STAP細胞論文問題
別名:STAP問題、STAP細胞問題、STAP論文問題
理化学研究所が発表した「STAP細胞」に関する論文を取り巻く一連の問題。2014年1月に研究論文が科学誌「Nature」に掲載され、大きな注目を集めた後、論文の信憑性に疑問が残るとする見解が多数上り、捏造疑惑などに発展、連日マスメディアで大きく報道された。
2014年1月から5月にかけて、STAP細胞論文問題は、ほぼ決着のいとぐちが見出されずに経過した。2014年6月に筆頭著者でありユニットリーダーである小保方晴子が主論文の撤回、論文取り下げに同意したと発表され、STAP細胞の研究は白紙に戻されることとなった。
2014年4月に、理化学研究は外部の有識者を招き「研究不正再発防止のための改革委員会委員」を発足した。6月12日に同委員会が作成した「研究不正再発防止のための提言書」が公表された・提言書の中では、STAP細胞論文問題の主担当機関であった「発生・再生科学総合研究センター」(理研CDB)の組織に在り方にそもそも問題があったとして、早急に理研CDBを解体するよう提言している。
関連サイト:
研究不正再発防止のための改革委員会委員の決定について - 理化学研究所
「研究不正再発防止のための提言書」の公表について - 理化学研究所
STAP論文問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 02:25 UTC 版)
2014年に問題になったSTAP論文を記述した著者14人のなかの主要メンバーで、キメラマウスを用いてSTAP細胞の多能性を検証した。STAP細胞は、若山が理研の発生・再生科学総合研究センター(CDB)でチームリーダーを務めていたころ、客員研究員だった小保方晴子に研究室のマウスを提供し作製した。この論文は学術誌(ネイチャー)の掲載審査で不採用になっていたが、CDBの笹井芳樹副センター長が関与することでそれが可能になったとされる。この論文に疑念が生じた直後、他の著者と同様に論文の成果は揺らがないとしていた。 しかし、論文への疑念が深まり理研が論文取り下げを検討していると報じられるなか、論文撤回に関する記者会見を単独で実施し、STAP細胞作製の手順書と論文の整合性や論文に掲載されている写真がSTAP細胞由来でないことが判明し、「研究の根幹が揺らいでいるのと同じだ」とし共著者らに撤回を呼びかけたことを明らかにした。さらに、保存していたSTAP細胞を第三者の研究機関に提供し分析を依頼するとした。この分析結果に関する会見が2014年6月16日に行われ、STAP細胞が若山研究室に存在しないマウスから作成されたとした。 このことはネイチャー誌の印刷版に掲載された論文の撤回理由に記載されていたが,同雑誌の電子版では削除されていた。このように論文撤回の理由が混乱したこと,および,第三者機関が何処なのかも公開されていなかったことから、分析自体の中立性や信憑性などに疑問が投げかけられる結果となった。これに関連して理研のCDBは、保存されていたSTAP細胞の遺伝子分析から、この細胞が若山研究室由来であることを否定できなくなったと発表し、若山も同様の訂正文書を研究室のホームページに掲載した。 STAP細胞の真贋が問われている最中である2014年7月27日にNHKは、若山研にあったES細胞が盗難されたとする前提で作成されたドキュメンタリー番組を放送した。さらに、ES細胞が盗難されたとする告発が理研の元職員により兵庫県警に行われた。これらは小保方の管理するフリーザから若山研究室が管理していたES細胞が見つかったことに主な根拠がある。 しかし、ドキュメンタリーは放送当初から取材の公平性に疑問が寄せられ、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会が、同番組について「名誉毀損の人権侵害が認められる」、「放送倫理上の問題があった」とし、NHKに対し再発防止に努めるよう勧告した。また、盗難の告発についても小保方への事情聴取はあったものの、起訴はされなかった。神戸地検はこの不起訴に際して「事件の発生自体が疑わしい事案だった」とした。この司法判断は、当事者の間で報道を巻き込んで行われた捏造疑惑の追及以前に、そもそもこれだけ不備が多い論文自体が世界的権威と言われる多くの共著者がいたにも係らず一流と言われる学術誌に出版されたこと自体への疑問が反映されている。 理研はSTAP論文問題に関する報告書を2014年12月26日に公開し翌年の2015年1月6日にこれを確定した。この報告書では、論文に掲載された図について小保方によるデータの捏造があったとし、責任が特に大きい共著者として若山とともに笹井が指摘されていた。続く、2015年2月10日に理研(野依良治所長)は関係者の処分を発表し、若山は「出勤停止相当」とされ理研の客員研究員から外れた。 なお、STAP論文問題が混迷を深める最中であった2014年8月1日に、若山は山梨大に新設された「発生工学研究センター」の初代センター長に着任していたが、理研での処遇が発表された2015年2月10日にこのセンター長を辞したい旨を申し出た。しかし、山梨大(前田秀一郎学長)は「余人をもってかえがたい。」などとして、3ヶ月間のセンター長職職務停止にとどめた。この去就は他の共著者と比較すると対照的であった。また、理研の規定に基づく懲戒処分はCDBの竹市雅俊元センター長の譴責のみで、筆頭著者を含め捏造の責任に対して実質的な処分はなかったとの指摘もある。 STAP論文の主要な著者として不正疑惑へ報道を介し積極的に情報を発信したともいえるが、取材者が関係者との間にとる立場により見解が異なる。また、共著者間の微妙な責任追及を報道を介して行なったことについて是非がある。科学上の新発見に対する報道機関の姿勢に関する疑問など、STAP論文問題には幾つもの課題が含まれている。
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