自殺とその波紋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 18:11 UTC 版)
同年7月25日には研究の議論も成立しない状態に陥り、研究員から報告を受けたセンター長の竹市雅俊は健康管理室に相談、笹井を医師に受診させることを勧められていた。丹羽仁史や小保方晴子の検証実験が注目される中、7月27日にはSTAP事件の特集がテレビ放映され、笹井についても大きく取り上げられ、8月4日の理研の声明でも新たな調査結果に伴って、共著者の処分が大きく変わることが言及されていた。 8月5日午前8時40分頃、神戸市中央区にある理化学研究所発生・再生科学総合研究センター (CDB) と通路でつながった先端医療センターの研究棟の4階と5階の間の踊り場で、手すりにくくりつけたひも状のもので首吊りになった状態で発見され、医師が死亡を確認。同日午前11時3分、警察に通報後に搬送された搬送先の神戸市立医療センター中央市民病院で正式に死亡が確認された。兵庫県警察は自殺とみており、現場のカバンの中や、秘書の机、自宅に複数の遺書が残されていた。52歳没。理研と家族で対応を検討し始めていた矢先の出来事であった。 笹井の死により、神戸アイセンターや融合連携イノベーション推進棟といった再生医療の実用化や神戸医療産業都市の関連事業、およびSTAP論文問題の真相解明や検証実験等に影響が出ることが懸念された。また、笹井の自殺によって理研内の研究者や職員らの動揺や不安は深刻化した。研究室メンバーや小保方、理研関係者のメンタルケアも心配され、理研職員らの心労を心配して理研に電話をした人も複数いたという。 笹井の訃報に際し、理化学研究所の野依良治理事長と竹市雅俊センター長がコメントを発表。さらに閣僚や科学技術振興機構 (JST)も声明を出し、山中伸弥や若山照彦も哀悼の意を表した。日本国外でも大きく報道され、『ネイチャー』は編集主幹が「悲劇」「科学者コミュニティーの多大な損失」と声明を発表するとともに、同誌のニュースブログでも取り上げ、他の多くの学術誌においても追悼記事が掲載された。
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