体発電とは? わかりやすく解説

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こうおんがんたい‐はつでん〔カウヲンガンタイ‐〕【高温岩体発電】

読み方:こうおんがんたいはつでん

地熱発電発電方式一つ地下高温岩体高圧送り込み熱水滞留層で蒸気にし、タービンを回すことで発電を行う。天然熱水蒸気乏し場合利用される高温岩体地熱発電


高温岩体発電(こうおんがんたいはつでん)

【英】power generation utilizing hot dry rock

いわゆる地熱発電期待できる地域は、地下高温で、かつ自然の水系形成されていることが必要である。水系存在しないが、高温岩体がある場合、その岩体破砕人工注水によって蒸気または熱水取り出して発電利用するシステムを高温岩体発電という。この場合送られが他へ逸散ないよう周囲には不透水層形成されていることが重要な立地条件となる。まだ研究段階であるが、米国ニューメキシコ州ロスアラモスのフェントンヒルにおいては深度3,000m、温度200花こう岩について注水循環による熱交換実験が行われている。 さらに大規模な人工熱水系造成計画がある。

高温岩体地熱発電

(高温岩体発電 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/14 23:31 UTC 版)

1. 貯水池 2. ポンプ室 3. 熱交換器
4. タービン室 5. 産出井 6. 注入井
7. 地域暖房用温水 8. 多孔質堆積物
9. 観測井 10. 結晶質岩盤
様々な地熱エネルギー

高温岩体地熱発電(こうおんがんたいちねつはつでん)または高温岩体発電(こうおんがんたいはつでん)は、従来の地熱発電における地熱貯留層より大深度にある高温の岩体を利用する地熱発電である[1][2]。略称はHDR (hot dry rock geothermal power)。強化地熱システム(増進型地熱システムとも。Enhanced Geothermal System、EGS)のひとつである[3]

概要

従来の地熱発電で利用している地熱貯留層よりも、深度が大きく、より高温の岩体を利用する。従来の地熱発電がすでに地下に貯留層として存在する熱水を利用するのに対し、高温岩体は一般に透水性が低く十分な熱水が蓄えられないため、高温岩体を水圧破砕して水を送り込み、熱水の貯留層を人工的に造成することで蒸気や熱水を得る。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている[1]。生産された蒸気・熱エネルギーの利用については従来の地熱発電と同じく、主に地熱によって生成された水蒸気により発電機蒸気タービンを回すことにより電力を得る。

既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、日本においては38GW (38,000MW) 以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が利用可能と見られている[1]。従来の地熱発電と同様に、クリーンエネルギーとして、ウランや石油等の枯渇性エネルギーの価格高騰や地球温暖化への対策手法となることから、エネルギー安全保障の観点からも各国で利用拡大が図られつつある。太陽からの熱・光などのエネルギーに由来しない発電方法のひとつでもある。現在の技術[いつ?]ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性が指摘されている[1]。2008年には、googleがベンチャー企業等に1000万ドルを出資して話題になった[4]

一方、「地震の誘発」と「注入水の確保困難」が課題として指摘されている。また、注入した水の回収率は80%以上でなければ実用化に影響が出るとされている[1]

高温岩体発電の事例

日本

日本では、NEDOが肘折地区で1985年から、電力中央研究所が雄勝地区で1989年から、それぞれ高温岩体発電実験を行ったが、いずれも2002年に終了している[1]

アメリカ

アメリカにおいては、セントラルオレゴン英語版ニューベリー火山英語版において2010年から実証プロジェクトが行われた。2014年には9,500m3の注水が行われ、透水性の改善等が確認されている[5]

オーストラリア

オーストラリアでは、南部のクーパー盆地英語版やパララナ等で高温岩体発電技術の実証事業が行われたが、商用段階には至らなかった[3]

スイス

スイス・バーゼルでのプロジェクトでは、2006年12月から水圧破砕を行ったが、小地震が頻発した。そのため、注水量を大幅に下げ、さらに送水を停止したが、M3.4の地震が発生し、約900万ドルの物的損害が発生した。そこで、プロジェクトは中断され、バーゼル市とスイス連邦政府による評価委員会において今後の地震発生リスクについて検討を行った結果、最大M4.5 程度の誘発地震の可能性が指摘されたため、プロジェクトは2009年に中止された。開発企業の社長は刑事訴追されたが、無罪となった[6][7]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f 未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み-」『電中研レビュー』第49号、電力中央研究所、2003年、 ISSN 09147896
  2. ^ The Future of Geothermal Energy, Massachusetts Institute of Technology, 2006
  3. ^ a b 地熱発電分野の技術戦略策定に向けて」『TSC Foresight』第12巻、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センター、2016年6月。
  4. ^ “Google.org, 地熱発電の新技術開発に1000万ドル強を投資”. IT pro (日経BP). (2008年8月20日). オリジナルの2010年6月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100619050437/http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080820/313037/ 
  5. ^ Trenton T. Cladouhos; Susan Petty; Michael W. Swyer; Matthew E. Uddenberg; Kyla Grasso; Yini Nordin (2016-09). “Results from Newberry Volcano EGS Demonstration, 2010–2014”. Geothermics 63: 44-61. https://doi.org/10.1016/j.geothermics.2015.08.009. 
  6. ^ 村岡洋文、浅沼宏、伊藤久男「延性帯地熱系の把握と涵養地熱系発電利用への展望」『地学雑誌』第122巻第2号、2013年、 343-362頁、 doi:10.5026/jgeography.122.343
  7. ^ “Earth-shaking energy project cleared in court”. SWI swissinfo.ch. (2009年12月21日). オリジナルの2016年12月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20161221192545/http://www.swissinfo.ch/eng/sci-tech/earth-shaking-energy-project-cleared-in-court/7946434/ 

高温岩体発電

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 03:48 UTC 版)

地熱発電」の記事における「高温岩体発電」の解説

詳細は「高温岩体地熱発電」を参照 天然熱水蒸気乏しくても、地下高温岩体存在する箇所水圧破砕し、送り込んで蒸気熱水を得る高温岩体発電(hot dry rock geothermal power; HDR、またはEnhanced Geothermal System; EGS)の技術開発されている。地熱利用機会拡大する技術として期待されている。既存温水資源利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、日本では38GW (38,000MW) 以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量利用可能見られている。多く技術的課題解決している。2000年から2年実証実験発電実施されたが、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}現在は[いつ?]コスト増を理由中止されている。また現在の技術[いつ?]ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性指摘されているが、日本国のように地下構造変化大き地域で、240MW の発電所建設が可能かどうか調査が必要としている。 2008年には、googleベンチャー企業などに1000万ドル出資して話題になった2010年時点では、オーストラリアのジオダイナミクス社によって75MWの大規模な高温岩体地熱発電プラント建設進められている。

※この「高温岩体発電」の解説は、「地熱発電」の解説の一部です。
「高温岩体発電」を含む「地熱発電」の記事については、「地熱発電」の概要を参照ください。

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