耳介
耳介
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/30 06:06 UTC 版)
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耳介 | |
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概要 | |
動脈 | 後耳介動脈、前耳介枝 |
神経 | 三叉神経, 大耳介神経, 小後頭神経 |
表記・識別 | |
ラテン語 | auricula |
MeSH | D054644 |
グレイ解剖学 | p.1034 |
TA | A15.3.01.002 |
FMA | 56580 |
解剖学用語 |
耳介(じかい、pinna)または耳殻(じかく)とは、動物の耳のうち、外に張り出て飛び出している部分のこと。外耳の一部。音を集める機能の他、動物によっては体温調節の機能などを担っている場合もある。なお、厳密な定義では耳には耳介以外の部分も含まれているのだが、一般生活においては耳介の部分を指して「耳」と呼ぶことが多い。

機能

動物の耳介の機能は、音を集め、入ってきた音にスペクトル変換を行い、垂直定位のプロセスを可能にすることである。 耳介は漏斗のような役割を果たして音を集め、音を増幅して聴管に導く。ピンナから反射してくる音は、フィルタリングのプロセスを経て、周波数依存の振幅変調によって音に方向性の情報が加えられる。
種によっては、音を集める以外に、気分を伝えたり、熱を放射するといった機能もある。
ヒトの耳介
ヒトの耳介は、頭部の左右に1対存在する。この部分は、主に軟骨と皮膚とでできている。しかし、耳垂の部分には軟骨が存在しない。なお、耳介の部分に存在する軟骨を、耳介軟骨と呼ぶ。ここにはエラスチンが多く含まれており、これが耳介の形状を一定に保つのに役立っている。
さて、ヒトの耳介も、他の動物の耳介と同様に、集音器として役立っている。これは手を耳介の後ろにあてがってみれば、音の聞こえが良くなることから、その効果を確かめることができる。ただし、ヒトの場合は耳介を動かすための筋肉群(前耳介筋、上耳介筋、後耳介筋、対珠筋など)が退化しているため、耳介を意図的に動かして集音するということは事実上できない。稀にヒトでも耳介を動かすことができる個体もいるが、例えばネコのように聴きたい方向に耳介の向きを合わせるなどといった芸当は、ヒトでは到底不可能である。
それから、外耳道が共鳴器となり、共鳴する周波数付近の音の感度を上げていることは有名だが、ヒトの耳介に存在する窪みや溝も共鳴器となり、共鳴する音を増幅している[1]。なお、ヒトの耳介で共鳴する音の周波数は、ヒトの外耳道で共鳴する音よりも、さらに高い周波数である。
ちなみに、耳介は外部に露出した部分なので、ヒトの身体の中でも凍傷になりやすい部分として知られている。したがって、寒冷地では耳介を保護するための防寒具が用いられることもある。
ヒトのY染色体の問題によって発症する、耳介の部分に毛が多くなる耳介多毛症というものも存在する。
耳介筋
内耳介筋は、耳介の内側にあり、大耳輪筋、小耳輪筋、耳珠筋、対珠筋、耳介横筋、耳介斜筋の6つの筋肉によって構成される筋肉である。生まれる前に、これらの筋肉が収縮することで耳介の形状が形成される[2]。
外耳介筋は、耳介の外側にあり、後耳介筋、前耳介筋、上耳介筋、側頭耳介筋の4つの筋肉によって構成される。
これらの筋肉は、動物が音のする方へ耳を向けたりするのに用いられるが、人間においては痕跡器官ではある。ただ、退化しているヒトにおいても音がした方へ筋肉を動かそうとする反応はある[3]
追加画像
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左耳介
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外耳。右耳介。側面図。
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外耳。右耳介。側面図。
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外耳。右耳介。側面図。
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男性の右耳介
関連項目
参考文献
出典
- ^ 山内 昭雄、鮎川 武二 『感覚の地図帳』 p.40 講談社 2001年11月20日発行 ISBN 4-06-206148-1
- ^ Liugan, Mikee; Zhang, Ming; Cakmak, Yusuf Ozgur (2018). “Neuroprosthetics for Auricular Muscles: Neural Networks and Clinical Aspects”. Frontiers in Neurology 8: 752. doi:10.3389/fneur.2017.00752. ISSN 1664-2295. PMC 5775970. PMID 29387041 .
- ^ Strauss, Daniel J; Corona-Strauss, Farah I; Schroeer, Andreas; Flotho, Philipp; Hannemann, Ronny; Hackley, Steven A (2020-07-03). Groh, Jennifer M; Shinn-Cunningham, Barbara G; Verhulst, Sarah et al.. eds. “Vestigial auriculomotor activity indicates the direction of auditory attention in humans”. eLife 9: e54536. doi:10.7554/eLife.54536. ISSN 2050-084X. PMC 7334025. PMID 32618268 .
外部リンク
- drtbalu耳鼻咽喉科オンライン
ウィキメディア・コモンズには、耳介に関するカテゴリがあります。
耳介
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:06 UTC 版)
外観として目立つヒトの耳介は、体外の音波を集める集音器の機能を持ち、3,000Hzを中心に約10-15dBの音響利得があるとされる。耳介軟骨(弾性軟骨)に耳介筋と呼ばれる横紋筋が取り付き、その全体を皮膚が覆う構造をしている。ヒトの場合、この耳介筋は退化しているため、動かす事は難しい。耳介の下端には耳朶(耳垂)という柔らかい部分がある。一般的な形状として、前は1個の黄色繊維軟骨がもたらす複雑な浮き上がりの中にくぼみがあり、後ろは滑らかな凸状になっている。人によって見られるダーウィン結節(英語版)は、耳輪の下向きになった部分にある突起で、長い耳を持つ哺乳動物の耳の穂先に対応する。 ヒトの耳介は身体の中でも特徴的な形状をしており、成人後は基本的に変化しないので、まれに個体識別の材料となることもある。また、よく遺伝するので、DNAや血液型による親子鑑定が一般的となる前は、親子鑑定の材料として用いられていた。ただし、柔道、レスリング、相撲などの組技格闘技をすると、耳介がこすれて内出血を起こしやすく、これを繰り返すうちに耳全体が腫れ上がって形状が変わってしまう場合がある(耳介血腫)。 耳介の血流の変化は見て取りやすく、興奮時などには耳介が赤くなる場合がある。そのため、俗に興奮した際や強い羞恥を感じた際の比喩表現として「耳まで赤くなる」と言うことがあるが、冷気に曝された場合などにおいて、精神的な活動とは無関係に赤くなることもある。また、ヒトの身体の中では比較的凍傷になりやすい部分であり、寒冷地では耳介を保護する防寒具が用いられることがある。 ヒトだけでなくオランウータンやチンパンジーなど霊長類は、耳にあまり発達しておらず機能も持たないが識別に充分な大きさがある筋肉を持つ事が知られている。この未発達の筋肉は遺残構造(英語版)に当たり、理由はどうあれ耳介を動かせないこの筋肉は、生物学的機能を失ってしまったと言うことができ、近縁種間にある相同の証拠ともみなされる。なお、ヒトの中でも変異性があり、この筋肉を使って耳介を動かせる者もいる。この筋肉の目的は一般的なサルが持たない首を水平に回す能力で代替されており、これはある器官が備えた機能がのちに別の器官の機能に移ってしまう例に当たる。 美容整形手術によって耳を小さくしたり形を整えたりすることは耳介形成術(英語版)と言う。まれにある耳介が形成されない先天性閉鎖症や発達が小さい小耳症などへの対応として、耳介の再建も行われている。通常、肋骨部など身体の別の部位から軟骨を採取して耳の形に成形し、移植用皮膚や回転皮弁で覆う。近年ではラットの背中で耳介を発達させ、然るべき後に移植する方法もある。しかし、閉鎖症や未発達状態の耳介を持って生まれた新生児の抱える問題は外耳にとどまらず、三半規管の未発達や欠落、または奇形を伴うことがある。医学的な初期対処は、赤ちゃんの聴力や外耳道とともに三半規管の状態を調べる必要があり、その結果から耳介を含む耳全体の修復治療計画が立てられる。 20世紀後半までは、「サザエさん」や「ドラえもん」といった子供向け番組で、家族の年長者が耳介を引っ張るという児童虐待がしばしば見られたが、近年では自主規制によりあまり見られなくなっている。
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